【 平成5年度決算特別委員会(準公営・一般)平成6年101112-1118日−05号 】

◆松岡徹委員 

 次に、私の地元の問題でもありますし、同時に大阪市の長年の懸案でもあると思いますが、あいりんの問題につきまして、若干ご質問をいたしたいというふうに思っております。

 あいりん問題は、現状を申し上げましたら、現在あいりん地区に日雇い労働者と言われている人が約2万1,000人おると言われているんです。これは、東京の山谷や、あるいは横浜の寿町と比べましても、比べ物にならないぐらい大きな規模になってるわけであります。これら日雇い労働者の方々は、遠くは万博、あるいは都市の整備事業などで建設土木関係に従事されてきた人たちなんです。ところが、昨今、バブル崩壊以後非常に経済不況が深まっておりまして、その就労といいますか、求職が大幅に減少しているという現状であります景気のいいときは1日約8,000人ぐらいの求人があったわけでありますが、最近では3,000人を切る、こういう状態になっています。

 同時に、この日雇い労働者の今日的な現状でありますが、非常に高齢化が進んでおります日雇い労働者の被保険者手帳というのがあります。これを所持している人たちは約1万2,500であります。この平均年齢は53なんです。こういった多くの人たちがおるわけであります。この高齢という問題もありますし、先ほど申し上げましたように非常に経済不況が深まっておりまして求職が大幅に減少している、当然のようにこの高齢者の人たちは仕事からあぶれる、こういうふうになるわけであります。仕事からあぶれますと、当然、その辺の収入がないわけですから、あいりん地区にあります素泊りの簡易ホテルといいますか、そういったところには泊まれない、当然野宿していく、すなわちホームレスというような状態になっていくわけであります。そういう意味では、西成のあいりん地区だけではなしに、市内各地でも野宿者と言われている人がふえているというような状態であります。

 ところが、この野宿者の人たちがそういう状態で野宿せざるを得ない、野宿していく、そういった人たちが、中には死んでいく、要するに変死していくということもあるわけです。ちなみに、ずっと最近のデータを見ましても、市内全体で、こういった野宿している方を含めまして毎年200人を超える人たちが死んでいってます。昨年だけでも238人死んでいってるわけです。こういうことであります。

 私、特にきょうこの質問をさせていただいたのは、さきの11月1日に大阪府と市の懇談会が持たれまして、新聞記事がありました。これで抜本対策を考えるためにあいりん地区総合対策検討委員会を来年度早々に設置することを決めた、こういう新聞記事が出ておりましたので、質問させていただきました。

 今申し上げましたように、特にあいりん問題はさまざまな問題ありますけれども、極めて労働問題が中心になってくる、あるいは重要な問題になってくるわけであります。特に不況になりますと、そして求職が少なくなるということになりますと、一番心配するのは、2年前、あるいは4年前にもあいりん地区で暴動と言われるものが起こりました。ああいうやつが起こってくるわけです。ことしにもそういう暴動がありましたですね。労働センターをめぐりましてトラブルがあったということです。そのトラブル経過で、一定決着つきましたんですが、その後の経過と現在の現状というものをちょっと聞かせていただきたいというふうに思っております。

◎三島民生局福祉部保護課長 お答えいたします。

 あいりんの現状につきましては、今委員がお話しいただいたとおりでございます。若干つけ加えさせていただきますと、野宿者の状況でございますけれども、ことしの9月、1日平均をとりますと、地区内で412名と昨年の約3割増という状況になっております。それから、民生局で夏と冬、独自で調査しておりますけれども、あいりん地区、天王寺、浪速の一部−−あいりん周辺でございますけれども、その辺で調査いたしますと、ことしの夏で1,641名ということで、昨年よりも約500名ぐらい増ということになってます。それらを総合して見ますと、市内全域で約3,000名の方が野宿状態にあるんではないかというふうに推測しております。

 それから、地区の団体が行っております炊き出しでございますけれども、これもことしの9月、1日平均で約390名と昨年の2割増という現況でございます。

 委員お尋ねのことしの夏の動きでございますけれども、団体が何グループか集まりまして釜ヶ崎の反失業連絡会というものをつくりまして、大阪府と大阪市に対しまして要求行動をとる。その要望の内容は、高齢者の雇用対策を打てということと、緊急に野宿者対策をやれという、大まかにいえば2点だったというふうに思います

