2章 大阪市のスラム対策

第3節 大阪市のスラム対策

§4 あいりん貯蓄組合

1.あいりん貯蓄組合10年のあゆみ

 釜ヶ崎貯蓄組合が設立されて満10年余を迎えた。宵越しの銭は持たない釜ヶ崎気質の労務者にとって、組合員数も貯蓄残高も予想外に伸びをみせたことは、嬉しい限りといわねばならない。

(1)設立趣旨

 昭和368月のいわゆる“釜ヶ崎暴動事件”後、急激に高まった地区改良、福祉対策充実の世論に応え、事件1周年後に(昭和378月)現在の愛隣会館(その後467月に更生相談所があいりん地区に進出したので、現在は、建物の名前で残っている)が設立されたものである。地区対策の拠点とし、民生、衛生、教育等の各分野の出先機関を包含する総合福祉センターとしての使命を負っている。従って、その取り扱う事務、事業は、すべて地区労働者の生活指導、環境改善、生活の安定をはかることを目的としている。

 なかでも、貯蓄組合の設立は、その日暮らしの生活から脱却するための最良の手段として設立し、実施されたものである。

 「あいりん貯蓄組合(通称あいりん銀行)」は、環境改善地区(あいりん地区)の居住者に対し、勤労意欲を啓発し、自力更生を促進する手段の一つとして、貯蓄奨励を促進する趣旨で大阪市が環境改善施設「大阪市立愛隣会館」における地区対策事業の一環として同会館内に設立したものである。

(2)設立の経緯

 大阪市西成区の釜ヶ崎地区には、推定5万人の住民がおり、内約15,000人が簡易旅館等を宿所としている日雇労務者である(36年当時)。これらの労務者は、日当8001,500円程度(36年当時)稼いでいるが、ほとんどはパチンコ、かけ、酒などに浪費し、「宵越しの金」を持たないことを誇りとすら感じて、その日暮らしをしているため、所謂ドヤ街から抜け出ることができない実情である。

 偶々368月発生した、これら労務者の欲求不満の爆発ともみられる釜ヶ崎騒動によって警察および府・市などの関係当局は、釜ヶ崎に対する理解と認識を深め、その対策に真剣に乗り出すこととなった。

 特に市民政局では、労務者に貯蓄意欲をもたせることによって、更生への足がかりをつけさせることを念願とし、375月あいりん地区の労務者を対象とする夜間貯蓄機関の開設計画を発表した。

 発表後、この夜間貯蓄機関の開設交渉は、当初、市公金取扱銀行(住友、三和、大和、富士の4行)に対し行われ、ついで地元相互銀行や信用金庫に、そして最後に大阪府の監督下にある信用組合に対して行われたが、何れも拒否され、開設は徒に延び延びの状態となった。

○金融機関の主なる拒否理由

 1)ドヤ街のみを対象に支店を開設したのでは採算がとれない。

 2)36年の大騒動もあって、金融機関として現金を安心して置けない。

 3)大蔵省が店舗設置を認めない(37年当時)。

 

 一方、この間同地域労務者の貯蓄心は、予想外にもり上がり、現金を手に持って夜間銀行を探す人も多くなってきたので、関係当局者は、切角出てきた貯蓄心の芽を摘むことは出来ないとして、簡単な預かり証を渡して預かることとなり、西成警察署防犯相談コーナーに368月末現在で、66千円余、愛隣会館に2万円余りの現金が預けられた。

 このような労務者の貯蓄に対する積極的な熱意もあって、市当局はその責任において、829日から生活指導所としての「あいりん銀行」の開設に踏み切った。

 その後、関係当局者の善意と熱意は、大和銀行、近畿財務局などを動かし、合法的な預金事務の取扱方法(注1)が考究され、当初は大和銀行が行うこととなった。

 しかし、取り扱い開始直前にいたって、市公金取扱銀行3行(注2)の強力なまき返し(注3)があり、大和銀行を加えた公金取扱の4行と市当局の話し合いの結果、公金の取り扱いに準じ、4行が1年交替で取り扱うことに決定し、101日より住友銀行の手で貯蓄機関として、通称「あいりん銀行」が開設されるにいたった。

<注1>預金事務の取扱方法

 当初は、愛隣会館が「あいりん銀行」の名のもとに、あいりん地区の住民のために、反覆して、継続して預金の受入及び払出の取次を行うことは、「出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締等に関する法律」第2条の規定に抵触する懼れがあるので、適法に、この計画の趣旨を実行するため、国民貯蓄組合法の規定(第1条1項1号及び第9条)による国民貯蓄組合(地域組合)を、あいりん地区において組織し、その斡旋によって、代表者名義の貯蓄を行うという方式によって「あいりん貯蓄組合」を昭和3710月に設立した。

 国民貯蓄組合法は、「小額貯蓄非課税制度」の発足により、昭和38331日で廃止され、歴史的には、「あいりん貯蓄組合」は、国民貯蓄組合法による地域組合の性格をもっていたが、現在はあくまでも任意組合であり、その内容は、大阪市の事業として、愛隣会館が実施している銀行預金と解すべきである。

