西成の怒りはあたりまえなのだ(関西救援連絡センター 第15号 71.6)
―警察の労働行為介入が発火点―
 

5月25日から30日にいたる6日間の西成闘争は、単なるうっぷん晴しでは決してありえず、自らの生活を脅し、人権をじゅうりんする行政当局―悪徳業者―西成署に対する怒りと憎悪に根ざすものであった。このことは事件の経過を追ってゆくうちに明きらかにされよう。

25日の事件の発端について全港湾建設支部西成分会発行の“大阪城”(5月26日付)は次のように語っている。「昨日(25日)の4時半、ピンハネセンター(愛隣総合センターのこと)で夜勤をまっていたらタツミ商会の車がきて数入の労働者を乗せ、札を渡した。ところがそのあとで、タツミ商会は顔付けの者をのせて、最初の数入をおろそうとした。これは明らかな契約違反である。それですぐに組合の人間が中心になって、抗議したら、タツミ商会の車は逃げてしまった。

いつもやったらこれでしまいだが、この時はみんなが団結していたので、すぐその場にいた労働者が結集して、センターを通じタツミと話をして、築港のタツミ商会に150名でもって団交に行った。

4時間近い交渉の末、タツミは自分の誤りを認め、参加した全員に単価の6割2,100円を支払った。これは当然のことである。

ところが、ところが、帰ろうとしてビックリ。交渉の中に、帰り道にポリ公を西成警察が入れやがった。朝潮橋に機動隊が二個中隊。

俺たちは怒った。手配師を一人もバクらんくせに、俺たち労働者を弾圧しようとする、税金ドロボー機動隊、警察。せやからすぐ西成警察に文句をいいにいったら、即座に仲間をつかまえよった。

なあ、みんな怒るのがあたりまえやないか! なんで警察が労働争議に介入せなならんのや! 資本家、手配師の味方―警察は釜ヶ崎にはいらんのや。」

25日の巽商会の就労契約違反に対する労働者の団交、西成署の不当介入、それへの抗議と弾圧、泥酔者保護という名目のもとでの大量逮捕、それに対する抗議、弾圧……という経過をたどって、闘いは執拗に、広汎にすすめられ、権力ーマスコミ一体となった“扇動者”キャンペーンにもかかわらず、その闘いの標的をあやまたずに、

「手配師・人夫出しのために一切の法律を無視して、人の嫌がる危険な重労働に低賃金で永遠にしばりつけようとする府労働部の釜ヶ崎代官所=総合センター、俺たちの有金をしぼりとる寄生虫=釜ヶ崎悪徳商店、俺たちを従順な羊のように調教するために冷酷なムチをふるう西成警察」

にむけられていった。決して“過激派”の“扇動”によったため長期化(?)したわけではなく、日ごろの抑圧と非人間化にその怒りが爆発し、自らの人間性を奪還すべく、労働者は立ち上ったのである。

この闘いの盛上りと、権力=マスコミの“扇動キャンペーン”の中で、関西救援連絡センターは奇妙な立場におかれた。

つまり、西成でまかれたビラの中に、私たちが闘争の際に確認する「完黙、弁選は救援センターに 電話は372−0779」という一節が明示されてあったことにより、西成労働者→救援連絡センター→新左翼という図式がデッチあげられたのである。黙秘権、弁護人選任権はすべての人に保障されている当然の権利であり、それを大衆的に宣伝し、闘う労鋤者・学生・高校生・市民の基本的人権を守るのが当センターの任務であるとすれば、こうしたビラが扇町でも大手前公園でも西成でも、どこにおいてもまかれなければならないものである。それと“扇動キャンペーン”をはかることによって、闘いの本質を隠蔽しようとする権力=マスコミの悪質な策謀に断固たる抗議をする。

ここで私たちの救援活動の原点

一、国家権力による、ただ一人の人民に対する基本的人権の侵害をも、全人民への弾圧であるとみなす。

一、国家権力による弾圧に対しては、犠牲者の思想的信条、政治的見解のいかんを問わず、これを救援する。

を再確認し、今後一層激化するだろう救援活動に対する攻撃をはねかえすべく、なお一層の広汎な活動を担わねばならない。

現在、全港湾西成分会によって差し入れ、公判準備などの救援活動が行なわれている。逮捕者総数は71名、大拘勾留者15名、起訴16名。

西成分会、救援連絡センターによる救援活動に対する妨害は、特に西成署においては想像をこえるはげしいものであり、「勤務時間が終った」「被疑者の名前がわからないと差し入れできない」等々理由なき理由でもって、弁護士接見、五点セットの差し入れを拒否。これに抗議する人をしめ出すという有様である。

このような被疑者の防禦権・弁護権の侵害を、私たちは例外としてうけとめることはできない。西成署は決して特殊弾圧機関ではなく、むしろ70年代闘争の進展とともにすすむファッショ化の尖兵として認識されるべきであり、私たちは、これを糾弾するとともに、これに対峙すべく強固な救援体制を創出しなければならない。

 

へドの出る行政 鬼のような業者

汗みどろでわき目もふらずに働く労働者には

ピンハネというお菓子をくれる

あまりのひどさに抗議すると暴力団や(丸キ)は力で抑圧

労働者の心にくすぶりつづけた

怨念は今こそ表わす刻がきた

ふるいたて 日雇い労働者よ

団結を持って力の体制にむかおう!

泣き疲れたかげうすいみどりごをだいて

若き母親はつぶやく

この子に一度でも腹一杯おちちを与えたい

働きすぎても私達に幸せはこないの

みにくい行政のひずみの悲しみに

ただ泣いて諦めてよいのか

許せぬ! 力の体制!

今こそ団結して闘おう

夜明けの歌はもうすぐそこだ

虐げられた長い苦しみの夜の歴史

釜ヶ崎の夜明けの光をひたすらに希求しながら

今日もまた一人の若き労働者は死ぬ

みどり子よ父のあとに続けと……

闘争の前に死を恐れてはいない。

団結せよ! 日雇い労働者 あすの幸せは目の前にある

― 一日雇労働者より―