126-衆-厚生委員会-14号 平成05年06月02日

 

平成五年六月二日(水曜日)

 

 

本日の会議に付した案件

 精神保健法等の一部を改正する法律案(内閣提

 出第七四号)

 社会保険労務士法の一部を改正する法律案起草

 の件

 調理師法の一部を改正する法律案起草の件

     ――――◇―――――

 

○土肥委員 それではお配りくださいますように。

 質問をさせていただきます。

 一九八四年、例の宇都宮病院事件が起きました。そして前回、二十二年ぶりに精神保健法の改正が行われまして、五年後の見直しをするべく今精神保健法の改正を審議しているところでございます。

 昨年、平成四年六月の厚生省の調査では、いわゆる任意入院、これは自発的な入院でありますけれども、六〇・三%となったと報告されております。大変この率が高くなることは精神保健上好ましいことと考えますが、一方で、病院の閉鎖病棟は依然として五八・二%。前回決められました閉鎖病棟の中に公衆電話を置くということですけれども、まだ八七・八%しか置いていない。それから、任意入院でありますからほぼ自由に開放病棟で移動ができるはずなのに、現在任意入院の患者さんが五五%も閉鎖病棟に入っているというふうな統計が出ています。

 私は、宇都宮病院事件以来、日本の精神病院は処遇やらあるいは治療が今日どの程度改善、改良されたのかということに興味があるわけであります。しかしながら、どうも今日でもなお通信とか面会の自由が十分でなく、また入院時に当然行われなければならない告知のあり方、あるいは指定医が少のうございまして、任意入院の患者さんが保護室に入れられるというようなときも指定医が診ないで、とりあえず任意入院で入れておいて後で医療保護入院に切りかえるなど、さまざまな具体例、問題があるようでございます。

 そういう観点から、私はある大阪の病院を訪れたわけでございます。それを少し紹介させていただきますけれども、期日はことし一九九三年五月八日の土曜日でございました。大阪に大阪精神医療人権センターというのがございまして、これは弁護士さんたちが中心にやっております、任意の精神病の患者さんたちの人権を守るセンターでございますけれども、そこに所属する弁護士さん三名、それからこのセンターに出入りしていらっしゃるその病院以外の精神科の医者二名、その他数名と、それに参議院議員の三石久江先生、そして私、土肥隆一が同行いたしました。

 そして、五名の患者さんの面会を申し入れたわけでございます。この人権センターに事前に電話で、あるいは友達を介して、この人権センターの訪問を受けたいという申し出がございましたので、人権センターでは面会申入書という書面をつくりまして、昭和六十三年四月厚生省告示第百二十八号第三号規定に基づく代理人であるというふうに言いまして、弁護士の名前を挙げ、そして所属は大阪弁護士会である、患者名はかくかくである、患者本人に会いたい、そして五月八日の日付を入れて病院の窓口に提出をいたしました。

 病院では女の方がいらっしゃいまして、その患者さんの名前をメモに控えまして、そして、ちょっとお待ちくださいと言って裏の方へ行ったわけであります。しばらく待っておりましたら、大体それが十三時二十分ごろでありますけれども、二十分ほどしましたら、ここの川井院長、それから春日医局長がちょうどそのあたりを歩いていらして、たまたま外来の診察室に入られるのを見ましたので、私は名刺を差し出してごあいさつをしたわけであります。そして、一緒に参りました者がその外来の診察室に入りまして、いろいろとやりとりを始めたわけであります。

 それは、まずは面会に来たわけでありますから、面会の手続をしてもらっている間だけ少しお話を聞かせてくださいと申しまして、特にその中では、実は二月二十二日にこの病院である事故が起きまして、患者さんが救急病院に入って、そこで亡くなられるという事件がございました。そのことについて、これも後で少し申し上げますけれども、いろいろとお聞きをしたわけであります。

 新聞報道等あるいはこの人権センターが調べた範囲ではいろいろと問題点があるので、その点を主治医であります川井院長、ここでは名前を挙げさせていただきますけれども、そして内科の先生である春日医局長、このお二人と私の三者が座りまして、その周りで連れの者が話を聞くということになりました。そして、いろいろその患者さんの死亡事件について聞いていったわけであります。

 この事件の内容についてはいろいろと疑問がございますので、その当時の実情がどうだったのかということをいろいろお聞きいたしました。しかし、これはもう既に告訴されておりまして、刑事事件として警察が入っておりますので、その内容について多くを申し上げる必要、また申し上げることもできないというふうに思いますが、その面会をしている間にいろいろお聞きして、なかなか面会の手続が進まないわけですね。まあかれこれ二時間ぐらい、そこでその二人のお医者さんと話をしていたわけです。