<注2>市公金取扱銀行

 現在大阪市の公金は、市内22区を4ブロックに分け、次の4行がそれぞれ1年交替で担当している。釜ヶ崎のある西成区は、37年度は住友銀行、38年度は富士銀行、39年度は大和銀行、40年度は三和銀行の当番となっている。

<注3>市公金取扱銀行3行のまき返しの理由

1)大和銀行の瀬踏みにより予想より明るい見通しがついた。

2)ドヤ街住民が銀行窓口に来てはこまるが、「あいりん銀行」で一括してくれるのでその恐れがなくなった。

3)社会問題であり、PR効果もあって大義名分が明確である。

4)1日1千万円程度(s37年当時)の金が釜ヶ崎で消費されており、予想外の資金が回収できる。

5)大和銀行と市のつながりが他行に比し一層深くなる。


(3)開店後の状況

 「あいりん銀行」設立に立っての立役者は、愛隣会館初代館長浅田国吉氏と西成署防犯コーナーの署員である。釜ヶ崎地区の約250軒(昭和37年当時)の簡易旅館店主が生活指導員になっているところから、それらの店主を通じて貯蓄奨励のパンフレット等を宿泊労務者に配るなど貯蓄心の啓蒙に精力的な活動を続けている。また、警察署の防犯コーナーには、法律や普通人の常識では解決できない多くの問題(うち90%までは警察法にない問題)が持ち込まれているといわれており、貯蓄の指導もその一つである。

 当初は、宿屋に通知したり、労働センター、職業安定所等にポスターを23枚貼る程度であったが、「宵越しの金」を持たないことを誇りとし、「貯金など出来るはずがない」と批判的だった労務者も窓口を訪れ、係員と親しくなった人達から宿屋であるいは、仕事場でと伝え聞き、次第に増加していった。

 その後、各新聞、テレビ、ラジオ等のマスコミが連日とりあげるようになり、預金者も増加の一途をたどった。

 

2.事業運営に関する諸規定、要領、様式等及びその変遷

@諸規定

 1)国民貯蓄組合設立届

     国民貯蓄組合設立届

                  昭和  年  月  日

   大阪府知事 佐藤義詮殿

                        大阪市西成区東田町73-1

                        大阪市立愛隣会館内

                         第  あいりん貯蓄組合長

このたび下記の通り貯蓄組合を設立しましたので、国民貯蓄組合法第3条及び同法施行規則第13条の規定により別紙の通り組合規約を添付してお届けします。

            記

1  組合の名称及び事務所の所在地

   第 あいりん貯蓄組合 大阪市西成区東田町73-1 大阪市立愛隣会館内

2 組合の種類        地域組合

3 組織の年月日       昭和  年  月  日

4 組合の員数                名

5 組合長の住所・氏名・及び職業

          浅田 国吉   大阪市立愛隣会館々長

 2)代表者名義による貯蓄斡旋届

     代表者名義による貯蓄斡旋

                  昭和  年  月  日

   大阪府知事 佐藤義詮殿

                        大阪市西成区東田町73-1

                        大阪市立愛隣会館内

                         第  あいりん貯蓄組合長

当組合は、代表者名義による貯蓄の斡旋を行うこととしたいので、貯蓄組合法施行規則第5条の規定により、左記事項のとおりお届けします。

            記

1  代表者名義の斡旋を要する理由     事務の簡素化

2 組合員数                   名

3 名義人の住所・氏名・及び職業

    浅田 国吉   大阪市立愛隣会館々長

4 貯蓄の方法

 イ)貯蓄の種類         普通預金

 ロ)貯蓄の預入先

       株式会社  住友銀行天王寺駅前支店

        〃    富士銀行萩之茶屋支店

        〃    大和銀行萩之茶屋支店

        〃    三和銀行萩之茶屋支店

5 利息の付利方法

  日歩6厘、付利単位1,000円、計算期間 預入の翌日から引出しの前日まで

 3)あいりん貯蓄組合規約

   第 あいりん貯蓄組合規約

1条(目的) この組合は、組合員の福利増進のため、貯蓄の励行を図ることを目的とします。

2条(名称及び組合員たる資格) この組合は、第 あいりん貯蓄組合と称し、大阪市西成区及び浪速区に居住する者又は勤務先を有する者をもって組織します。

3条(加入脱退) 前条の規定により組合員となることが出来る者は、この規約にしたがい貯蓄する旨を組合長に申し出て、この組合に加入することができます。組合員たる資格を失った場合は、組合を脱退したものとして取扱います。

4条(事務所の所在地) この組合の事務所は、大阪市西成区東田町73-1 大阪市立愛隣会館内に置きます。

5条(事業) この組合は、第1条の目的を達成するため次の事業を行います。

1.組合員の預貯金をあっ旋すること

2.前項の貯蓄のあっせん先は、株式会社住友銀行天王寺駅前支店、株式会社富士銀行萩之茶屋支店、株式会社大和銀行萩之茶屋支店、及び株式会社三和銀行萩之茶屋支店とします。