 6月ごろから始まったわけですけれども、大阪府とのやりとりの中で、野宿者問題に絡んで、大阪府の方が野宿者が出ている問題については、それは民生の問題だ、大阪市に行けというような回答をかなりしたものですから、団体の方からは、それは違う、仕事がないから野宿してるんだと。そういう認識であれば大阪府ともう話しないという形になりまして、団体の方は、大阪府とはもう話しない、現場と話するということで、仕事を出しております労働センターの方とのやりとりということになりまして、6月27日に200名ぐらいの労働者と労働センターで徹夜に及ぶ交渉という形になりまして、当然決着しないわけですから、労働センターにそのまま居座ると。労働センターといいますのは、1階がピロティーになっておりまして、随分広いエリアなんですけれども、夜間シャッターを閉めているという状況がございますけれども、そういう状況の中でシャッターが閉めれなかった、その状態がずっと続いてきたと。私たちとしましても、2年前、4年前の大暴動というのがございましたので、暴動だけは絶対避けたいということで、非常に慎重な対応を大阪府とともに考えてまいりました。その中で、結果的には、大阪府の方で高齢者に対するそういう特別就労事業を出す、大阪市の方では野宿している方に短期のリフレッシュの宿泊の事業をやるということで、9月1日に混乱なく正常に戻ったというのが経過です。

 大阪府の特別事業といいますのは、あいりんにおきます労働センターとその地域の清掃の事業を大阪府の方で30名、大阪市の方で20名、計1日50名地区内の清掃の事業に従事するということで事業を出しました。ただ、短期宿泊につきましては、既存の施設を使いまして1日20名、2泊3日という形で、これは9月、10月で終わっております就労対策につきましては、11月7日から始めまして、今現在、来年の2月いっぱいということで始めております。

 そんな状況でございますけれども、初めに申し上げましたように、野宿者の状況、炊き出しの状況、労働者にとりましては非常に厳しい状態が続いているということでございます。

 以上でございます。

◆松岡徹委員 この夏に起きました労働センターをめぐってのいざこざといいますか、それ以外にもいろいろとご苦労願っているということについては敬意を表したいというふうに思うんです。大阪府も大阪市も非常に苦労して、このあいりん地域で生じている問題について対応されているんですけれども、いろいろ問題が複雑に絡んでおりまして、必ずしも労働問題だけで済む問題ではありませんし、いろいろと出てくる。特に労働問題については府行政が中心にならなあかんということでありますけれども、その中でも、大阪市が毎年、職員が年末年始返上しまして越年対策事業をやったり、あるいは、12月に入りましたら、職員があいりんの地域をずっと夜間巡視といいますか、夜回りをする、そこで行き倒れている人がいないか、ずっと点検をされているということも私もよく知っているわけであります。そういったさまざま取り組んでおられることについては、何としても、毎年200人以上の人たちが死んでいく、そういうことを出さないようにという思いからやられているということでありまして、そのこと一つとりましても、これまでの対応については敬意を表しますけれども、同時に、そういった一人でも死亡者をなくしていこうということは非常に大事でありますけれども、しかし、それだけをずっとやってたんでは変わらないんです。

 あいりん問題は、ずっと言われて、もう何年来てるんだと。私、西成の選出で、地元に住んでおりますからよく知っておりますけれども、西成の住民の人も、やっぱりこのあいりん問題は解決してほしい、そのことが大阪の中の西成区という全体をよくしていく大事な課題だということを常々言っているわけであります。その中で、私もこれを見まして、抜本対策を考えるなめに府市懇であいりん地区総合対策検討委員会が設置されると。この中に書いてあるんですが、労働分野は府、福祉分野は市という縦割り行政の弊害や場当たり的な対応が目立ったこれまでの施策のあり方を反省、初めて中長期的なプランもつくると。新聞記事によりますとそういうふうになってるわけです。