 そして、いよいよ面会が成るのかなと思いましたら、この春日という内科の先生ですけれども、今現在、私どもが訪問した直後にこの院長がかわりまして、この春日医局長が院長にかわっておりますので、ある意味では更迭人事がなというふうにも思ったわけでありますけれども、この春日医師がやってまいりまして、面会は保護義務者の依頼でしかできない、保護義務者あるいは本人の承諾書があれば面会できます、こういうふうに言って、我々の面会はできないということを言ってきたわけです。

 御承知のように、この精神保健法では、弁護士の面会はあらゆる場合を通じて制限されないというのが原則でございまして、我々は面会をする権利があるし、また患者さんも面会を受けていいはずだというふうなやりとりをいたしました。それでもだめだと、こう言うわけです。

 この春日医師はこの外来の診察室からしきりに入ったり出たり入ったり出たりするわけでありまして、何をするのかなと思いましたら、どうやら某所、どこかわからないのですが、私ども大体推測はっきますけれども電話をいたしまして、一々どうしたらいいかということを聞いているようであります。三度ほど電話を入れておりました。そして、その都度何かを言ってくるわけです。

 最初にやりましたのは、面会を申し入れた患者さんのメモ書きを持ってまいりました。そして、メモ書きは何が書いてあるかというと、患者さん自体が会いたくないと言っているからあなたたちは会えません、こういうふうに言うわけです。それはここに写しを持っております。この春日医師が自分でも言いましたけれども、私が指揮して書かせた、例文を出して書かせた、こういうふうにおっしゃいましたので、これはもう間違いないことでありまして、面会人に会いたくない、こういうふうに患者が言っていますよと、ちらちらしながら持ってきまして、そして私どもにそれをくれたのですね。

 こう書いてあります。患者名は伏せます。「大和川病院長どの 平成五年五月八日」名前が書いてありまして、「今後入院ちりょうについてはそうき退院をお願いします つきましては弁ごし等に一切いらいしません」拇印が押してあるのです。もう一人の方は「今後の入院退院に付いては病院側の指示にしたがい弁護士等いらいは一切致しません」「こんどのりょうようおよびたいいんについてはいっさい病院がわのちりょうにしたがいます べんごしはりよういたしません」「今后、早期の転院をお願い致します。つきましては今后弁護士等いらい面会することはありません。よろしくお願い致します。」こうなっております。こんなものをなぜ書かせるんだということでまた一悶着あったわけであります。

 しかし、後にこの春日ドクターが報告書というのを書いておりまして、だれにあてた報告書がわからないのですが、そのファクスの写しが私の方にも回ってまいりまして、とにかく人権センターと国会議員がやってきて、脅迫をもって面会を強要したというふうに書いてありますので、もし議員の皆さんや厚生省当局にそういう文書が入りましたら、いつでも私の面会の記録と照らし合わせて読んでいただきたいと思うのであります。

 そして、こういうことを書かせるというのは、これはもうまさに医者としての越権行為である、こういうことをやるべきではない、面会をさせてほしいということをたびたび申し上げました。

 それで、電話で何度もまた連絡をいたしまして、やっぱりだめだと。例えば二名だけ、一人退院してもらいましたから四名残っているのですが、そのうちの二名だけでいいから会わせてくれと、私が政治家みたいな交渉を始めたわけでありますが、そうしたらまた電話をするわけです。それで、だめだと。では一名だけということで依頼いたしましたら、この春日ドクターもさすがに、まあそれくらいしょうがないだろうなというような気分になってきたので、やれやれと思っておりましたら、またもやまずい、だめだ、こういうふうに言うわけです。

 三回目の電話の後でこういうふうに言いました。僕が言ったんじゃないぞ、これは僕が言ったんじゃないけれども、僕にとってはちょっとなと。私が、これは管理上の問題ですから、あなたが責任者であるから、あなたの権限で判断したらどうですかと言ったら、それはできないんだ、私には権限がないんだ、こういうふうに言いまして、とうとうその場を我々は引き下がらざるを得なかったというのが実態でございます。この病院の面会を私、経験いたしまして、まだこんな病院があるのかということを痛切に感じました。

 そこで、少しこの病院の中身に入ってお聞きしたいのですが、まず、どうでしょうか、厚生省当局の方の見解として、この弁護士が持参しました面会申入書は、精神保健法的にもあるいは面接の通知や告知上も適切なものであるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

 

