【 平成15年度決算特別委員会(一般)平成161112-1117日−03号 】

◆小林道弘委員

これまでも決算市会等で議論されてまいりましたホームレス並びにあいりん関係のまちづくりという視点での質問に移らさせていただきたいというふうに思うわけなんですが、今週の月曜日、民主党、我が党の代表の岡田代表が我が地元の西成区釜ヶ崎あいりん地域の方に来ていただきました。代表を中心として衆参数名の国会議員が西成区のあいりん地域、釜ヶ崎を視察したわけなんですけれども、本市からも白井理事、それから松山担当課長等御参加いただきまして本当にありがとうございます。また、白井理事におかれては後の懇談会のときに岡田代表に対しまして、ぜひ自立に向けた雇用、仕事をつくっていただけるよう国でも何とかというふうな要望もいただいて、力強く感じたわけなんですけれども。

 そのときに皆さんとともにあいりん地域、釜ヶ崎地域の町を歩いて幾つかの点に気づかれたことがあると思うんですけれども、例えばマンションとかアパートが多いわけなんですが、現在でもマンションやアパートの窓に鉄格子がそのままの実態等があったわけなんです。往々にしてそこに入居されている方というのは、生活保護を受給されているというふうな側面の実態もあるわけなんですけれども、いわゆるこれらのアパートのことを福祉アパートという言い方を最近しているわけなんですが、この福祉アパートというのが、例えば西成区全体で見ても非常に多くふえてきております。

 その背景というのは、御存じのように大阪市のいわゆる福祉予算、生活保護費の 2,020数億円のうちの約4分の1が西成区に投入されているということもありまして、生活保護費の中の住宅扶助によっていわゆる福祉アパートへの入居というのがふえているというふうな実態なんですけれども、先ほど申しましたようにこのアパートというのは、快適に安全に安心して住めるような状況にはなっておりません。やはり狭くてトイレもなくて共同の炊事場とかいうふうなのが往々にしてあるわけなんですけれども、こういうふうなことがさまざまな問題になってきているんですけれども、できたらこのいわゆる福祉アパート等に関して何らかの規制ができればということで、この間ヒアリング等をさせていただいたんですけれども、そういう規制等についての考えはどうでしょうか。

◎野田健康福祉局生活福祉部保護課長 お答え申し上げます。

 生活保護制度は、憲法が保障する生存権の最後のよりどころとして機能している制度でございまして、保護の申請があった場合、生活に困窮しているかどうかが保護の要否を判定する基準となっており、真に保護が必要な場合には保護を適用しているところでございます。

 委員御指摘のいわゆる福祉アパートの状況につきましては認識しておりまして、厚生労働省とも協議を行っておりますが、有効な契約が成立しております物件について生活保護の適用ができないということにはなりませんし、物件ごとに金額を変えた住宅扶助の設定はできないとの回答も受けておりまして、現在のところ生活保護制度の運用による解決には難しい面がございます。

◆小林道弘委員 今、皆さんも聞いて御理解いただいたように、要は規制等はできないということなんですよ。この間、そういうことで例えば住宅局、消防局、建設局、それぞれに安心・安全で健康で文化的な生活が送れるような基準はできないかというふうに問いかけをさせてもらいましたが、やっぱりそれぞれの局からも皆だめですというお答えで、ただ問題はつい最近もやっぱりそのアパートの近所で火災等が起こったときに消防自動車や救急車が十分に入れない、安全性が確保されないために死亡するというふうな事件まで起こっているわけなんです。

 これは要望という形しかできないというふうになりましたので、ぜひ各局で連携していただいて、こういう実態があるんだ、本当に快適で安全でそして文化的な生活をしていないという現実があるんだということをぜひ認識していただいて、今後の取り組みに反映をお願いしたいということで、これは要望にかえさせていただきます。

 そして引き続きまして、あいりんの高齢日雇い労働者を対象として実施しております生活道路清掃事業、高齢日雇労働者等除草等事業、いわゆる特別清掃事業等についてお尋ねしたいと思うわけなんですけれども、現在あいりん地域におきましては日雇い労働者の就労状態が悪化しておりまして、特に高齢日雇い労働者の求人状況が悪化したために、高齢日雇い労働者を対象として平成6年11月からの生活道路清掃事業、平成11年7月からの高齢日雇い労働者等を対象とした高齢日雇労働者等除草等事業が実施されているというふうになっているわけなんです。

 問題は現在、国から出ております緊急地域雇用創出特別交付金がもう切れる、昨年の我が会派の質問からもこの点については質問させていただきましたけれども、いよいよ現実味が帯びてくるわけなんですが、先ほども申しましたようにこれまでにつぎ込んだ事業によって、どのようないわばいい成果があったのかというまずその成果の点について、そして課題は何かという点についてお伺いしたいと思います。

