126-衆-商工委員会-2号 平成05年02月17日

 

平成五年二月十七日(水曜日)

    午前十時一分開議

本日の会議に付した案件

 エネルギー需給構造高度化のための関係法律の

 整備に関する法律案(内閣提出第一六号)

 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利

 用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法

 案(内閣提出第一七号)

 通商産業の基本施策に関する件

 経済の計画及び総合調整に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件

 鉱業と一般公益との調整等に関する件

     ――――◇―――――

 

○遠藤(乙)委員 続いて、対外通商問題について触れたいと思います。

 冷戦が終わって、それからクリントン政権が誕生して、国際環境は大きく変わって新しい国際秩序の構築に向けて今進んでおるわけでございますが、特に私個人としても感じているのは、世界の問題が今までの米ソ対立という政治的な、軍事的な課題から、どうも経済問題に非常にウエートが移っているという気がいたします。また、クリントン政権の誕生ということは、特に我が国の今後の通商環境にとって極めて大きな要素でございまして、これをどう見きわめ、どう対応していくかということは非常に重要な、最重要の課題の一つではないかと考えるわけでございます。

 私もつい先月アメリカに出張する機会がありまして、ニューヨークとワシントンだけですけれども訪れ、またいろいろな関係者とも懇談をしてまいりましたが、一つアメリカに行って非常に感じたことは、国内状況が非常に厳しくなっているなということを肌で感じてまいりました。いろいろなことがあるのですが、一つは、ニューヨークやワシントンの目抜きの道路でもでこぼこが非常に多いのですね。車が通ると直下型地震のような衝撃を受けまして、まさに財政赤字のためにそういった社会インフラの補修すらできないような状況になっている。大変厳しい面がありました。また、ホームレスの人が非常にふえておりまして、公園なんかにいてもいつの間にかホームレスの人に囲まれるというような状況もありました。またワシントンなんかの中でも、特定の地域が治安の悪化のためにゴーストタウンみたいになっているというような状況もありまして、アメリカの内政問題、経済問題が大変深刻であるなということを痛感をしてまいりました。それだけに、クリントン政権の、特に経済活性化の課題、これは大変重い課題をしょっているなということを肌で感じてきたわけでございます。

 今、クリントン政権、誕生早々ですけれども、内政に最大の努力をされておりまして、つい昨日も増税を含む新しい経済政策を発表したわけでございますが、当然、これが対外的に非常に、これまた日本に対する通商関係、厳しいものがあるだろうということを感ずるわけでございます。もちろん、クリントン大統領自身、いわゆる不条理なジャパン・バッシャーではないということはよく言われておりますが、他方、冷戦後初の大統領であり、戦後世代でもありまして、既に物心ついたときから日本というのは競争相手として、経済大国としてあるという認識であるわけでありまして、ある意味では非常に手ごわい大統領ではないかという気もいたしました。

 また、いろいろなシンクタンクを訪れまして意見交換した中で、アメリカのシンクタンクというのは政権とも非常に密接に関係を持って、いろいろな政策提言をしていくわけですけれども、一つの特徴は、いろいろなテーマが圧倒的に経済問題に移っているということが特徴でございました。かつては、米ソ冷戦のころは、いわゆるジオポリティカルといいますか、地政学的なテーマが非常に主流だったわけですが、今はむしろジオエコノミックと言っておりますけれども、要するに、日本や欧州との経済関係、競争関係をにらんだ経済問題に非常にウエートが移っているということを非常に印象深く聞いてきたわけですけれども、必ずこれは将来、近い将来において、日本に対してもさまざまな厳しい要求といいますか、政策が出てくるのではないかということを感じてまいったわけでございます。

 そこで、通商問題の主菅大臣として通産大臣にお聞きしたいのですけれども、大臣個人として、クリントン政権の体質といいますか、あるいはまだ明確になっておりませんが、今後の通商政策に対してどういった出方をしてくるか、そこら辺につきましての大臣御自身の認識をお聞かせいただければと思います。

 

○森国務大臣 先ほど社会党の和田委員のときにも少しお話し申し上げまして、改めて遠藤委員の御質問に対して私なりの、多少個人的な主観もあるかもしれません。もう一つやりにくいのは、あなたは大体外務省におられた方ですから、その辺のことはよく熟知をしておられるし、いろいろな角度から情報もとっておられるだろうと思います。

 今先生がおっしゃいましたとおり、クリントン世代というのは、日本がある意味では経済大国として、あるいは科学技術を有している大きな大人の国というふうに見ておられる。昔の世代は、日本というのは戦争に敗れて、まさにトンカチのところから、かじ屋から大きくなっていったというふうな意識を当然アメリカの指導者は持っておられた。この点がやはり大きく違うだろうと私は思う。そういう意味では、ざっくばらんな話をしていくことが大事な外交あるいは通商政策の第一歩だろうというふうに思います。

 それから、もちろん先生もアメリカにおいでになっておられますから、その辺の、町の状況のみならずクリントン政権が抱えている問題点というのは熟知をされていると思いますが、例えば、今アメリカは景気が少しいい方向へ動いている、いい方向へ動いていけば、逆に言えば、また日本の製品がそれだけ余計アメリカヘ流れる、こういうジレンマがあるわけですね。それから、いろいろおっしゃいましたけれども、ホームレスの問題を初めとして、今クリントン内閣としてやらなければならない仕事というのはたくさんあるわけですね。特に公共事業、おっしゃいました道路とか空港あるいは橋など、かなり大がかりな公共事業をやっていかなければならぬ。それから、もっと根本的には、アメリカの再生を考えるためには教育制度に大変大きな力を入れなければならぬ。いずれにしても、大変な大きな財源が必要だ。どうしても内に問題を集中していかなければならぬ。

 ところが一方では、日本とアメリカが協力し、もちろん欧州が協力をして、旧ソビエトの支援の問題、環境の問題等、いろいろな問題をやっていかなければならぬ、そのためのイニシアチブを持っていかなければならぬという、いろいろな意味で悩みがある。その悩みを日本が共通の悩みとして受けとめてあげるということが、日本の外交、通商として一番大事なところではないだろうか、こういうふうに私は思っております。

 そういう意味で、クリントン政権も、確かに周囲はいろいろな問題を大統領府に対して、また大統領に対して迫っておられますが、そういったくさんの多くの問題を抱えておりますよということを我々日本の行政や政治に対して見てくださいよ、これだけの問題を抱えております、だけれども、私は日本との関係を大事にしていかなければならぬ、あるいは自由貿易というものは大事にしていかなければならぬという考え方を今両方でお互いに見せ合って、そして、恐らく間もなくでしょう、アメリカの新しい通商政策あるいは対日政策というのが打ち出されていくだろう。そこのところを私どもは十分注視をして、先ほど申し上げましたようなことも含めたアメリカとの関係をより強力に進めていかなければならぬ、こんなふうに私は思っております。