 来年早々の検討委員会の設置でありますけれども、ここにも言うてますように、あるいは今指摘しましたように、あいりん問題というのは単に労働問題だけではない、いろいろさまざまな要因が複雑に絡んでいるわけでありまして、そういう意味では、抜本対策を考えるということでの検討委員会、非常に私は期待をする一人でありますけれども、この検討委員会で一体何を検討しようとしているのかということ、この議論の方向、ちょっとそれを一遍聞かせていただきたいというふうに思います。

◎河野民生局福祉部長 お答えいたします。

 検討委員会の設置につきましては、今月の1日に市長と知事の間で合意を見たところでございまして、その構成、あるいは検討課題というものにつきましては、これから府市の担当部局で詰めてまいるという予定にしております。

 したがいまして、まだ確定的な事項ではございませんが、私どもの考え方を申し上げますと、まず構成につきましては、学識経験者、地元精通者、労働界の代表、あるいは建設業界の代表といったようなもの、それに地元の警察、それから労働、福祉を担当する府市の行政マン、こういった顔ぶれで、十数人程度で構成すればというふうに考えております。それから、検討を進めていくに当たりましては、地元住民の代表の方、あるいは地元で活動している団体の代表の方、さらにはまた大阪自彊館のような地元の施設の代表の方々のご意見も聞きながら進めてまいりたい、かように考えております。

 検討課題でございますが、一つには、当面の課題ということがございます。これには、高齢者の就労の問題というものも当然含まれるわけでございますが、例えば、越年対策事業、これは昭和46年から私ども始めておるわけですが、昭和50年から港湾局さんの用地をお借りして、南港の方で続けてまいっております。しかし、南港の開発に伴いまして、いつまでも南港でということにもならないということで、私どもとしては、新設の救護施設の中に一定、越年対策用の枠を確保するというような方向で取り組んでまいってはと考えておるわけですが、そういったことにつきましても、府市協調の中で、分担も含めまして論議をしていただきたい。

 それから、中長期的な視点に立ったあいりんの姿が二つ目の問題でございます。ご指摘のように、労働者は非常に高齢化が年々進んでおります。建設業界の中でも、あいりんの日雇い労働市場としての価値は今後低下の一途をたどるんではないかというような意見もございます。そういった中で、こういった状況が続く中での10年先、20年先のあいりんの姿というものはどういう形になっていけばよいのか、労働市場として活性化していくのか、それとも、労働市場としての意味を失っていって通常の町に変更していくのか、そういったあいりんの位置づけと、それへの対応策というようなことをも十分にご論議いただき、またそれについての国、府、市の役割分担、あるいは費用分担ということについてもご意見を賜りたい、かように考えております。

 何分にも複雑な要因が絡んでおりますし、なかなか抜本的な対策ということの見出しがたいテーマでございますので、検討には3年程度を要するのではないかというふうに考えておりますが、できることならば、中間報告という形で、当面の課題等についてはいただければというふうに考えております。

 以上でございます。

◆松岡徹委員 抜本的な策、中長期的な計画、そして当面策、その中長期的な計画を3年をめどにやっていこうと。その間に中間報告をということでありますけれども、今の答弁の中にもありましたように、あいりんの姿、将来像、10年後、20年後のあいりんをどうするのかということであります。あいりん地区のああいう状態というのは、もう30年以上も前からあるんですね。あの状態なんです。しかも、今の情勢を見ていきますと、一体どないなるんやということなんです。そういう意味では、あのあいりんをどうするのか。かつての釜ヶ崎という名前をあいりん地区という名前に変えたからといって、何も変わってないんです。やっぱりあのあいりん地区を将来どんな町にする気なのか、一体だれがするのかということなんです。そういう意味では、しっかりとそういう方針を、この抜本策というのはそういうことだと私は解釈したいと思うんです。ですから、そういうものをしっかりと今府市で議論されて、そういう抜本策、方針を打ち出してほしい、まさにあいりん対策の総合計画といいますか、そういうプランをしっかりと打ち立ててほしいというふうに思うわけであります。