3.貯蓄心の涵養を図ることその他第1項の事業に付随する業務

6条(役員) この組合に次の役員を置きます。 組合長 1名 ただし役員は無報酬とします。

7条(組合長の選任及び解任) 組合長は総組合員の同意を得てこれに充て、任期はその在任中とします。

8条(組合長) 組合長は、組合を管理し、これを代表します。

9条(業務の執行) 組合員の第5条の貯蓄は、第 あいりん貯蓄組合代表浅田国吉名義で行うこととします。

10条(通帳及び証書の交付) 組合長は組合員に対しその貯蓄に関するあっ旋通帳を交付します。

11条 この組合の貯蓄に関しては、第16条に規定する帳簿のほか、代表者名義貯蓄あっ旋台帳、1人別貯蓄明細帳及び利息明細帳を備えるものとします。

組合員は、随時組合に請求し、前項の帳簿、その他証書類を閲覧することができます。

12条(利息の付利方法) この組合の貯蓄の利息は、次条に定める日までにあっ旋先から支払われた金額を各組合員の口座にそのまま付利します。

14条(決議) 次の事項は総組合員の2分の1以上の同意を得て定めるものとします。

(1)  組合規約の変更に関すること。

(2)  組合活動の年次計画に関すること。

(3)  組合の予算及び決算に関すること。

(4)  その他重要と認められる事項。

15条(備付台帳) この組合は、組合事務所に次の帳簿を備えます。

(1)  組合員名簿

(2)  組合経費収支簿

16条(解散) 組合は、次のときに解散いたします。

1 大阪市立愛隣会館が閉館したとき

2 組合員が   名以下となったとき

3 組合員の半数以上の申し出があったとき

(附則) この規約は、昭和  年  月  日より実施します。

 4)あいりん貯蓄組合普通預金取扱に関する覚書

あいりん貯蓄組合普通預金取扱に関する覚書

                       昭和37101

大阪市長 仲居光次殿

            株式会社住友銀行阿部野橋支店 支店長 橋本 俊一

            株式会社富士銀行大阪支店 支店長 新辻 孝一

            株式会社大和銀行萩之茶屋支店 支店長 藤井 又五郎

            株式会社三和銀行萩之茶屋支店 支店長 仲田 基雄

 あいりん貯蓄組合普通預金取扱に関する覚書送付について

 首題に関し、別紙の通り覚書調印完了いたしましたのでご送付いたします。

 なお、当然のこと乍ら本取り扱に関し万一事故が発生致しました場合は、その原因が取扱銀行の責めにきすべきもの認められるものについては、その損害を取扱銀行で負担致します。

                             以上

あいりん貯蓄組合普通預金取扱に関する覚書

 大阪市(以下甲という)は、株式会社住友銀行、株式会社富士銀行、株式会社大和銀行、および株式会社三和銀行(以下乙という)と、あいりん貯蓄組合に係る普通預金契約を締結するにあたり、次の条項を協定する。

1条 甲が取扱う普通預金の名義は、甲の指定する「あいりん貯蓄組合代表者」とする。

2条 乙は現金出納に関し、出納事務取扱者の氏名および印鑑を甲にあらかじめ届出すると共に、甲乙協議の上、乙の毎営業日1回一定時間を定め愛隣会館に派出出納をおこなうものとする。

3条 甲は乙発行の普通預金通帳に記載の約定を承諾の上預け入れおよび払出しするものとする。

 なお甲は預け入れ又は払出しにあたっては乙所定の入金伝票または普通預金請求書ならびにそれぞれの内訳明細書に所要事項を記入するものとする。

4条 乙は甲の作成した入金および支払いの内訳明細書に従って別途個々の補助帳簿を設け記帳する。

5条 第1条の普通預金の利息は乙が前条個々の補助帳簿に従って別途個々にもとずいて計算した利息の合計額とする。

6条 この協定による取扱いは昭和37101日からとし、乙は住友、富士、大和および三和の各行輪番にて1年交替とする。ただし取扱銀行相互間の交替時期は各行毎月3月期の普通預金決算日の翌日をもってする。

7条 この協定の有効期間中に甲・乙いずれか一方がこの協定を解除しようとするときは、書面によりその60日前までに相手側に予告しなければならない。

8条 この協定の有効期間は昭和38331日とし甲乙いずれか一方から別段の申出のないときは、1カ年間延長するものとする。爾後も亦同じ。

9条 この協定に疑義があるときは、甲乙協議の上決定する。この協定の証として覚書5通を作成し、それぞれ1通を保有するものとする。

昭和37101

甲 大阪市北区中之島1-4  大阪市長 中井 光次

乙 株式会社住友銀行阿部野橋支店 支店長 橋本 俊一

乙 株式会社富士銀行大阪支店 支店長 新辻 孝一

乙 株式会社大和銀行萩之茶屋支店 支店長 藤井 又五郎

乙 株式会社三和銀行萩之茶屋支店 支店長 仲田 基雄

 5)あいりん貯蓄組合加入申込書

あいりん貯蓄組合加入申込書
受付番号      号
昭和  年  月  日
あいりん貯蓄組合長 殿
加入申込書 現住所
(連絡先)
氏 名 (ふりがな)
性別 男・女
生年月日 明治
大正    年   月   日
昭和
職業
 私は、貴組合の組合規約に従い貯蓄したいので、下記の点を誓約し加入の申込をします。
                  記
 私は虚偽の氏名又は住所は用いておりません。
印鑑届
 貴組合へ預金をするについてはその約定を承諾の上、預金の受取、その他一切の事項に使用する印鑑を右のとおりお届けします。
   昭和  年  月  日
                氏名
  あいりん貯蓄組合 御中
印 鑑
貯蓄の種類及び受入者
斡旋した貯蓄の種類 貯蓄の受入者 備 考
普通預金  株式会社住友銀行天王寺駅前支店
    〃  富士銀行萩之茶屋支店
    〃  大和銀行萩之茶屋支店
    〃  三和銀行萩之茶屋支店