○谷政府委員 ただいま先生からるる御説明のございました件につきましては、先生が病院に行かれた際の弁護士の面会申込書については、私ども内容を見させていただいておりますので、そのものについては適切なものであるというふうに判断をしております。

 

○土肥委員 それでは、この敗者さんたちに弁護人には会いたくないという文章を書かせた、こういうことを医師が指導するということでございますけれども、これは一種の面会制限に当たると病院側は言うでしょう。現行制度上、こういうものが日常的に書かれているような病院なんですが、そのことについてどういうふうな考えを持ち、今後どういうふうな指導をなさろうとしていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

 

○谷政府委員 まず御指摘の、弁護人には会いたくない旨の文章が書かれたかどうかということについては、現在この問題全体を含めて大阪府の方で調査中でございますので、今お話しのことについて具体的なコメントはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申しますと、先ほど先生もお触れになりましたように、現行の精神保健法上、精神病院の管理者は、患者または保護義務者の依頼によって患者の代理人になろうとする弁護士との面会の制限を行うことはできないということになっておりまして、たとえ管理者が患者による面会を希望しない旨の文書を有していたといたしましても、この取り扱いは同様だというふうに考えております。

 入院患者との面会につきまして不適切な運用がなされている場合につきましては、そういうことがないよう都道府県が病院を指導すべきものというふうに考えておりますし、また、特に必要がある場合におきましては、精神保健法第三十八条の七に基づきまして、精神病院の管理者に対して改善命令をすることができるということになっております。

 

○土肥委員 その三十八条の七、改善命令についてはまだ後でお聞きいたしますが、この病院に参りますと全くの閉鎖状態、閉鎖病院、これはもう病院全体が閉鎖病棟と言っていいくらいで、中に準開放病棟、開放病棟もあるのですけれども、感じとしては患者さんががんじがらめにされているんじゃないかということです。

 実はもっと大事なことは、私どもが面会しました患者さんが、五月八日に私どもが面会依頼をしたのですが、五月の十日に突如退院をさせられているわけであります。この退院をさせられた患者さんは今もってどこにいらっしゃるかわからない。中には内部疾患、肝臓とか膵臓の病気を持っていらっしゃる方、あるいは行路病者として行き倒れのようになっていた方が入院されていたわけでありますが、それが突然退院を余儀なくされている。つまり、いなくなっているわけです。

 こういうことが行われますと、私どもが、あるいは弁護士さんたちが面会に行く。面会に行ったらその都度いわばほうり出されるということでございまして、例えば、その日のNさん、三十七歳、五月十日退院をするわけです。この人はアルコール治療を受けていたわけですが、今日でも幾ら調べましても住所不定でわかりません。どこにいるのかわかりません。それからKさん、五十歳代の方で、年齢ははっきりわからないのですけれども、この人もどこに行ったかわかりません。連絡先不明であります。Uさん、この人は二十一歳ですけれども、この人もどこに行ったかわからないし、どういう暮らしをしているか一切わからない。この三名が退院をさせられました。

 お世話をしていらっしゃる人権センターの方によると、恐らくまた路上生活者に戻ったり、それから、生活保護を打ち切られますからその日の生活にも困るようなことで、大阪府の福祉事務所に聞いてもわからない。わからないならば、それは生活保護の対象者から外されるわけであります。実は五月八日の後も、二十二日などに面会をしたら、早速六月五日にはおまえとおまえとおまえは退院させるというような情報も入っております。

 この病院で、とにかく非常に制限された中で、電話や人づてに弁護士との関係を持った者は次から次に追い出されるというような格好になりまして、この人権センターでも、面会が患者さんを非常に不利にするんじゃないかというふうな状態になりますので、こういうことが行われているということについてはもう厳重な注意をこの病院にしていただかないと、今後患者さんが弁護士と会おうとしたときには、その都度追い出されるようでは困るのであります。この点についてどういうふうに対処なさるか、お答えをいただきたいと思います。

 

○谷政府委員 現在、具体的な事例については大阪府で調査をしているわけでございますが、一般論として申しますと、精神病院の管理者は、例えば医療保護入院患者を退院させたときには、十日以内に都道府県知事に届け出なければならないということにされているわけでございまして、こういうことが適切になされていない場合には、都道府県を通じて病院を指導するということになると思います。

 

○土肥委員 どうでしょうか、五月八日の三名は大阪府の方に確認なさったのでしょうか。

 

○谷政府委員 まだ現時点で、私ども退院届が出されたかどうかについては把握をしておりません。

 