◎野田健康福祉局生活福祉部保護課長 お答え申し上げます。

 生活道路清掃事業、高齢日雇労働者等除草等事業でございますが、これらの事業は経済不況、建設・土木産業の求人の減少に伴い、あいりん地域の日雇い労働者の就労状況が著しく悪化し、特に高齢日雇い労働者の求人が減少したため、本市の単独事業として生活道路清掃事業は平成6年11月から、また高齢日雇労働者等除草等事業は平成11年7月から臨時的に実施してきた事業でございます。

 平成11年7月に国の補正予算対応による緊急地域雇用特別交付金が創設されましたが、あいりんの求人状況が好転しないということもございまして、都市美化対策の一環としてこの基金を活用し平成1111月から事業拡充を図ってきました。また平成1311月には同様に新たに緊急地域雇用創出特別交付金が創設され、平成14年度からこの交付金を活用し事業を実施しております。

 平成16年度では登録者 3,100人に対しまして、本市単独分、交付金分を合わせまして1日 181人、大阪府分を合わせますと1カ月に約3回の就労機会を提供しているところでございます。このことによりまして、就労機会が減少している高齢日雇い労働者に対して、就労意欲の維持、野宿生活に陥ることへの防止等の効果があったと考えております。

 一方、先ほど委員からも御指摘ございましたように、緊急地域雇用創出特別交付金が今年度で終了する予定でありますため、それにかわる財源の確保が課題となっております。

◆小林道弘委員 今、御答弁いただきましたように、この緊急雇用創出基金を含めての対策事業は、本当にあの高齢者の多い地域で皆さんが助かっている、大きな成果があったというふうな答弁だったというふうに思うわけなんですけれども、本当に私もそのように思っております。特に登録者が 3,100名を超えている。問題は、やっぱりここでの平均の年齢が60歳ということで、当然それまで建設労働に従事されていた方が60歳を過ぎると極端に雇用等が全くなくなってまいります。

 ところが軽微な清掃事業ということで、それにつくことによって日給が 5,700円です。そしてその 5,700円も月に3回ぐらいようやく職につけて、それ以外はどういうことで生活をしているかといえば、例えば1日1回民間団体による炊き出しに並んで1食で済ませたりとか、もしくは御存じのように空き缶とかアルミ缶を集めてそしてそれを売って生計を立てているということで、大体1月3万円ぐらいの収入しかないと。それによって1月何とか食いつないでいるというのが実態です。ですからこれが切られれば本当に非常に大きな問題になるというふうに思うわけなんです。

 残念ながらこの事業の主な財源となっております緊急雇用の特別創出基金が今年度で終了するということになりますので、切れたら生活が圧迫されてしまって、いわゆる行旅死亡人、行き倒れの方がまずふえるのではないか。その次に今までは頑張って生活保護を受けずに何とか月3万円で生活をしていた人たちが、これが生活保護へのかわりにならないだろうか。それでなくても大阪市は今、生活保護費が突出しているわけなんですが、逆にそういうふうに生活保護への移動という可能性にはならないか。あともう一つは、やっぱり市政や生活に対して不満や不信感を持っているがゆえに、この制度がなくなって日々の生活が厳しくなればやはり治安等の問題にも発展しかねないというようなさまざまな課題が、この基金が切られることによって生まれてこようかと思います。

 そこで、来年度以降、こういうふうな状況に対してどのように考えているのかについて、お尋ねしたいというふうに思います。

◎野田健康福祉局生活福祉部保護課長 お答え申し上げます。

 生活道路清掃事業、高齢日雇労働者等除草等事業、いわゆる特別清掃事業につきましては、野宿生活を余儀なくされるおそれのあるあいりん高齢日雇い労働者に対しまして一定の役割を果たしております。そのため、国家予算要望における重点要望として、特別清掃事業を含むあいりん対策として実施している各種事業に対しての財政措置を求めております。

 ホームレス対策としましては、特別就労対策の実施も要望しております。また、大都市民生主管局長会議等におきましても同趣旨の要望を行っているところでございます。また、本年10月に野宿生活者の雇用促進を図ることを目的として、大阪労働局・大阪府・大阪市の行政機関と経済団体・労働団体で構成される大阪野宿生活者就業支援協議会を設置したところでございまして、この協議会の活動内容の1つとして、軽易な作業の提供について協力依頼を行っております。

 今後とも機会あるごとに国に対して財政措置を強く要望してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

◆小林道弘委員 きょう市長、出席していただいておりますが、市長も鋭意、精力的に国の方に何回も行っていただいております。今、答弁もございましたように財源措置を強く要望してまいりたい。ただ問題は、予算の時期に要望していただいてももう既に予算というのは確定されているのではないかというふうに思います。今この時期に本当に、ある意味腹をくくってしっかりと要望していただくのが大事かというように思います。