6)あいりん貯蓄組合預金通帳




3.現 況

 自由労務者のその日暮らしの無計画性に生活秩序をたてさせるため、貯蓄を奨励し自立更生を助長する目的のもので、昭和3710月開設し、午前9時より午後8時まで(午前12時から午後1時まで休憩)開業している。

 環境改善地区「愛隣地区」の居住者に対し、勤労意欲を啓発し自力更生を促進する手段の一つとして、貯蓄奨励を推進する趣旨で、環境改善施設「大阪市立更生相談所」における地区対策事業の一つとして施している銀行預金である。あくまでも銀行の窓口代行業務である。

 昭和4671日から実質的には816日から窓口業務を大阪市の職員から「民友会」(大阪市役所主に民生局を退職した人々で構成されている)に業務委託をし、指導・責任を大阪市(担当係 更生相談所業務係)が負っているのが現状である。

1.目的 組合員の福利増進のため、貯蓄の励行を図ること

2.名称 あいりん貯蓄組合  通称「あいりん銀行」

3.組合員たる資格 大阪市西成区及び浪速区に居住する者又は勤務先を有する者

4.事業 組合員の預貯金をあっ旋すること

5.あっ旋先  株式会社住友銀行天王寺駅前支店

 株式会社富士銀行萩之茶屋支店

 株式会社大和銀行萩之茶屋支店

 株式会社三和銀行萩之茶屋支店

各行輪番1年交替

1年ごとの協定、解除は60日前に予告

当番行    住友 s37,41,45,49

富士 s38,42,46

大和 s39,43,47

三和 s40,44,48

6.あっ旋預貯金

普通預金  日歩6厘(年219毛)

         付利単位 1,000

         計算期間 預入の翌日〜引出しの前日

7.代表者  大阪市立愛隣会館館長の職にある者

       現在は大阪市立更生相談所主幹に読みかえている

8.取扱時間 午前9時〜午後8時(但し日・祝祭日は除く)

 

 

 

 

昭和47年度

・大和銀行萩之茶屋支店 普通預金

 口座 あいりん貯蓄組合代表者 服部 太助→久保 忠明

 (代表者名義あっ旋台帳)

・入金・・・普通預金入金明細書、現金、金種表、入金伝票

 出金・・・普通預金出金明細書、出金伝票、印

 →翌日 午前11時ごろ銀行より派出出納

  出納事務取扱者(氏名・印鑑)を大阪市に届出

・回転資金 200万円  銀行より借用(無利子9

 いつも手持資金が200万円あるよう銀行と調整する

・銀行は明細書により別途個々の補助帳簿を設け記帳(機械処理)

 利息は補助帳簿にもとづいて計算した利息の合計額を代表者名義貯蓄あっ旋台帳に記入する。

・決算期(年23月、9月)ごとに補助帳簿にもとづき計算した一覧表を組合に提出し、組合において組合員の台帳、通帳に記入する

・昭和4741

   組合員             34,494人

   代表者名義貯蓄あっ旋金額    142,588,716

事務の流れ

 昭和467月現在(大阪市民生局の職員が従事していた最後の時期)

@昼間体制 午前9時〜午後5時(繁忙時午前910時)

A夜間体制 午後5時〜午後8時(繁忙時午後67時)

1.預金の場合

 A 受付、通帳引出し、現金確認、入金明細に基づき通帳記入

  F 繁忙時・・・受付、通帳引出し

 B 台帳引出し、入金明細書に基づき台帳記入

C 現金確認収納、入金明細書チェック

  通帳及び台帳確認、通帳金額欄に確認印

D 通帳手渡し

E 台帳に基づき集計表に記入、台帳返戻

2.出金の場合

 A 受付、通帳引出し、出金明細に基づき通帳記入

  F 繁忙時・・・受付、通帳引出し

 B 台帳引出し、出金明細書に基づき台帳記入、印鑑照合

C 通帳及び台帳確認、現金支払

D 現金確認及び支払い、通帳手渡し

E 台帳に基づき集計表に記入、台帳返戻

3.F 1)繁忙時はAの応援

 2)その他応援、整理事務

 3)午前中前日の集計、現金確認、銀行の連絡等



A事業運営に関する変遷

1)あいりん貯蓄組合組合長変遷
区分 初代 2代 3代 4代 現在(48/2)
氏名 浅田 国吉 斉藤 恕 森田 幸雄 服部 太助 久保 忠明
補職 大阪市立愛隣会館館長 同 左 同 左 大阪市立更生相談所主幹 同 左