○土肥委員 もう十日を過ぎているわけでありますから、これはまさに精神保健法上の瑕疵であるというふうに思いますね。

 それから、十日以上もさることながら、病院が退院のときには保護義務者あるいは扶養義務者に通告をして、そして退院させなきゃならないということも書かれておりますね。そのことも行われていないということも指摘しておきたい、このように思います。

 さて、そういうことでございまして、この病院は調べれば調べるほど不可解きわまりない病院でございまして、例えば診療の実態もどうなのかということは、いろいろと患者さんの訴えがあるわけでございます。中身については、いわばカルテを押さえなきゃならないとか、あるいは診療報酬の請求上のいろいろな手続からしかわからないという面もあろうと思いますので、一つ例を挙げて申し上げますと、入院の手続のときにやらなきゃならない告知義務というのがあるわけてありますが、皆さんのお手元にこの大和川病院の告知義務の文書をお渡ししております。

 厚生省は丁寧に任意入院あるいは医療保護入院の場合の「入院に際してのお知らせ」、つまり告知についてモデルを示しまして、様式七とかそういうふうにして示してありますが、これを今局長ごらんになりまして、どんなところが問題だとお考えでしょうか、お聞きしたいと思います。

 

○谷政府委員 精神病院への入院に際しましては、精神保健法に基づいて、その入院形態に応じて所定の事項を患者本人に対して書面で知らせるということにされているわけでございますが、医療保護入院の場合には、精神病院の管理者は、その入院措置をとる旨、それから治療上必要な場合には行動制限をすることがある旨、また、都道府県知事に対しまして退院等の請求ができる旨を書面で示すことにされております。

 また、任意入院の場合には、これに加えまして、本人の退院の申し出によって退院ができるということ、それから、指定医が必要と認めた場合には退院制限をすることがあるという旨を書面で知らせ、患者から入院に同意する旨を記載した書面を受け取ることになっているわけでございます。

 先ほどお示しなされましたこの病院の「入院に際してのお知らせ」ということでございますが、仮にこれが医療保護入院について用いられた場合を考えますと、入院形態が医療保護入院である旨が示されていないのではないか。それから、都道府県知事に対しまして退院請求及び処遇改善請求ができる旨が示されていないのではないか。

 それから、仮に同じ書面が任意入院で用いられましたと仮定した場合には、入院形態が任意入院であるということが示されていない。それから、先ほど申しました退院の申し出によって退院ができる、あるいは指定医が必要と認めた場合には退院制限をすることがあるということが記されていないというようなことが指摘されるのではないかと思います。

 

○土肥委員 今、七つ、八つ御指摘になったと思いますが、例えば都道府県の連絡先の電話であるとかそういうものも記載されておりませんし、あるいは福祉事務所など書いてありますから、その福祉事務所の電話番号なども書くべきだというように思います。

 これは、局長は仮に任意入院とおっしゃいましたけれども、医療保護入院にも使われているとい

うふうに我々は考えておりまして、この「入院に際してのお知らせ」を見ますと、巧妙に、例えば第一番目に「あなたの入院はあなたの( )の同意と医師の診察の結果入院と成りました」、ここにだれが同意したかということを書かせるというふうになっております。

 私は、これもおかしいと思うのですね。患者さんが、自分が非常に不当な入院をさせられたというふうな意識を持った場合に、それが親であるとか子供であるとかというようなときに、その人に対して敵意を持つということもあるわけでありまして、これはもう明らかに書いてはならない、そういう関係を書いてはならないというふうに思うのであります。

 それから、割り印を押しまして、下に「告知を受けました」といって自分の名前と判を押すというようなこと、これは必要ないことであります。告知を受けなければ入れないわけでありますから。そこだけを切り取って、いかにもあなたはもう文句が言えないのですよというふうな気分にさせる。それから、大和川病院の管理者氏名、それから主治医氏名、印などが全部抜け落ちている。

 これはどうなんでしょうか、大阪府が定期検査、監査で、この書面については指導は行われたのでしょうか。

 

○谷政府委員 現在大阪府において全体的な調査をし、かつ六月に入ってから再度調査をするというふうに聞いておりますので、その調査の過程の中で、こういったような問題についても当然指摘がされるものだというふうに理解をしております。

 

○土肥委員 あえて申しますけれども、定期的な監査で当然目に触れる、また見なきゃならない項目ではなかろうかと思うのですが、これが何入院かもわからない形で全患者に使われているというようなこと、これがもう日常的であって、春日医師はこれを私にくれまして、まあこんなものですよというような平気な話であります。精神保健法も通知も通達もあったものじゃないというふうに強く感じております。ぜひとも徹底的な監査をしていただきたい、このように思うわけであります。

