129-参-国民生活に関する調査会-2号 平成06年02月24日

 

平成六年二月二十四日(木曜日)

   午後一時開会

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   参考人

       慶應義塾大学総合政策学部教授  丸尾 直美君

       お茶の水女子大学教授      湯沢 雍彦君

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  本日の会議に付した案件

○理事補欠選任の件

○国民生活に関する調査

 (本格的高齢社会への対応に関する件)

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○参考人(湯沢雍彦君) 今の御質問は国際家族年にちなんだ御質問ではあるんですけれども、きょうの老人扶養との関係からいいますとかなりずれることになるんですが、よろしいのでしょうか。――実は、六年ぐらい前ですか、国連総会でことしを国際家族年にしようという議決がありまして、もちろん日本もそれに加わっているわけでございます。

 ところが、国際家族年の提唱は、実は、多く発展途上国において、ホームレスの人々、つまり、暮らすべきます建物がない、家屋がないという人たち、それから難民で、過ごすところがない人たち、それから、親に捨てられて、ストリートチルドレン、道端に寝転がるしかないという子供たち、そういう人たちに温かい家庭的環境を与えようという強い声が大きく一つですね。もう一つは、先進諸国の中でありますような、それからかなり中南米でもあるんですけれども、一応両親と子供はいるんですけれども、ほとんど父親がうちにいない、もうほとんど遊びに、仕事に出ていていないような家庭。たまに帰ってまいりますと、実はメキシコその他の国で聞いたんですけれども、もうやたらに妻や子をしかり飛ばすだけではなくて殴り飛ばしまして、中南米では殴れば殴るほどだんなさんの愛情の証拠だからそう思えという国が多いんだそうでありまして、だから良識ある大学院出の女性などはとても同国人と結婚したくないなんという報告を聞いたこともありますけれども、要するに妻としてあるいは子供としての権利がほとんど認められてない国がたくさんあります。そういう父親、夫と同じような権限を認めろという国において高まってきた。それから、アメリカ等の一部のところでは、ひどい夫による虐待ですね、性差別等でさげすまされている人がたくさんいる。そういうところで、やりきれないから家族をもっと温かい充実したものにしろ、そういう声に支えられて国際家族年が登場してきたものだというふうに思います。

 さて、そういう背景は一体日本ではどうなのかといいますと、日本では、幸か不幸かと申しますか、幸いなことに、ホームレスの人が今やほとんどいなくなりました、うちがない人というのは。それから街頭で寝泊まりしている少年少女もほとんどいなくなりました。そういう意味においては非常に恵まれた国になりましたので、どこに焦点を置いたら国際家族年らしい行事ができるのか。

 実はほとんどのマスコミも各省庁も困っているんじゃないんでしょうか。何をやったらいいのかわからない。私は日本が一番困っているんじゃないかと思うんです。つまり、日本も十数年前まで、かなり女性にとって不利益を来すような条文があったとか、それから家庭科教育その他において、女性は必修だけれども男性はとらなくていいというようなアンバランスもあった。そういうときにはそういう法規を是正しなきゃいけないということがかなりはっきりしましたですね。そういうことの是正もかなり、大方済んでまいりました。まだ一部民法の上で女性不利の規定は残っているとは思いますけれども、それについては改正が進められていることを伺っております。そういう問題もしかしかなり片づいてまいりました。そうすると、何を目標にしたら国際家族年らしいものになるのか。実は、去年の秋から私の研究室へはもうNHK初めいろんな放送局や新聞社が来まして、何をやったらいいか何をやったらいいかと聞かれて、実はどちらも首をかしげるばかりでうまくいかないという問題があるわけであります。

 さて、それでは簡単に申しますと、非常な病理的な側面は今の日本家族は非常に少なくなってきたという点があります。

 きょうのお話と外れて余計なことのようですけれども、例えば離婚の問題が上下いたしましてここ数年ちょっとふえたりするんですが、これはまた第二次ベビーブームの年が通り過ぎますと下がっていくだろうと思います。全体から見るとアメリカの半分にも達しないとカソビエトの三分の一であるとかという少なさでありまして、先進国中最低のレベルを持っている。それ以外の、例えば未婚の母がどのくらいいるか、結婚以外の子供がどのくらい生まれるかといったような問題とか、それから親子間の乱暴な態度が行き着く先は親殺し、子殺しでありますけれども、尊属殺統計を検討すればするほど、それから子供の親による子供虐待の極致は嬰児殺という赤ちゃん殺しですけれども、実はこれは幸いなことに非常に下がり続ける一方なんであります。そういう病理的な側面は非常に少なくなってきたことは幸いなことだと思います。