 そこで、私なりの意見も申し上げたいんですが、私も実は地元の人間ですから、あいりん地区の問題については、西成の住民の中でもいろいろな意見があるんです。あのあいりん地区に隣接している人たちは非常に迷惑がるんです。嫌がるんです。特に、4年前に起きました西成警察署の署員の不祥事をきっかけにした暴動がありましたですね、皆さん方もテレビでよくご存じだと思いますけれども。あのときに、あの近くのコンビニエンスストアがつぶされて中の物を全部持っていかれたとか、あるいは、あの周辺の家が壊されたとか、車が焼かれたとか、こういったことがありました。あの周辺の人たちが全部被害をこうむっておるんです。霞町の駅も燃やされました。周りの人たちはそういうことをよく知ってるんです。経験してます。ちなみに、あいりんの中でそういった暴動というものが起こったのは、平成4年10月1日に市の更生相談所で起きました更生資金の緊急貸し付けの打ち切りをめぐって、あの前でトラブルがありました。それまで計算しますと、今までに23回そういった出来事が起きておるんですね、この30年間の間に。それをみんな経験しておる、地元の人間は。わかっておるんです。ですから、非常に迷惑だ、あるいは怖がっているというんです。その考え方といいますか、そういう気持ちになるというのは、私も一面理解できるんです。

 同時に、今度は、ちょうど西成警察署の前の三角公園の周辺に住んでおられる方、この人たちも私よく知ってる方がたくさんおります。そこでも意見聞きましたら、そこの人たちはちょっと違うんです。私、この9月に、あいりん地区の三角公園の真横でいろいろと地元の人と話す機会があったんですが、当然のように、自分たちの町のあいりんの問題が議論になりました。そのときに、その人たちの全体としては、私に聞かれるんです、松岡さん、私らの毎日の生活は何から始まるか知ってるかと。その人はたまたまあいりんの西成警察の横に通っている萩之茶屋商店街の人なんです。私ら朝起きて店のシャッターあけたら、その家の前に人ぷんがある。くそしてある。おしっこしてある。それを毎朝掃除することから始まりますねんと。そして店開きをしていく。その人たち、相当怒るんやなと思ったら、そんなことされんようにいろんな対策やったと。寝る前に、夜中に家の前に水まいて、そこに寝ないようにするとかいうのをやったけれども一緒やと。いろんな手だてを打ってみたけれども一緒やと。問題は、次何を考えるかというと、こんなところにくそせんと、おしっこせんと、ちゃんと公衆のトイレつくって、そこでするように習慣づけたら共存できるやないかということです。すなわち、地元の人は、その人らはもう出ていってくれという人も中にはおります。しかし、その中におる人たちは、出ていってくれというよりも、むしろ共存なんです。もう三十数年も一緒に過ごしてきてますから。そういう意味では、単に労働問題だけで片づけるというのはだめだというふうに思いますし、そういった自立を促進していく、あるいは誘導していくような考え方というものも大事だというふうに思います。

 ましてや、最近の状態では高齢化が非常に進んでおりますし、そのことが私はことしの冬も非常に心配なわけであります。またぞろ野宿者の死亡者がふえるんではないか、こういう心配をしてます。特に、野宿される方は高齢者が非常に多いということからしまして、西成の中で死んでいく人たちを、名前も余りわからない、どこに住んでるか、住所不定。だからといって、人一人が死んでいくのを黙って見過ごすわけにはいかない。ですから、やっぱり総合的な施策が必要だというふうに私は考えております。

 そういう意味では、将来のあいりん像というものをどうつくるのかということを考えてみますと、そのことは非常に大事でありますけれども、これまでのあいりん対策で府市ともにいろいろ努力されてきたことはわかりますけれども、一つは、できましたら行政機構の中に、特に大阪市でいいましたら、あいりん対策は民生局の保護課が中心やと。ほかのところは全部知らん顔するのかということじゃないと思うんです。民生の保護課だけが対応するということをしてきたからこそ、このあいりん対策がおくれてきたのと違うか。しかも、検討委員会で指摘されてるようなこれまでの縦割り行政の弊害というものを反省してやろうということになるならば、私はぜひとも、市だけとは言いません、府もともに、それぞれの枠を超えた機構というものをしっかりとつくるべきじゃないか。極端に言えばあいりん対策室といったものをつくってやるべきではないか、こういうふうに思うわけであります。そういう意味では、これからの行政機構のあり方について、ぜひとも検討委員会で論議をしていただきたいというふうに思っております。