 細かいことになりますけれども、例えば病院の中に電話が置かれている。公衆電話を置かなきゃならない。どうも置かれているようであります。ところが、朝夕三十分だけ許可をする。そして、五百円分十円玉を用意して、それぞれかけさせて、本人の生活費の中から差っ引く。つまり、三十分の間に五百円分がけるということで、非常な制約の中で電話を使っている。電話を置いていますよ。だけれども使用時間を極めて短くする。

 あるいは、ここは日曜祭日は面会をさせないのです。日曜祭日こそ患者さんとその親たち、家族が面会すべきときに面会はさせない。あるいは、面会もなるべく短くして十五分ぐらいでやってくれ、こう書いてあるのです。表に堂々と面会の案内が出ております。それから、食事の時間が、夕食が三時三十分ごろにあるとかいろいろ言われておりますし、あるいはいろいろなカルテの記入の問題、あるいは薬の調剤の問題、投与の問題、さまざまあるようでございます。

 どうでしょうか、県の監査というのは、こうした病院の職員あるいは医者、看護婦、看護人等の配置、あるいは生活時間、あるいは電話、あるいは医薬品の投与、管理、そういう総合的な病院の監査があるのでしょうか。どういう監査をなさっているのか、ちょっと突然の質問で申しわけないのですが、お答えいただきたいと思います。

 

○谷政府委員 精神保健法の上では、病院管理者というのは入院患者に対する適切な処遇を確保すべき責任があるわけでございまして、そういう意味において、そういうことについて十分やられていない場合には、県の職員が報告を徴収するなりあるいは診療録を立ち入って見るなり、そういうことが県の職員の権限として与えられているわけでございまして、今回の事例について現在、先ほど来申しておりますように、大阪府が具体的な調査を行っているという段階でございます。

 

○土肥委員 一般論とか、都道府県の係が適切にやっているだろう、やっているはずだという答弁がございますけれども、これはちょっと納得いきませんですね。

 これはもう医療法人は定期的な監査、検査があるわけでありまして、その都度その監査項目が記載されているはずでありますし、その監査項目に基づいてどんな改善がなされたかということが報告なされているはずでありますし、それに基づいて次の年はどうかということを重ねていけば、例えばこんな「入院に際してのお知らせ」みたいなわけのわからない文書が今もすっかり残っているなんということは到底考えられないというふうに思うのです。その点はどうなんでしょうか、本当に徹底してやっていただいているのでしょうか、お聞きしたいと思います。

 

○谷政府委員 こういったような病院の調査につきましては、精神障害者の問題については年に四回病院の調査をするということになっております。また、先ほど来申し上げておりますように、六月には改めて調査をするというようなことになっているわけでございまして、私どもその調査の結果を待って、この病院に対する適切な対応をとってまいりたいと考えております。

 

○土肥委員 私どもいろいろ調べてまいりますと、何もかも病院に問題があるということがわかりますので、きちっとやっていただきたい。

 例えば六十年六月十九日、保険局の第六十八号を見ますと、昭和六十年ですからかなり古いのですが、そのときに実地調査のことをかなり言っておりますね。最近「看護要員数の不正申請の疑いで保険医療機関関係者が逮捕・送検されるという事態が生じた」ということが書いてありまして、そして「実地調査を確実に実施する」とか「実態の確実な把握に努める」とか、看護要員数の把握をきちんとしなさい、「看護婦名簿、出勤簿、勤務割表、賃金台帳、病棟日誌、看護婦免許証の写し等の提出を求め相互に点検を行うこと。」とか、あるいは「保険医療機関の開設者、管理者のほか、必要に応じ、事務責任者、看護責任者等からも状況聴取を行うこと。」こういうふうに六十年の「基準看護の承認に関する取扱いについて」というところに出ているわけであります。

 こういうものが繰り返し繰り返し出ながら、なおかつこういう病院があるということは不思議でしょうがない。そこでは行政にどこか手落ちがあるんじゃないかと言わざるを得ないぐらいのものであります。

 そこで、大和川病院のことをよく調べていきますといろいろなことが疑問点として出てまいりますので、お尋ねしたいのでありますけれども、この医療法人はさまざまな事業をやっておりまして、その事業の中身もさることながら、今日も、これからもいろいろと問題を引っ張り出していくんじゃないかというふうに思うんです。

 先ほどちょっと申し落としましたが、この二月二十一日に大和川病院で死亡事件が起きました。これは新聞を読みますと、ここに入院していた患者さんが急に容体が悪くなって、近所の救急病院、八尾病院に送致するわけです。そして、転院した後に亡くなっていくわけでありますが、実は最近の新聞で、この事件に関して大和川病院が逆に救急病院を告訴したというわけですね。搬送先の病院長を訴える。訴えた事件は、自分たちの病院、大和川病院の信用を失墜せしめるような診察をしたからだ、所見をしたからだというふうに言うわけです。