2)職員数変遷
年月 昭和37年10月 昭和45年12月(ピーク時) 現在(昭和47年4月)
人数 6人 10人 業務委託(民友会)11人
摘要 2交代制
A勤務 9〜5:15
b勤務 11:45〜8
  
  職員 4
  嘱託 2

 A勤務 2名
 b勤務 4名
2交代制
A勤務 9〜5:15
b勤務 11:45〜8
  
  職員 6(主査1含む)
  嘱託 1
  パート3

 A勤務 4名
 b勤務 5名
2交代制
A勤務 8:30〜3:30
b勤務 3〜8:30
  
  民友会 10人
  パート  1人

 A勤務 5名
 b勤務 6名
1日平均
取扱件数
166件 407件 365件
3)損害保険料変遷(年間)
年月 昭和37年10月 昭和44年5月 現在(昭和47年4月)
金額 20万円 100万円 170万円

4)運転資金変遷
年月 昭和37年10月 昭和44年5月 現在(昭和47年4月)
金額 20万円 150万円 200万円

Bあいりん貯蓄組合業務

1)業務時間

  午前9時〜正午  午後1時〜8

   休日 日曜日、国民の祝日、12日〜3

2)勤務体制  2交代制

  A 8:3012 13:30 7時間(休憩45分)

B      38:30 5時間30

  別に午後5時〜8時 アルバイト1

3)従事者数及び身分

  民友会に業務委託

   責任者1名、責任者補佐1名、保員8名 計10名、パート1名(夜間のみ)

   休暇等不足の場合は、民友会で体制がとれない場合のみ、更生相談所業務係より応援

C民友会

 愛隣会館を廃止し、更生相談所をあいりん地区に設立する機構改革の際に、現在市の職員がやっている銀行の窓口業務を他に委託して、本来の民生行政に職員をまわすため、374月発足をめざして、民生局庶務課長、大阪市職員労働組合民生支部長を中心に定年退職した人を登録して、退職者相互の福利厚生の機関をあわせてもたすため463月に発足した定年退職者クラブである。

(目的)

大阪市の民生事業に協力し、市民生活の向上に寄与するとともに、大阪市民生局の退職者の福利厚生を図る

(事業)

1)大阪市民生局の所管に属する社会福祉事業のうち、受託することが適当な事業

2)退職者の福利厚生に関する事業

3)その他法人の目的を達成するために必要な事業

(名称)

  社団法人 民友会

(事務所の所在地)

  大阪市北区中之島1-4 大阪市役所内 大阪市民生局

 1)あいりん貯蓄組合の業務委託(昭和46816日)

   給料  月額35,000円(責任者 40,000円9

   賞与  夏約1ヶ月分  年末約2ヶ月分

勤務時間 A 8:3015:30 7時間(休憩45分)

B 15:0020:30 5時間30

   休日  日曜日、国民の祝日、12日、3

C四行からの協力費

1.窓口用あいりん銀行マッチ購入代として

年度 金額
昭和42年度 40,000
昭和43年度 60,000
昭和44年度 60,000
昭和45年度 60,000
昭和46年度 60,000
昭和47年度 60,000
340,000

4.あいりん貯蓄組合資料

1)年度別取扱状況

1)年度別取扱状況
入金 出金 差引金額 預金総額 新規件数 取扱日数 備 考
件数 金額 件数 金額 口座数 期末現在高
昭和37年度
(10月〜3月) 15,994 24,605,580 7,872 18,513,701 6,091,279 2,286 6,091,879 2,286 147
昭和38年度 43,908 94,222,696 28,643 84,275,347 9,947,349 6,422 16,039,228 4,136 303
昭和39年度 47,560 145,093,137 36,273 133,662,791 11,430,346 10,375 27,469,574 3,953 304
昭和40年度 41,602 149,595,891 35,677 143,413,409 6,182,482 13,316 33,652,056 2,941 301
昭和41年度 48,347 195,972,536 41,078 185,158,925 10,813,611 16,964 44,465,667 3,648 298
昭和42年度 56,040 275,898,181 51,130 263,010,243 12,887,938 20,710 57,353,605 3,746 300
昭和43年度 57,186 347,181,076 53,853 330,770,406 16,410,670 24,192 73,764,275 3,482 300
昭和44年度 (27,801) 口座を6359件整理
65,158 480,273,446 60,221 446,182,858 34,090,588 21,442 107,854,863 3,609 296
昭和45年度 (31,226) 睡眠口座を12183件整理
60,509 494,610,233 61,914 486,055,155 8,555,078 12,683 116,409,941 3,425 299
昭和46年度 (34,494) 同  5068件
55,499 524,283,993 59,488 498,105,218 26,178,775 10,883 142,588,716 3,268 300
昭和47年度 (37,318) 同  4456件
(4〜12) 49,754 498,487,389 50,001 456,372,674 42,114,715 9,249 184,703,431 2,824 227