 それと、二つ目は、要するにあいりんの問題で福祉は非常に大事な問題でもありますけれども、同時に、先ほど言いました野宿者、ホームレスが非常にふえています。そういう意味では、住という問題、住まいという問題が非常に大事な課題ではないかというふうに思っています。私どもの西成に、あいりんからちょっと西へ離れたところですが、木津川沿いに公園があります。ちょうど津守下水処理場の北側に公園があるんです。西成高校に挟まれた公園であります。あそこに、非常にこういうホームレスの人がふえてます。あいりんの方から流れてくるんです。そうしたら、段ボール箱で自分たちで家をつくるんです。見たら、その中に家族連れがおる。子供もおる。一体どないしてるのかなと私たち心配します。時々警察が、地元の人も、せっかくの公園ですけれども、行ったら子供も安心して遊ばれへんということで言います。警察がそれを撤去しにいくと、もうそれはわかってるのかしらんけれども、さっとおれへん。警察がおらんようになったら、また1時間もせん間に同じようなものができていく。こういったイタチごっこをやっているわけです。

 彼ら自身が、何もあんなホームレスを好きこのんでやってるんではない。要するに、働く機会がない、求職がない、収入がない、当然野宿になっていく、こういうことになるわけであります。そういう意味では、住の問題を真剣に考えていかなあかんというふうに思うんですが、西成区には簡易宿泊所というのが200軒近くあります。簡易アパートというのが。要するに、素泊り3,000円とかいうのがあるわけであります。仕事があればそこに泊まるんですが、仕事がなくて収入がない場合は野宿をしていくということになるわけでありまして、必ずしも一遍にはいかないと思いますけれども、こういう住の問題もしっかりと議論の中に入れていただきたいというふうに思うわけです。当然、その中には200軒もの簡易アパートを含めて、どういうふうなものにしていくのかという視点をしっかりと入れていただきたいというふうに思います。

 それから次に、労働の問題でありますけれども、労働の安定という課題が極めて大事になるわけでありまして、そういう意味では、人間らしい生活をしていく、あるいはそれを援助、促進させていくためにも、労働の安定というのが基本であると思いますが、この労働の課題について、大阪市としても、これは府の問題だからということではなしに、積極的な労働の課題について議論をやって、方策を打ち立てていただきたいというふうに考えるわけであります。

 四つ目には、福祉の問題であります。ホームレスの人たちがあいりんを中心としてどんどん市内に広がっているという傾向があるわけであります。あいりん地域内の団体が行っている炊き出しにも、毎日400人ぐらいの人たちが行列しているというようなのが現実の姿であります。そういう意味では、この福祉という視点であいりん対策をぜひとも考えていただきたい。言うならば、あいりんにも人に優しい町という考え方を導入して、人に優しい町をぜひともあいりん地区にも実現していただきたいというふうに思います。それらが実現できるように、あいりんに合った福祉施策の充実をしていただきたい。こういうことをしっかりと検討委員会の中で議論していただきたいなというふうに思います。

 最後に、この検討委員会が来春設置されまして、結論が出るのに3年かかるということであります。中間報告でも1年はかかるだろうというふうに思いますが、この3年間の間何もしないというわけにはいかないわけでありまして、ぜひともそういう基本的なあいりん対策の方針といいますか、それを検討委員会で3年間かけてつくるけれども、それまでの間、毎年200人を超える死亡者、あるいはあいりんの現状というものをしっかりと考えた場合、当面策のところでは、今まで行っているあいりんに対するさまざまな施策をぜひとも継続せなあかんというふうに思いますし、同時に、強めていかなあかんというふうに思うわけです。ですから、そういう立場で、このあいりん対策で、できましたら窓口といいますか、あいりん問題を議論する、あるいは検討委員会も一方でされるわけですから、検討委員会は当然府と市がやるわけですから、その検討委員会の担当窓口がどこなのか、それも民生の保護課なのか。ところが、あいりん対策を考えるときには、そういうまちづくりの問題といいますか、そういう住の問題も含めて検討していただきたい、また検討していかなあかんというふうに思うわけですけれども、そういう幅広い検討をするということになりますと、保護課だけが窓口という今までのことではだめだというふうに思うわけです。そういう意味では、できましたら、抜本計画が出るまでの間は、あいりん対策の関係、そして検討委員会の担当部局といいますか、そういったものをつくる必要があるんではないかというふうに思っております。

