129-参-法務委員会-3号 平成06年06月20日

 

平成六年六月二十日(月曜日)

   午前十時五分開会

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  本日の会議に付した案件

○検察及び裁判の運営等に関する調査

 (法務行政の基本方針に関する件)

○戸籍法及び住民基本台帳法の一部を改正する法

 律案(内閣提出)

○更生緊急保護法の一部を改正する法律案(内閣

 提出、衆議院送付)

○裁判官の介護休暇に関する法律案(内閣提出、

 衆議院送付)

○商法及び有限会社法の一部を改正する法律案

 (内閣提出、衆議院送付)

○外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特

 別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、

 衆議院送付)

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○栗原君子君  次に、私はホームレスの問題をちょっとお出しいたしたいと思います。

 これは労働省の関係あるいは厚生省の関係、幅広い省庁にまたがる問題でございますけれども、人権擁護という立場の中からここで幾つか質問をさせていただきたいと存じます。

 先月の下旬、東京の新宿で相次いで二人の路上生活者が殺されるという事件が発生をいたしました。当局はこれに対して三人のホームレスを殺人容疑で逮捕いたしました。

 このところ、長引く不況などを背景にいたしまして、ホームレスは急増をしております。そして、多くの人たちは高齢化し、身体を患うなど社会的な支援を必要としていると思われます。にもかかわらず、行政は地元商店街などと追い出し策を繰り返すばかりでありまして、毎日毎日イタチごっこが続いているわけでございますが、根本的な仕事のこととか住宅のこととか、そういったこともあわせてこれは解決をしなければならない、こういうことでございます。

 私は、六月八日でございましたけれども、新宿のホームレスの人たちを視察に参りました。その前に、新宿区の担当者ともいろいろお話をいたしまして、担当者としての気持ちも聞かせていただきました。そこで私がホームレスの人から聞いたのは、段ボールの中で寝ているんだ、私たちはついこの前まではちゃんとした労働者だったんだ、ちゃんとしたサラリーマンだったんだと。それがある日突然にもう会社に来なくてもいいと言われて、寝るところがなくてここで寝ているんだと。働いているときには一日千六百円から二千円ぐらいのドヤというところに寝泊まりができたけれども、今は働けないからお金がなくてそれができないからここの段ボールの中で寝ているんだ、そういうことでございました。

 そして、ずっと私はお話をして回ったし、皆さんが集まってくださってたくさんのことをおっしゃったわけでございます。中にはつい先日、革靴で顔をけられたと、ここに大きなばんそうこうを張っておられまして、目の中が充血をしてとても痛々しい状況でございました。そしてある人からは、ネクタイをした本当に紳士らしい通勤客といいましょうか、そういう人がたばこを火がついたままぽいと自分たちが寝ている段ボールの中に投げ込んでいく、こういう状況もたくさんあるということも聞かされました。

 ぜひ人権擁護の立場から、このことについてどうお考えでいらっしゃるのか、お伺いいたします。

 

○国務大臣(中井洽君) 先生御指摘のように、長引く不況でホームレスと言われる人がふえておることは承知をいたしております。

 いろんな対策があろうかと思いますが、それぞれ労働省や厚生省の御担当であろうかと思いますけれども、そういう物を言えない、あるいは抗議の声すら上げられないいわゆる弱者に対して人権を無視したような行動がなされるということは基本的人権に対する認識欠如だ、このように私どもは考えております。

 できる限り啓発活動等を通じてこういう人たちにおいても人権というものはきちっと守られるべきだこのことが浸透するように努力をしていきたいと考えております。

 

○栗原君子君 新宿で大体六百人前後の人たちがいると言われています。都内で千五百人ぐらいいると言われているんです。これは市民団体のボランティアの人たちが調査をしたわけでございます。

 昨年の九月ごろから少しいろんな動きがあった

と私は新宿区の区役所の方から聞きました。それまでは一カ月に二百人前後の相談であったけれども、これが十月になりますと三百人になって、それからもう月々月々上がってきまして、一月に四百人、三月に五百人、四月に六百人、五月には千二百人、一気に急増しているわけですよね。区役所の方ではカップラーメンと乾パンを用意しているということをおっしゃっておられました。

 それから、本当に皆さんは仕事がないわけです。そして、病院にかかりたい人もたくさんおられるわけですが、ぜひこういった相談の窓口みたいなものを、どこの省庁がやってくださるのかわからないけれども、つくってもらう必要があるように私は思うんです。人権擁護を言っておられる法務省はこれに大きくかかわっていただきたい、こういうことを私は思うわけでございます。

 そして、今、大臣が答弁くださいましたけれども、新宿には段ボールがずらっと夜並ぶんですよね。その中で皆さんそれぞれ寝ていらっしゃるんです。私は身なりももっと汚いのかと思ったら、汚いと言ったら悪いんですが、汚れておられるのかと思ったら割ときれいな身なりをしていらっしゃるんですよね。それから、国会の今の状況なんかすごくたくさん皆さんよく知っておられる。私以上に知っておられるんです。それは皆さんが捨てられた新聞を拾ってこられまして隅々まで読んでおられる。雑誌もよく読んでおられるんですね。だから情報はすごく持っておられるんですけれども、私はこの状況をぜひ大臣に視察していただきたいと思うんですけれども、約束してもらえますかどうか。

 

○国務大臣(中井洽君) 就任以来、きょうで四十日余りになりますが、実は国会の御日程等ありまして夜もほとんどどこにも出られない状況でございます。事務当局からは外国人労働者の不法滞在の件を含めて新宿を一遍視察してほしい、こういう要望もありますし、私も見に行きたいと考えているところでございますので、日にちがとれれば先生の御要望の点、ホームレスの視察も相あわせてやってまいりたい、このように考えます。

 

○栗原君子君 ぜひ約束をしていただきたいと思います。

 諸外国ではホームレスの問題というのがそれこそ社会問題になっているんです。アメリカなんかでも膨大な予算をつけてこの対策をやっているわけでございます。日本もこのままほうっておいたら私は大変な状況になると思うんです。

 全国各地から皆さん来ておられますよ。沖縄から鳥取から島根からもいっぱい来ておられます。そして、それは会社の方から言われて自分たちが労働者として働きに来て、ある日突然捨てられて働くところがなくて、金がなくてここにいるんだ、そういうことでございました。これは本当に日本にとっても大きな社会問題になると思いますので、近いうちに何とか時間をやりくりしていただいて、夜行ってください、夜、昼でなく。夜でないと段ボールでは寝ておられませんので。よろしくお願いします。

 さて、時間も参りますけれども、最後になりますが、私は供託金のことについて、どなたが御答弁くださるのかわかりませんけれども、お伺いをいたします。

 実は、外国人の方が日本で徴用工として働いておられまして、戦後本国に帰られるときに会社側は地元の法務局に対してその外国人の労働者の賃金を供託しているわけでございます。これにつきまして、きちっとまだ名簿も残っておりますし、それからぜひ自分たちの働いた賃金だからお返しをいただきたいというようなこともあるわけでございますが、この供託というのはどういったことを注意しながら供託金はお受けになるのか、お伺いいたします。