2章 大阪市のスラム対策

 第2節 大阪市に於ける無宿者対策

 §4 大阪市立中央更生相談所(昭和41.3.9

梅田厚生館が、保護の実施機関としての機構の拡充を求められたが、老朽施設で狭小のため移転のやむなきに至った。

昭和4139日、旧梅田厚生館と更生施設豊崎寮、医療保護施設弘済院長柄分院を統合して、「市立中央更生相談所」を設立し、保護の実施機関として保護の決定実施、被保護者の心理、職能判定、医療判定等の機構を整備した一時保護所及び医療保護施設として附属病院が併設された。

1.名称       大阪市立中央更生相談所

2.所在地      大阪市大淀区長柄中通2-9

3.設立       昭和4139

4.一時保護収容人員 140

5.附属業院病床   20

6.構造       鉄筋コンクリート 地上3階 地下1

  敷地       2,026u (614坪)

  建面積      1,181u (358坪)

  延床面積     3,699u (1121坪)

7.建設費用     107,315,000

8.内容

新館 本館 別館
地階 厨房、食堂、浴室、ボイラー室、宿直室
1階 事務室 3,待合室、面接室、脳波測定室
判定室、作業室、宿直室、居室 2
事務室、宿直室、婦人相談室
電気機械室
管理事務室
洋室 1,和室 3
2階 診療室、薬局、看護婦詰所、医局
配膳室、検査室、病室 3,居室 4
所長室、レントゲン室、静養室
事務室
講堂
3階 居室 7,娯楽室 1 検査室、看護婦宿所、集会室

9.職員構成 (68人)

 所長(1)-主管(1)  庶務係12人)係長(1)事務職員(5)自動車運転手(1

業務員(3)電気作業員(1)生活指導員(1

保護係16人)係長(1)ケースワーカー(15

判定収容係20人)係長(1)事務職員(2)生活指導員(1

心理判定員(2)職能判定員(1)医師(3

栄養士(1)看護婦(1)保健婦(1

家政作業員(7)

医療科(18)科長(1)事務職員(2)医師(1)看護婦(7

薬剤師(1)レントゲン技師(1)業務員(2

○事業内容

 生活保護の実施機関及び更生施設の一時保護所、並びに医療保護施設の附属病院を併設した綜合施設である。

 市内の無宿者、その他要保護者の保護に関する中枢機関として、保護の決定実施、被保護者の健康分類を行い、同時に心理、職能面について適切な鑑別を行って、各種施設に委託して自立更生させる業務を行っている。

○付帯事業として

1)簡易婦人相談
2) 会館活動

1.相談受付状況
年度 収容 診療 旅費 相談 新規
41 1,591 1,769 657 505 4,522 2,310 2,212
42 1,090 1,827 555 655 4,127 2,080 2,047
43 735 1,892 451 850 3,928 1,871 2,057
44 642 2,076 415 943 4,076 1,881 2,195
45 833 2,330 330 1,290 4,783 2,130 2,653
46.4.1〜
46.8.15
221 1,093 169 486 1,969 869 1,100
46.8.16〜
47.3.31
248 733 385 328 1,694 708 986
46年6月の機構改革にともない、8月16日より中央更生相談所で行っていた、面接相談、保護または措置の決定を更生相談所と一時保護所でおこなうこととなった。

2.措置状況
年度 41 42 43 44 45 46
事  項
入  所 収容 くりこし 574 54 56 62 69 55 11 66
外来 4,191 2,956 2,734 2,680 2,946 2,391 163 2,554
退院・転寮 223 180 301 331 306 29 335
小計 3,223 2,970 3,043 3,346 2,752 203 2,955
帰 郷 508 469 413 341 455 36 491
4,765 3,741 3,439 3,456 3,687 3,207 239 3,446
退  所 施設送致 更生 2,349 1,674 1,624 1,572 1,833 1,420 14 1,434
救護 19 42 43 51 104 59 3 62
宿提 136 49 27 27 39 1 0 1
母子 0 45 53 56 60 * 50 50
病院 550 731 724 772 749 675 28 703
養老 18 30 21 17 25 22 3 25
小計 3,027 2,571 2,492 2,495 2,810 2,177 98 2,275
当所から退所 348 599 416 438 421 495 82 577
帰 郷 732 515 469 454 390 457 49 506
1,080 3,685 3,377 3,387 3,621 3,129 229 3,358
差引現在数 613 56 62 69 66 78 10 88
注)s46.8.16よりは、一時保護所として