 以上申し上げましたように、私なりに今後のあいりん対策の基本計画といいますか、基本方針を打ち立てるに当たっての視点を申し上げさせてもらいました。そして、それができるまでの間の対応策として、しっかりと窓口をつくるべきだということを指摘をさせてもらいました。それにつきまして、できましたら局長の方から見解を聞かせていただきたいなというふうに思います。

◎足立民生局長 ただいま松岡委員の方から、あいりん問題につきまして、あらゆる角度からご質疑、あるいはご提言をいただきました。民生局の仕事、非常に幅広い領域を担当しておりますし、どの問題をとりましても非常に緊急度の高い、また解決の困難な課題ばかりでございますが、とりわけあいりん対策につきましては、なかなか方向性が見きわめにくく、いかにすべきか、本当に頭を悩ませておるところでございます。

 昨年も、越年対策、先ほどから例を出していただいておりますが、これは年末年始、泊まるところもない、あるいは食事にも事欠くといった状態の方々を、南港の方に仮設の宿所をつくりまして、1,000名以上の方をそこへ収容しておるものでございます。そのために、1229日、30日、休日を返上といった形で、これも民生局だけではなくして各局の応援も求めまして、250人にも及ぶ職員を出していただきまして、その緊急度合いを面接相談しておるわけです。そういった中で、昨年も私ちょうど聞いておりましたら、委員もちょっと触れられましたように、千里万博の時代、あるいは花の万博の時代といったような時代に大阪へ出てきた。それまでには、仕事を求めて九州ですとか北海道ですとか、いろんな方面へ渡り歩いておったというような状態のようでございます。そして現在は、大阪で非常に高齢になってきた。で、泊まるところ、食べ物にも事欠く状態であると。相談を受けております者、ふるさとの方へこの際帰ったらどうだといったような状況をお聞きしておるわけですが、ふるさとにはやっぱり妻子がある。しかしながら、若いときに不義理をして家を飛び出してしまったので、今さら帰れない状態だといったようなことを申しておるのが非常に多うございます。この後、10年後、20年後を見据えた場合に、やはり生活設計を自分でしっかり立てなければならないんだよといったようなことを一人一人に相談をしておるといったような状況でございます。

 せんだっても、大都市の民生局長会議がありまして、こういった簡易宿泊所が密集しております地域の対策について、私どもの方から協議題に出しまして、いろいろ議論をしようと思ったのですが、こういう大規模な簡易宿泊所が密集しておりますのは東京と横浜と名古屋と大阪ということだけで、そのほかの都市については余り関心がおありにならない。ホームレスの問題も、少しずつ増加の傾向にはありますが、例えば札幌などですと、冬季の間野宿しますと私どもの方では凍死をするので、そういうホームレスというのは存在しませんといったようなことで、各都市に非常な温度差があるといったような状況でございます。これは私ども一都市ではなかなか解決できない大きな課題だということで、何とか国の方に財政的な援助をということで厚生省の方にもお話し申し上げたんですが、やはり地域的な問題なので、国レベルで新しい制度をつくって補助をする、助成をするといったようなことは非常に困難性がある。現行の制度でもって工夫をされたいといったような、非常に私どもにとっては冷たい回答といったようなことで、悩んでおる状況でございます。