 そこで、この問題にかかわりまして、強く要望していただくのは大切と同時に、ただ今回、厚生労働省の方からは2005年度から新たに全国一律の雇用対策を見直して、市町村から提案を募って雇用創出効果を審査するいわゆるコンテスト方式というのを導入するというように聞いております。それに入選したプランについては、最大で6億円の補助をする事業を始めるんやというふうにプレス発表にもされておりました。できましたらぜひそのことも検討していただいて、国に対して大阪市として手を挙げていただくことも重要ではないかというように思います。

 そしてきょうの質疑の最初の方で、財政局の方からも御答弁いただいておりますように、大阪市的にもそれぞれの、各局の分権型予算編成システムと同時に50億円の重点予算枠があると。その重点予算枠に手を挙げる根拠というのは、各局間にまたがる1局間では解決できないようなそういう重要な課題についても考えていくというふうな答弁でしたので、ぜひそのことについても手を挙げていただきながらしっかりと予算要望の方をお願いしたいというふうに思います。

 そこで、ホームレスの自立支援、ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある人たちが多数存在する地域でありますけれども、あいりん地域における生活上の支援において就業の機会を確保することが重要であるという認識でありますが、先ほどの答弁の中でホームレスの雇用の促進を図ることや軽易な作業の提供について、行政機関と経済団体や労働団体で構成されております大阪野宿生活者就業支援協議会が発足したということでした。もちろんこれは新聞にもいろいろと載っておりますけれども、その協議会の役割、そして今後の活動内容等についてお伺いしたいというふうに思います。

◎坂本健康福祉局生活福祉部ホームレス自立支援課長 お答えいたします。

 野宿生活者の自立の支援を図るためには、就労の機会が確保されることが最も重要であると考えております。

 平成15年に行われました野宿生活者に関する全国の生活実態調査におきましても、きちんと就職して働きたいと希望する人が約半数であり、行政からの何らかの支援を受けながら軽い仕事をしたいと希望する人などを合わせますと、就労を希望する人は6割を超えるという結果でありました。そのため、自立支援センターでは、就労自立に向けて生活リズムを取り戻し、職業相談員による職業相談や職業紹介、さらには就職に有利となる各種の資格や技能を取得できる技能講習事業など、その充実に努めているところであります。

 しかしながら現下の厳しい雇用情勢では、就労自立による退所は約4割で推移しております。就労機会の確保、また安定した雇用の確保をするためには、行政機関のみでの取り組みには一定限界もあり、民間企業等の協力が不可欠でありますことから、今般、経済団体・労働団体を交えました大阪野宿生活者就業支援協議会を設置したところでございます。

 野宿生活者の雇用の促進を図るためには、まず事業主等への啓発、いわゆる野宿生活者問題に対する理解を深めること、また常用雇用に向けた体験就労としての職場実習やトライアル雇用制度の活用、求人ニーズに合致した技能講習科目の選定などについて、支援協議会を通じて各団体の協力を得てまいりたい。さらに年齢や職歴等から直ちに常用雇用につくことができない人や、野宿生活を余儀なくされるおそれのあるあいりん高齢日雇い労働者には軽易な作業の提供による雇用の確保も必要であり、この点につきましても協力を願ってまいりたいと考えております。以上でございます。

◆小林道弘委員 今、お答えいただきましたが、この大阪野宿生活者就業支援協議会、まだできて間がない組織だと思うんですけれども、それを通じまして常用雇用の促進、軽易な作業の提供、それを各団体に求めていくというふうなことは本当に大きく評価できるわけなんですけれども、なかなかやっぱりできて間がないというのは信用も含めてこれから前途多難であるというふうに思うわけなんですが、すぐになかなか機能するというのは難しいのではないかというふうに思います。

 行政から一定期間の就労支援が必要であるとも考えるし、あいりん日雇い労働者の多くは就労することを望んでおります。決して生活保護に依存しようとは考えておりません。私もそれについては同感でありますし、そのためにも就労を確保することがまず第1であるというふうに考えております。しかしながら昨今、厳しい就労状況、雇用状況ですので、また同時にあいりんの課題というのは日雇い労働者の就労問題だけではなしに、先ほど議論しました福祉アパートの問題、また周辺地域とのさまざまな影響を与えるというふうなことを初めとして、大きな観点としてはまちづくりということも視点に置いて考えなければならないというふうに思っております。

 そういうことでこのあいりん地域における課題について、一方では都市経営会議、そして都市経営諮問会議等においても議論されているというふうにお聞きしておりますけれども、そこでの議論内容についてお伺いしたいと思います。