第3節 大阪市のスラム対策

§1 はじめに

 ふつう、貧民くつなどと呼ばれるスラムは周囲の一般地区とは非常に異なった特有の社会的雰囲気をもった地区のことである。これらの地区に住む人たちは、生活水準や環境においてかなりの低位におかれていることが多く、したがって、スラム対策の目的は、これら地区住民の生活向上をはかり、環境改善をおこなうことによって、一般地区との格差を解消することにある。

 一般に、スラムは、近代都市社会内部の地域分化に対応して都市周辺に成立したものといわれているが、具体的には、典型的な近代的スラムである路地裏長屋のほかにも、高度の異質性のために都市一般地区から全く孤立し封鎖的な地域共同体を形成している地区(同和地区、外国人部落など)や、無宿者、放浪労働者のたまり場になっているドヤ街、応急仮設住宅が老朽化した不良簡易共同住宅や老朽改良住宅、道路・公園予定地などを不法占拠している仮小屋密集地区など、すべての社会問題的な住居集団を指して呼ばれている。

 現在、市内にもかなりのスラムが散在しており、とくに西成区のあいりん地区、浪速区の馬渕・恵美須町附近と旧日東町かいわい、此花区の伝法地区、大正区の北恩加島地区、大淀区の長柄橋町、生野・東成区に多い朝鮮人部落、港区の老朽仮設飯場地区などが、その代表的なものと考えられる。

 大阪市の対策は、いまのところ、主にあいりん地区、馬渕地区を重点施行地域として事業を進めている。

○大都市スラムの問題点

 スラム形成過程を歴史的に見た場合、前近代型、近代型、現代型の3類型に区分される。

 前近代型=徳川期から明治13年頃までのスラムで、貧困者が旧幕藩封建制の各種の共同体的紐帯の中に埋没されており、地域移動がなかった段階のスラム

 近代型=明治1418年の日本資本主義の蓄積期に伴うデフレ政策によって地方都市、農村の上下階層分解過程で転落した貧困者達が都市へ移動しはじめた頃からはじまり、戦前までに形成されたスラム(例 釜ヶ崎9

 現代型=戦後、とくに経済高度成長期の産業構造の近代化、巨大都市化の過程で形成されたスラム。

 

 戦後の経済成長期を迎えてスラムは質的、量的に変化した。それは、一方に中進資本主義を残存させながら、他方、独占的段階への急激な移行に伴う状況の出現である。

 大阪市内のスラムを、近代型スラムの残存形態としてとらえると同時に、今日の社規状況、社会的メカニズムが生み出したところの現代型スラムとして新しい角度から掌握し、現在もなおこれらのスラムが拡大し、高密度化しつつある状況に対して早急の対策が必要である。今日の産業化、都市化状況の中で大量の人口が大都市に集中するにつれて、その中から多数の不適応者、落伍者、転落者が現れ、それが蓄積されて都市スラムの人口が膨張、拡大するとともに、そこに大都市スラム問題(@ドヤ街的スラムの膨張、拡大 A古いスラムの残存、再生産と新しいスラムの発生)が現れる。

 

@ 大阪市に於けるスラム対策主管係の推移

民政局

s31.1.3 福祉課

 地区改善事業

s37.2.1 厚生課 地区改善事業担当として「福祉課」と分離

       厚生係・環境係 (@同和事業・スラムの企画実施A愛隣会館)

s38.6.27 社会福祉部(厚生課と福祉課統合)

     厚生課 厚生係・環境係   児童課・生活課・福祉課

s39.7.4 社会福祉部 社会課 社会係・環境係   保護課・児童課・生活課

s40.7.14 社会課 社会係・環境係

s41.10.1 同和対策本部  同和事業の大部分を担当・社会課から分離

s44.4.22 社会課 社会係・生活係・環境係

     スラム対策担当主幹できる 社会課長−社会係・主査

                  主幹−生活係・環境係

s45.4.21 社会課 福利係・地区改善係・生活係・環境係

                  社会課長−福利係・地区改善係

                  主幹−生活係・環境係

s46.6.30 保護課 指導係・保護係・医療係・生活係・主査(3)

               社会課長−指導係・保護係・医療係・生活係・主査(3)

               主幹−生活係

s46.6.17 更生相談所

  所長(1)−保護係

  主幹(2)−管理係・業務係・判定収容係・医療科