 この病院の特徴は、何もかもすぐに告訴に訴えるという病院でございまして、顧問にいる弁護士が悪いんじゃないかなと思うのですが、経営者も含めて、これはやはりはっきりさせていただかなきゃいけないと思うのです。特に医療法人でありますから、医療法人についての監査をきっちりしていただかないと困るんです。

 この大和川病院は元安田病院といいまして、安田という名前がまさに象徴的な名前でありますけれども、一九六九年四月に看護人による患者撲殺事件が起きまして、三人の看護人がバットで患者を殴り殺したんですね。これは刑事告訴を受けまして処分されている。行政処分が出ております。一九七九年にも、寝てはならない時間に寝ていたといって、患者さんを規則違反だというので、トイレに引っ張り込みまして撲殺しているわけです。これも行政処分を受けております。

 そして今回二月二十二日、もう既にこの患者さんの親戚の方が告訴しておりますから、中身は刑事事件としての結果を待たなければならないわけでありますが、これを告訴した。そして、その告訴の理由として、大和川病院に問題があるんじゃないかと言った途端に、救急先の八尾病院がそういう判断をして、これは不審な死に方であるから警察を呼んだということ自体がおかしいといって、一億三百万円の損害賠償の要求をしているわけです。こういうことが日常的に行われている。これはもうまさに一大和川病院の問題ではなくて医療法人の問題ではないか。法人自体はやはり厚生省によってきっちりと把握していただかなければならない、こういうふうに思うのです。

 そこで、この医療法人の登記上は、いわば私どもが御本尊と呼んでいるんですけれども、安田基隆という人、もともと大和川病院は安田病院と言っていたんです。このお医者さんは、理事長は三つの病院を経営しているんですが、それぞれの病院の登記上の理事長には挙がっていなくて、彼は安田記念医学財団というものをつくっております。それだけではなくて、この人はいろいろな商売もしていらっしゃいます。

 その辺についてちょっと明らかにさせていただきたいと思うのでありますが、まず、安田記念医学財団というものが平成四年十二月二十一日に大阪府の所管でありました財団から厚生省に所管がえをいたしました。どうして所管がえをなさったんでしょうか。

 

○谷政府委員 これは、従来は大阪府の認可の財団法人だったわけでございますが、六十三年九月に大阪府下において医学の研究助成、主としてがんの予防並びに治療、それから医療技術者の育成を図り、医療の向上に寄与することを目的に大阪府知事から設立を許可され、事業活動を行ってきた財団でございます。

 平成四年度におきまして、当財団から大阪府知事に対しまして、全国からの助成要望等にこたえるため、二つ以上の都道府県にまたがる活動を行う財団として寄附行為を変更したい旨の申請が出されまして、大阪府知事より厚生大臣に対して変更認可の進達がなされました。審査をいたしまして、厚生大臣所管の財団法人として平成四年の十二月二十一日付で認可がされたものでございます。

 

○土肥委員 もう一つ聞いておきます。

 先ほどの刑事事件は、これは警察の手に渡っておりますけれども、厚生省としてはどういうふうな関心をお持ちか、お話しください。

 

○谷政府委員 先ほど先生がおっしゃいましたように、現在刑事事件として捜査中でございますので、私どもが現在のコメントをすることは差し控えたいと思います。

 

○土肥委員 いや、これはこれから訴訟が起きていろいろ問題になりますし、こんなことが精神病院で起こるということですね。

 私、いわゆる主治医である川井元院長にお会いしましたときに、気軽なものですよ。いやいや、肺炎ですよ、ちょっと重体になりましたから送りました。そうしたら、あなたの所見では、こんな肋骨が四本折れているとか脳挫傷があるというのはわからなかったか。所見上わかりませんでした。なぜレントゲンを振らないかと言いましたら、いや、ちょうどポータブルレントゲンが壊れていましてねというような話なんですね。そして結局逆訴訟しまして、受け入れた八尾病院が落としたんじゃないかとか、そんなことを言いまして、とにかく院長みずから、しかも主治医である院長みずからいいかげんだということを強調しておきたいと思います。

 私がなぜこんなに怒っているかといいますと、もう一人の医局長でありました現院長の春日ドクターが、私が来たことを、いいですか、自称衆議院議員土肥隆一が来たと書いてあるのですね。名刺を渡したわけですね。国会議員の名刺がこんなに信用がないのかと私は初めて知ったわけでありまして、国会議員はあちこちで名刺を配りますから、やはり信用がないのだな、こう思ったのです。