2)一日当たり取扱状況
入金 出金 入出金計 新規件数
件数 金額 件数 金額 件数 金額
昭和37年度
(10月〜3月) 108 167,328 53 126,367 161 293,695 15
昭和38年度 144 311,671 94 279,341 238 591,012 13
昭和39年度 159 476,424 119 440,263 278 916,687 13
昭和40年度 137 493,941 118 475,212 255 969,153 9
昭和41年度 161 656,408 137 620,183 298 1,276,591 12
昭和42年度 186 916,631 170 875,635 356 1,792,266 12
昭和43年度 190 1,158,136 179 1,106,258 369 2,264,394 11
昭和44年度 219 1,621,034 202 1,507,674 421 3,128,708 12
昭和45年度 201 1,647,826 206 1,623,348 407 3,271,174 24
昭和46年度 184 1,740,838 197 1,654,958 381 3,395,796 10

3)預金別一覧表
昭和43年3月 昭和44年3月 昭和45年9月 昭和46年3月 昭和46年9月 昭和47年9月
人数
千円未満 17,368 2,382 19,750 20,691 2,395 23,086 7,834 831 8,665 9,442 998 10,440 18,500 800 19,300 2,617 81.6
1万円未満 786 163 949 776 132 908 3,200 630 3,830
5万円未満 445 107 552 474 126 600 604 115 719 580 107 687 1,700 65 1,765
10万円未満 126 38 164 127 58 185 196 61 257 187 49 236 130 40 170 228 7.1
20万円未満 67 24 91 92 32 124 143 43 186 132 46 178 119 30 149 211 6.6
25万円未満 41 9 50 45 31 76 43 11 54 56 10 66 49 21 70
30万円未満 100 3.1
40万円未満 26 11 37 27 10 37 23 6 29
50万円未満 11 6 17 13 4 17 29 4 33
75万円未満 26 2 28 32 3 35 35 4 39 36 1.1
100万円未満 11 0.3
100万円以上 5 0.2
18,047 2,560 20,607 21,429 2,642 24,071 9,669 1,243 10,912 11,245 1,359 12,604 23,785 1,600 25,385 3,208 100
(但し)47年9月調査分は、預金通帳預かり分についてのみ調査

4)加入者職業別調べ    昭和43年4月〜46年9月までの新規加入者(6167人)についての調査
土工 技能労働 日雇 店員 とび職 その他
具体的職業例 建設業務
道路工事
土木関係
自動車運転手
クレーン工・石工
大工・鉄工
電気工・機械工
熔接工・吹付工
雑役・手伝・左官
沖仲仕・屋根屋
自動車助手・手元
ペンキ塗装
チンドン屋
会社員・理髪
クリーニング
ボーイ・靴店
パチンコ
水道工具店
女中
建設業務
足場
看護婦・美装
易者・水商売
行商・手芸
テキヤ・按摩
芸人・予想屋
無職
人数 1,745 487 2,718 665 448 104
28.3 7.9 44.1 10.8 7.2 1.7

5.あいりん貯蓄組合優良貯蓄者表彰者状況調

1)優良貯蓄者表彰の歴史

 大阪市と西成愛隣会は、貯蓄を奨励し自立更生を助長する目的であいりん貯蓄組合を設けているが、その利用者で優秀なものを、昭和27年に、貯蓄増強委員会が1017日を貯蓄の日として「日ごろ健康で働ける喜びを感謝するとともに、もう一度生活を振り返ってムダがないかどうかを検討し、明るく豊かな生活を目ざして貯蓄しよう」と提唱したのにあわせ、昭和38年から表彰している。

 @)表彰状、記念品の贈呈

 A)貯蓄懇談会

 第1回  昭和38年度  30

 第2回  昭和39年度  30

 第3回  昭和40年度  30

 第4回  昭和41年度  28

 第5回  昭和42年度  30

 第6回  昭和43年度  30

 第7回  昭和44年度  30

 第8回  昭和45年度  30

 第9回  昭和46年度  30

 第10回  昭和47年度  22

 第11回  昭和48年度  30

            計320

○優良預金者表彰選考基準

1.本年3月末までに預金口座を設定した者(6ヶ月)