 それでは日本の家族が非常に円滑、平穏でいいのかと言い切れない面が実はいろいろあるわけであります。

 私の感じといたしますと、何といいますか、家族、親子の心理的な結びつきが少なくとも先進国の中ではかなり弱い国ではないかということを非常に感じております。例えば、小学生に、大きくなったらお父さんのような男になりたいかというようなことを聞いてみます 女の子には同じようなことをお母さんについて聞いてみます。そうすると、それを支持する答えが十三の国に調査いたしましたところ最低なんであります。お父さんが大好きとかお母さんのような女の人になりたいとかという心情が子供にありません。そういうところはかなります困ったことだと思うんですね。

 それから、夫婦の間におきましても、夫婦だけでどのくらしよく話し合うかとか夫婦だけで親しい態度が示せるかとか夫婦が仲良く旅行するのは幾日あるかというようなことをとってみますと、これも先進国中最低であります。夫婦の問題につきましては妻よりも夫側にはるかに大きな責任があると思いますけれども、やや日本の夫は、結婚をしてしばらくいたしますと分裂性的な冷たい態度になりまして、よく会話もしなくなるとか、まず基本的にはうちへ帰って家庭で過ごす時間が最も乏しい国ですね。八時前に夫が帰ると、この間までは奥さんの方がかえって不思議がって、稼ぎが少ない、能力がない男で恥ずかしいぐらいだという声がよく聞こえましたが、だんだんそれがなくなってきたと思うんですが、ともかく夜の時間をこんなに過ごさない夫婦はない、先進国の中で。それは明瞭に言えると思うんですね。

 私が知っている限り、ドイツ、イタリア、スペイン等の普通の庶民が六時過ぎに夫がわきにいない暮らしというのは考えられないということを普通の人が言います。日本ではそういうことは全く聞かないわけなんであります。そのような夫婦間の情愛が非常に乏しいということを感ぜざるを得ません。こういうのを私はもしなくすことができるんであるならば、これは非常に難しいと思うんですけれども、それこそが日本における国際家族年の向かうべき大目標ではないか、そういうふうに思うんです。

 もっと小さく言いますと、例えば国際養子縁組がとっても少ないんですね。やろうという気がありません。要するに知り合い養子しかとらないで、縁もゆかりもない悩める国の子供たちを養子にしようとか里子にしようとかという気が最も乏しいです。こういう点はよくないとか、そういう点はあります。

 

○栗原君子君 実は、私も近所の主婦の人たちといろいろとお茶を飲みながら話す中で、自分の老後はだれと過ごしたいですかということを聞きま

すと、大体の奥さんが自分の娘と、それからその娘の子供たちとかその娘の夫、そういった人たちと、娘の方と住みたいということを言っているわけですよね。いわゆる何といいますか、テレビのサザエさんのようなあれがいい、そういうことを言う人たちも結構いるわけでございます。だれもだれもサザエさんのような暮らし方はできないのでありますけれども、大変私はこれは興味あるなと思うんですよね。息子がいても息子の嫁さんには余り自分の老後を見てもらうのは少し遠慮があるとか、そんなことを言うわけでございます。

 私は今先生のお話を伺っておりまして感じましたんですけれども、親と住む場合にプラスの面もたくさんあるんですけれども、やっぱりマイナスの面も幾つかあるわけでございまして、私は長年ボランティアをしておりまして、寝たきりのお年寄りを抱えたうちの嫁さんはもう本当に地獄のような生活をしていらっしゃるというのを幾つも見てきたわけでございます。

 それで自分の身の回りのこととか、それから家事ができるおばあちゃんについては大変喜ばれているわけでございますけれども、身の回りのことができないおじいちゃんでございますよね、そういうおじいちゃんと住むことは大変嫌うという状況でございます。そうすれば、だから、身の回りのことぐらいはできるようなおじいちゃんになっておかないと若い者と一緒に住んでもらえないんじゃなかろうか、そんな気もするわけでございまして、やっぱりこれは小さいときからの男女平等教育、自分のことは自分でするというごく当たり前のことをしっかり学校の中で教えてもらう必要があるのではなかろうか、こんなことを感じたわけでございます。

 それから、実は私はきのうやっぱりこの委員会での勉強会に出していただきまして、スウェーデンの在宅ケアチーフの馬場寛さんのお話を伺いまして、スウェーデンでは結構男性の皆さんがヘルパーをしていらっしゃることを聞きまして、もっと日本でもこのヘルパーという仕事に男性の人にかかわってもらいたいと、そんなことを私は思ったわけでございます。

 それとあわせて、マンパワーの確保と先生がおっしゃっております、この8のところのAの中にございますけれども、今大変ヘルパーの確保、看護婦さんの確保なんかが難しい今の状況でございますが、日本で働きたいというアジアの国々の人たちもたくさんいらっしゃるわけでございますから、三Kというところを外国人に押しつけるんではないけれども、何か資格を取ってもらうとか、ある程度の賃金を保証するとかなどいたしまして、もっと日本におられる外国人の人たちにそういったヘルパ一などのお手伝いがしてもらえるようなことを考えないとなかなかマンパワーの確保というのは難しいのじゃなかろうか、私はこんなことを思ったわけでございますが、ちょっと一言先生の御感想をお願いしたいと思います。