 そういう書き方で、そして最後は、どうやら票集めに来たらしいなんていうのです。私、大阪まで行って票集めする必要はないわけでありまして、そういうことをぬけぬけと言う医者なんですね。自称衆議院議員、自称参議院議員の思想的な行動であって、選挙票絡みの嫌がらせの一環であると思われる、こう書いてあるのですね。これは個人的な文書ですから、当局の皆さんにはお尋ねしません。

 さて、この安田記念医学財団というのは、要するにがんの研究をした人に金を渡そう、お金をやろうというわけです。私のこの資料では二十七億七千万円の定期預金を持っている。あるいは土地建物もありますけれども、基本財産といたしました。これはどうやってつくったのでしょうか。おわかりでしたらお答えください。

 

○谷政府委員 現在の安田記念医学財団の基本財産でございますが、平成四年の十一月現在で三十億というふうに承知をしております。寄附額の大部分は今お話しの安田氏によるものだということでございますが、その集めた経緯等については特に把握をしておりません。

 

○土肥委員 これは安田さんのお金ですね。局長命そうおっしゃいましたね。ですから、安田さん個人の寄附ですね。大変なお金でございまして、どうやっておつくりになったのかなと貧乏人の私も勘ぐりたくなるところであります。この財団の目的は研究助成及び人材育成ということで、いろいろな資料を見ますと、高度なあるいは先進的ながん研究の研究者に最高五百万円からのいわば助成金を渡すという大変気前のいい事業でございます。

 それはそれで結構だと思うのです。しかし、厚生省は都道府県管轄から国管轄に、全国的な法人の運動を展開するために必要なわけでありますから、そういう格上げをした。それはやはりいい財団だ、財団法人を与えるにふさわしい財団だとお考えになった、こういうふうに思っていいと思います。

 ところが、いろいろ中身を調べてまいりますと、この理事の中に、別に理事がいいとか悪いとかいうわけじゃありませんが、府会議員という人が元府会議員も入れれば五名ですね。それから安田基隆さんが理事長でありますけれども、顧問弁護士の中藤幸太郎さんという方が常務理事でおります。あとは大学の先生だとか国立がんセンターの研究所長なども挙がっております。

 どうでしょうか、この理事構成を見て、どうも私は、別に府会議員が悪いとは言わないのですけれども、少し多過ぎるのじゃないか。あるいは国立がんセンターの研究所長だとか、大阪大学微生物病研究所の所長あるいは札幌医科大学の学長などが名前を連ねていらっしゃいますが、これはこれでいいとお考えでしょうか。

 

○谷政府委員 理事あるいは評議員の選任というのは、財団の寄附行為に規定をいたします理事選任手続に従って選任をされたものだと考えておりますので、この財団そのものの構成、理事あるいは評議員の構成について、私どもがコメントをする立場にないのではないかと思っております。

 

○土肥委員 そうすると公務員でも構わないということですね、局長。

 

○谷政府委員 公務員につきましても、財団法人の理事に就任することについては、先ほど申しました財団の寄附行為に規定する選任手続に従って選任され、かつその方の所属長の承認があれば問題はないと思っております。

 

○土肥委員 安田基隆さんは、財団法人としては大変気前のいいというか、ある意味でがん研究にも寄与していらっしゃるのだろう、こういうふうに思います。

 ところが、安田さんはこのほかにいろいろなことをしていらっしゃるのです。それは何かといいますと、いろいろな商売をしていらっしゃるのですね。恐らく安田病院の実質的な経営者、法人上の理事長は別になっておりますが、実際上のオーナー、こう申し上げていいと思うのであります。この安田さんの医療法人、これは北錦会といいますが、そこに住所を置いて、医療法人と同じ住所のところにさまざまな看板が上がっております。まず、安田開発興業株式会社、安田もとだかビル株式会社、株式会社安進、安心して進むという意味ですね。株式会社エイトアンドエイト、株式会社豊生殿、株式会社チャーム、こうなっております。

 役員名簿を見ますと、すべてに安田基隆さんが取締役ないしは社長ないしは顧問にも名前が挙がっておりまして、そして弟さんであるとか奥さんであるとかも役員に名を連ねていらっしゃいます。