 また、懇親会の席でふと京都だとか神戸の方が漏らされましたのは、12月の暮れになりますと福祉事務所へ相談に来られる。そうしたら、大阪ではそういう越年対策をやっておるのでということで、片道の電車賃だけを持たせて大阪へ行きなさいといったような指導をしておるといったようなことで、これはそちらからも分担金をもらいたいなというようなことを私も言っておったのですが、大阪で対策を充実すれば充実するほど、また全国から集まってくるんではないかといったような、私はふと不安の念がよぎりまして、この問題は本当に方向性の見きわめにくい問題だなと痛感しておるところでございます。

 あいりん対策につきましては、昭和36年に第1次の大きな暴動があった。その後、どのように対策をすべきかということで、府市、あるいは関係者、いろいろ相談しまして、国、府とともにあいりん総合センターというのを設立しまして、その中に、社会医療センターですとか、あるいは萩之茶屋住宅を開設する、また市立の更生相談所をあいりんの中に移転しまして各種の相談窓口を設けたということでございます。また、高齢者、病弱者がふえておりますので、私ども、救護施設を大阪市内外に設けまして、これの収容に努めるといったようなことに力を入れておる。それと、先ほど言いました年末年始の越年対策といったようなことを本市ではやっております。そのほかにも、環境整備事業の実施ですとか公園整備などの地域改善も進めなければならない。地域の方も非常に熱心にバックアップしていただいておるところもございますし、運動団体でもいろんな炊き出し等のボランティア活動をされておるグループというのも存在するわけでございます。大阪府の方では、このあいりん総合センター内に西成労働福祉センターとあいりん労働公共職業安定所を設置しまして仕事の紹介窓口を設けるとともに、求職者手当の支給など、労働施策の円滑な推進を図ることを担当していただいておるわけでございますが、まだなかなか難しい状況でございます。

 そういったことから、ご指摘いただきました今回の府市懇談会の場で、あいりん問題を私どもが議題に取り上げまして、府の方で総合対策検討委員会を設立しようじゃないかという提案をいただいて、今回実施するわけでございます。

 検討していただく中身としましては、住の問題、これも非常に大切なことだと思っております。そういう簡易宿泊所が密集しておりますので、その地区内のそういった方々の問題もございましょうし、あるいは周辺地域、ご指摘のように、朝日プラザの問題でも非常な私どもの予想に反するような反応もございますし、単にあいりんで働く労働者にとっての住宅をどうするかといったような問題、あるいは福祉といった観点からのみならず、まちづくりといったようなさまざまな角度から、この住の問題を考えなければならないと思うわけですし、労働問題につきましても、非常に高齢化が進んでおりますので、従来は雇用された層が雇用されないといったような状況もございます。また、いわゆる仕事にあぶれて簡易宿泊所すら泊まれない野宿者と、干渉を嫌うホームレスといいますのか、そのあたりとは対応が異なるんではないか。ホームレスの中には、もうほっといてくれといったような趣旨の方も、いろいろ夜回っておりますと、そういう主張をされる方もおいでになりまして、人権上の問題とか、あるいは反対に環境上の問題とか、いろんな調和しにくい要素があるように感じております。

 このように、あいりんが抱えます問題は、大阪という大都市が持っております非常に困難な側面でございますので、委員ご提案のさまざまな角度から、また府市ともども、行政機構がこういう形で対応するのがいいのかどうか、あるいは窓口の問題なんかにつきましてもいかにあるべきか、私ども十分検討しなければならないと考えておるわけですが、いずれにしましても、期待しておりますのは、あいりん地区総合対策検討委員会におきまして、これからの地域の将来像、あるいは当面の問題につきまして、有識者の方々のご意見をぜひとも賜りたい、また、つきましては、市会の皆様方のご意見もちょうだいしながら、国にも働きかけ、今後、国、大阪府、大阪市の3者が相協力してこの問題に対応してまいりたいと考えておるところでございます。

◆松岡徹委員 我々、ぜひとも検討委員会で抜本策が確立されるように期待をしたいわけであります。先ほど局長からありましたように朝日プラザの問題でありますとか、西成署の建てかえのときの騒動の問題でありますとか、そういったことも、一体この地区をどうしようとしているのかということが見えない。地元の人が見えないから、非常にそういう混乱をしているというふうに私は思いますので、ぜひとも積極的な検討、議論をお願いを申し上げたいというふうに思っております。