2.労働者であり既表者は除く

3.預金額が5万円以上で継続的に入金実績のある者

  但し、月給者は月1回以上、日雇者は月5回以上

4.高額預金者であっても価値のない者は除外し、低額預金者でも送金、敷金、定期預金に出金した場合は、表彰に該当する。

5.被表彰は、30名以内とする

6.吉村・小口資金の借用者で未返済者は除く

2)優良貯蓄者既表者名簿
昭和38年〜昭和43年までは通帳番号と氏名のみにつき省略
昭和44年度 昭和45年度
預金高 職種 年令 住所 預金高 職種 年令 住所
425,000 港湾 32 浪速区馬淵町1-1 のとや 116,000 洗いや 59 西四条 大栄荘
200,000 土工 30 不詳 103,813 職安 63 松田町 岡野アパート
111,000 土工 62 浪速区恵美須町3-50 192,377 日雇 40 海道町 蓬莱荘
205,000 土工 45 東入船町16 幸荘 209,487 会社員 48 長橋通 天一荘
270,000 失対 63 東入船町39 八千代荘 94,994 日雇 52 東田町 中谷アパート
66,000 センター 68 都島区手島町1-78 93,545 職安 40 長吉永原西 市住5号館
102,000 直行 39 東田町 東洋ホテル 313,777 職安 55 山王町
68,000 土工 35 東萩町57 大丸 58,200 日雇 47 東田町 東洋旅館
76,000 土工 36 東萩町29 84,395 日雇 34 東入船町 仲よし
86,000 職安 36 東萩町 宝荘 316,728 煉瓦積工 47 東入船町 宝
225,000 港湾 54 海道町56 越後荘 163,557 港湾 33 西入船町 森田屋
79,000 職安 29 東萩町 つる屋 93,314 港湾 41        日光
56,000 直行 58 東萩町39 八千代荘 70,680 日雇 48 恵美須町
278,000 港湾 43 鶴見橋通1-15 長○荘 106,062 直行 52 東今船町 今船荘
333,000 土工 27 東田町 宝ホテル 80,718 職安 64 今船町 植田荘
77,000 沖仲仕 38 東入船町 一二三 146,817 塗装工 37 海道町 喜楽荘
89,000 土工 44 今池町 白百合 267,741 運転手 40       自彊館
190,000 土工 34 西入船 たかの屋 115,000 港湾 23       パレス
180,000 土工 36 東入船町1-5 424,417 港湾 40 西萩町 明和荘
48,000 土工 31 自彊館 94,654 センター 36       若松
330,000 日雇 57 浪速区カスミ町公楽モータープール 468,970 土工 56 東入船町 新光
75,000 塗装工 51 よしくら 72,985 日雇 34 海道町 南極
310,000 工員 37 山王2-10 165,147 工員 44 大正区新岩屋町 三和荘
246,000 土工 49 甲岸町 七五三 307,833 手伝い 39 東田町 明治ホテル
200,000 直行 44 東萩町 むろと 210,873 鳶職 30 海道町 南極
180,000 防水工 48 甲岸町 日の本 131,337 作業工員整備員 63 東田町 東荘
71,000 工員 38 西入船 きりしま 196,926 製図 34 馬淵町 生活館
130,000 やねや 41 東萩町33 よさこい 80,021 日雇 27 東四条
150,000 装飾 68 甲岸町12 広瀬方 147,045 大工 43 東田町 グランドホテル
180,000 職安 54 海道町7 桃太郎 100,000 日通 44 東田町 新橋別館
平均年令 44.2 平均年令 43.8

昭和46年度 昭和47年度
預金高 職種 年令 住所 生年月日 性別 年令 職種
122,984 日雇 36 西四条 大栄荘 大 14.10.21 46 運転手
327,952 49 松田町 岡野アパート 明 34.7.1 71 日雇
254,013 労働者 35 海道町 蓬莱荘 大 12.3.1 49 食堂手伝
462,177 労働者 32 長橋通 天一荘 明 37.12.2 67 安定所労務者
118,508 労働者 40 東田町 中谷アパート 昭 20.4.23 27 日雇
56,637 44 長吉永原西 市住5号館 昭 14.3.15 33 日雇
313,685 労働者 45 山王町 明 44.2.1 61 日雇
91,400 43 東田町 東洋旅館 昭 3.11.26 43 土工
104,815 54 東入船町 仲よし 昭 16.6.21 31 港湾労務者
497,004 港湾 24 東入船町 宝 昭 4.4.24 43 工員
612,060 70 西入船町 森田屋 昭 14.1.3 33 運転手
107,184 33        日光 昭 18.3.31 29 日雇
127,522 37 恵美須町 昭 11.2.24 36 土工
116,013 日雇 48 東今船町 今船荘 大 6.7.18 55 プレス工員
90,417 港湾 46 今船町 植田荘 昭 22.6.14 25 日雇
143,276 左官 44 海道町 喜楽荘 大 15.2.21 46 港湾労務者
148,651 大工 59       自彊館 昭 14.8.13 33 労務者
105,479 大工 23       パレス 昭 14.7.10 33 雑役
135,517 39 西萩町 明和荘 昭 5.9.20 41 土工
85,338 建築工 51       若松 大 13.1.20 48 洋裁工
58,000 日雇 29 東入船町 新光 昭 14.1.1 33 鳶職
81,350 日雇 67 海道町 南極 明 38.12.6 66 日雇
277,363 労働者 62 大正区新岩屋町 三和荘
87,573 工員 49 東田町 明治ホテル
95,612 土工 37 海道町 南極
105,575 日雇 71 東田町 東荘
736,725 日雇 46 馬淵町 生活館
99,236 運転手 23 東四条
185,305 港湾 51 東田町 グランドホテル
60,757 廃品回収業 75 東田町 新橋別館
平均年令 45.4 平均年令 43.1