 聞くところによりますと、これは全部安田さんが起こした会社というふうに理解されます。そこで特徴的なのは、医薬品の販売であるとかあるいは食品の取り扱いであるとか、不動産業もやっているわけでありますが、病院の経営に関する業務であるとか、これはよくわからないのですけれども、毒物劇物の販売に関する業務であるとか、飲食、喫茶業、日用雑貨、臨床検査受託、寝具の管理、リース業、そして総合結婚式場、サウナぶろも経営していらっしゃいます。

 これを見てまいりますと、何か安田さんというのはよくわからなくなってくるのですね。お医者さんです。そして三つの病院を実質上運営していらっしゃる。このことについて厚生省の局長に一つ一つああだこうだと言うわけにはいかないでしょうけれども、法人を監査していただくということにおいて何をしているのかということをはっきりと調査していただきまして、報告していただきたい。

 特にこれは厚生省の監査になるかどうかということは、医療法人ができましても、同じビルのその窓に今の会社がべたっと全部張ってあるのです。写真を見たらもうすぐわかるわけですね。そして、彼はこうした会社を経営しながら三つの病院を動かし、大和川病院の一々の指示もしています。先ほどの春日ドクターが電話していたのは、恐らくこの安田さんか中藤弁護士であるというふうに思います。

 なお、聞くところによりますと、要するにこういう会社は一種のトンネル会社でありまして、例えば食品を病院に納入するといって食品会社をつくってあるわけですね。それから、おむつだとか医薬品、医薬品と言ったらいいでしょうか医療用具品でしょうか、そういうものを納める会社があるのです。ビル管理といえば、病院の掃除や何かにビル管理といって入れる。つまり、病院も経営し、その上になおこういう経営をしているということでありまして、相当忙しい経営者で、これで本当に三つの病院を管理することができるのかどうかということを強く強く申し上げておきたいと思うのであります。

 大臣、今私がるる申し上げましたけれども、それは裏がとれないとか憶測というふうなことを言われても、我々はそれなりの資料を集めておりますから、なお今後の皆さん行政当局の指導を期待するわけであります。

 日本にはまだこういう病院があって、しかもこの大和川病院には五百二十四ベッドの人が本当に何か胸が張り裂けるような思いで入院しており、何か事を起こせば殴られ、そして追い出されるというふうなことが実際にあるということを考えたときに、一体日本の精神保健の行政というのはどうなっているのかということを考えざるを得ない。

 そういうことを思うときに、今回この精神保健法の改正に当たって、こういう病院がまだあるということについて大臣は一体どういうお気持ちで今のやりとりをお聞きになったのか、そして、今後どういうふうにしたらこの精神病院の指導や改善、改良が行われると考えられるのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

 

○丹羽国務大臣 まず、今回の法改正でございますが、先ほどから御指摘を賜っておりますように、いわゆる社会復帰施設から地域社会へと一歩きもに前進を図っていくことをねらいといたしまして、特に患者さんを尊重した医療、さらに社会復帰を促進することを目指しておる、こういうことで法案の御審議を賜っておるわけでございます。

 特に、精神病院においてはさまざまなケースがあると思います。いろいろなケースによって異なっていると思いますけれども、いずれにいたしましても、精神障害者に対しまして、きめの細かな医療サービスというものが提供されるということが当然のことながら大変重要なことであります。

 さきの公衆衛生審議会の意見書におきましても、今後の精神医療に関しまして「より良い環境において質の高い医療を受けること」を目指していく、こういうことが強調されておるわけでありますが、先生に先ほどから御指摘いただいておりますような、非常に実態とかけ離れているではないか、こういうことだと思います。この病院につきましては現在調査中でございまして、今後の調査の経緯を見守って私どもは判断をしなければならないと思っておるわけでございます。

 大部分の医療機関においては、私どもが目指していることに対しまして十分な御理解を賜り、また地域の住民の皆さん方の御理解を賜りながら、一歩一歩改善に向かって進んでいると思いますけれども、もし先ほどから委員が御指摘のようなことが現に起こったとすれば、この問題は一個人病院の問題ではなくて、いわゆる精神医療学界全体へ影響を及ぼしかねないような大きな問題であるというふうに、大変厳粛に受けとめております。

 いずれにいたしましても、私どもは、先ほどから申し上げましたように、患者の人権を十分尊重した精神病院のあり方を今後一層徹底していく考えに立つものでございます。

 

○土肥委員 あと一分残っておりますから、どうでしょうか、厚生省はこの法人監査をなさる決意でいらっしゃいますか。

 

○谷政府委員 現在、大阪府が調査をしておりますので、その結果を見て、私どもとして対応しなければならない状況であれば、そのような必要な措置をとりたいと思っております。

 

○土肥委員 終わります。ありがとうございました。