◎馬場経営企画室政策調査担当課長 お答えいたします。

 あいりん対策につきましては、本市の来年度に向けた国家予算要望の中で、各種事業に対する財政措置や地域環境改善を目指したまちづくりに対する支援措置の必要性につきまして、都市経営会議においても要望を取りまとめるべく議論を行ってきたところでございます。

 また、都市経営諮問会議におきましては、生活保護受給者の急増や野宿生活者の実態等を踏まえまして自立支援策を強化するとともに、あいりん地域の環境改善を目指して、まちづくりのあり方について検討を行うべきではないかとの意見が出されたところでございます。

◆小林道弘委員 ありがとうございます。今、言われましたように、やっぱりそっち側の部分でもあいりん地域は問題解決するには、仕事やったら仕事という視点ではなしにトータル的なまちづくりの視点が必要やというふうなことでの議論がされているということです。

 そこで、きょうは市長、この問題について最初から出席をお願いしたわけなんですけれども、要は前回の決算委員会のときでも市長の方に質疑がされているというふうに思います。その市長からのいわゆるお答えをいただいて、今、申しましたように諮問会議等でやはり市長の意見をしっかりと反映させながら、一方ではまちづくり的ないわゆるトータル的な解決が必要であるというふうに提言をまとめているというふうに聞いているわけなんですけれども、前回のときに、市長はもう一つ、この問題等についてはあいりん対策の連絡会議の機能を一層強化して課題の解決に努めるべきだというふうに答弁されたと思うんです。

 今回、私はこの問題につきまして各局の皆さんと協議等をさせていただいて、なぜ解決できないのか、同時にこのあいりん対策連絡会議というのが現在どのように進んでいて、市長の命を受けてどのように町が変わっていったのかということでヒアリングをさせていただきました。残念ながらほとんど進んでいないというお答えが返ってきました。それは私、健康福祉局と協議をさせていただいておりまして、私が感じたのはもう健康福祉局1局ではこのあいりん対策連絡会議というのを使い切れない。もしくはもう動き切れないのではないかという感も受けたわけなんです。

 この間、ずっと先ほどの質問から言わせてもらっていますように、片一方では国の資金が切れて現実に死が直面しているという緊急的な人に対するカンフル剤、同時に片一方では、その人たちも含めたトータル的なまちづくりという慢性的な病気に対する治療薬、両方が必要だと思うんです。そういう意味で市長の方から、前回非常に強い決意をいただいたわけなんですけれども、現実的には片一方のカンフル剤が切れて片一方の慢性的な病弱に対する対応策は進んでいないというのが今の現時点なんです。

 ということで、改めて市長に今、言っている2つの視点で、今後本市としてどのように考えていかれるのかということを市長の考えをお伺いしたいと思います。

◎關市長 ただいま小林委員御指摘のように、本市におきましてはあいりん対策連絡会議を設けまして、この地域のさまざまな課題に取り組んでいるところではありますが、あいりん地域のあり方そのものにつきましては、これは長年の歴史的な経緯も一方ではありますし、ただいま御質疑いただきましたような多岐にわたる非常に難しい課題があることも事実であります。

 しかしながら、現在のあいりんの状況は近年の労働環境、特に日雇い労働者を取り巻く環境が非常に悪化しております。また同時に、日雇い労働者の高齢化に伴います野宿生活者の増加、またいわゆる御質疑のありました簡易宿所のアパートへの転換に伴う生活保護受給者の増加等、地域内だけではなく、そのような環境が周辺にも影響を及ぼしているということなど、新たな課題も顕在化してきておりますし、大変厳しい状況であると認識いたしております。

 都市経営諮問会議での種々の御意見につきましてはただいま御答弁したとおりでありますが、このまちづくりという観点からもこれに対して取り組むべきであるという御意見をいただいております。ホームレス対策につきましては、就業の機会を確保するということが最重要であることは私も全く同感であります。これに対しましては、国に対してもいわゆる特別就労対策事業等の実施を強く要望してまいりました。また同時に、あいりん対策事業につきましても財政的な措置を要望してまいっております。

 引き続き早急にそして強力に要望を続けてまいりたいと考えておりますので、市会の皆様方の引き続いての御支援をお願いする次第でございます。

◆小林道弘委員 市長、どうもありがとうございます。今、言っていただきましたように、本当により強く、そしてまた早急に進めるべき課題だと思いますので、お願いしたいと思います。そして各局、大阪市全域の皆さんにおかれましては、この町の特徴が男性でそして高齢者でそして単身者で建設労働出身の人であるという特徴を踏まえての、それぞれの局間にわたってのまちづくり、そして対応策ということで強くお願いしておきたいと思います。市長どうもありがとうございました。