6.あいりん貯蓄組合貯蓄斡旋残高推移

昭和 37 10 1 開始 213,120
38 7 26 1,000 万円台 10,606,940
39 7 21 2,000 万円台 20,077,388
40 11 6 3,000 万円台 30,058,992
41 11 11 4,000 万円台 40,127,916
42 6 8 5,000 万円台 50,030,396
42 12 13 6,000 万円台 60,015,739
43 11 1 7,000 万円台 70,055,361
44 5 19 8,000 万円台 80,060,506
44 9 1 9,000 万円台 90,431,797
44 11 11 1 億円台 100,132,753
45 1 7 1億1千 万円台 110,175,403
45 10 6 1億2千 万円台 120,929,604
45 12 8 1億3千 万円台 130,131,432
45 12 17 1億4千 万円台 140,553,404

7.10周年迎えた労務者対策のあいりん銀行

 宵越しの金を持たないあいりん地区の労務者を計画性のある生活設計に更生させようと昭和37101日に大阪市が「あいりん貯蓄組合」(通称あいりん銀行)をスタートさせ、昭和47101日、十周年を迎えた。発足当初は、果たして酒とケンカの絶えないあいりん地区の労務者に、果たして貯蓄心を植えつけさせることができるかどうか疑問視されながらスタートした「あいりん銀行」が周囲の心配とは裏腹に11年歳月を経るごとに労務者の預金も増加の一途をたどる一方。45年の万博景気をピークに貯蓄高も頭打ち、市としてPRもせず、貯金者の「口コミ」で大きくなってきた当銀行もその大きさも、最近一つの安定期に入ったと考えられる。コツコツと貯めたその預金によって、計画性のある生活設計に切り替える労務者も生まれており、労務者の更生を目的として設立された「あいりん銀行」もその役割を果たしつつある。そして、いまでは、あいりん地区の労務者にとっては、なくてはならない“労務者のあいりん銀行”として定着している。

 気安さが浸透・・・・定着化 → いまでは心の支え

 

1)問題点

@ 取扱銀行の協力

 取り扱い四行があいりん銀行に物質的に協力しているのは、毎年1017日の貯蓄の日に行われる優良貯蓄者の表彰式のときに渡される記念品の一部資金として四行が各15,000円の計60,000円を協力しているのみである。

 10年大阪市民生局が、特に現場職員の奉仕で1億円以上の貯蓄実績を持つまでに育ててきたのであるが、取扱銀行は、窓口業務をしないで、貸し付けにまわしていたのである。今後は、今までの収益第1主義を捨てて公金取扱銀行としての役割を文字通りはたすべきである。

 @)取扱銀行の一行化(毎年の事務引き継ぎが、コンピューターが相違するため、ソートしなければいけない等)

 A)四行間で一行にしぼるのがむつかしければ、有利な条件で引き受けてくれる金融機関に。

A 窓口業務の委託

 現場職員の本来の社会福祉事業への配転は、民友会に委託して、一応当面の目的が達成されたが、民友会による委託が、1年を迎える時期になって種々の問題点が発生している。

 @)銀行員としての経験者が、1人もいないため、銀行の定年退職した人を、最低1人入れる。

 A)夜間がピークなので、2交代制による労働強化面での改善

 B)銀行との連絡調整、窓口改善担当の先任者(定年退職者であってもまだ能力の残っている人)の必要

 C)決算期の問題

B 事務の機械化

 @)利息計算は、各行の事務センターでコンピューター処理をしているので、問題は引継期のみである。

 A)窓口の機械化(富士銀行になってから一段と実現がよくなった)

 (イ)通帳入れの機械化は、委託してから完了

 (ロ)通帳の記入の機械処理(機械記入)は委託してから完了

 (ハ)次に、オンライン処理による機械記入、利子記入

C 取扱時間の問題

 現在は、午前9時から午後8時まで窓口を開いているが、その時間の再検討。機械化等(カード)による時間短縮。例として午後2時〜730分。大手銀行の機械による24時間出入金が最近できるようになってきたので、時代の変化も考慮して、地区の実態にあった窓口にする必要がある。

D 貸 付

 発足10年を過ぎ、貯金を預かるだけでなく、さらに質のこいいサービスをするため、大阪市として一歩進める時期にきている。金融がゆるみ、銀行等で借りやすくなったが、それも担保や大会社に就職していないと貸してもらえない。あいりん地区のように、小企業にも就職していない、日々孫下請にやとわれている労働者には、貸付機関は、絶無である。

 そこで、あいりん銀行に一定条件で取引のある、善良な労働者に、大阪市の保証で、無利子、長期返済の貸付制度を地区対策として登場させるべきである。

E 他地区との比較

 東京の山谷地区にも、昭和419月から東京都城北福祉センターにおいて、城北貯蓄組合が、当銀行を参考にして発足した。

 1.組合長は、城北福祉センター所長、副組合長はセンター福祉課長をあて、任期中在任し、職員は都の職員をあてないで別個に採用する。いわゆる、金は出すが、人は出さない方式。

 2.取扱時間 正午より午後7時まで

       高額出金者 5,000円以上は翌日払い。

 3.取扱銀行 富士銀行

  規模的にも、内容的にも、あいりん銀行の参考とはならない。

F 以上問題点を種々みてきたが、今日「あいりん貯蓄組合」は、その設立目的が大きく問われている。大阪市が今までのように(本庁が)静観していると、現状維持で発展しない。「当初の目的は、ほぼ達成したので、そのうえにたって、次に何をするか、決定しなければならない。」