123-参-法務委員会-2号 平成04年03月12日

 

平成四年三月十二日(木曜日)

   午前十時三分開会

  本日の会議に付した案件

○検察及び裁判の運営等に関する調査

 (法務行政の基本方針に関する件)

○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内

 閣提出、衆議院送付)

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○糸久八重子君 不法就労悪質事犯に重点を置いた摘発実施に伴って、特にそのかなめとなっておりますブローカーとか暴力団の介在をどう防止していくおつもりですか。

 

○政府委員(高橋雅二君) 悪徳ブローカーや暴力団というものが外国人の不法就労を助長しまして、売春の強要とか賃金の搾取というような人権侵害事件を起こしているというケースがあることは御指摘のとおりでございます。

 当局といたしましては、警察等関係機関との情報交換を密にしてこれらの悪徳ブローカーや暴力団等が絡む事案を重点的に合同摘発するなど、種々対策を講じているところでございます。

 

○糸久八重子君 不法就労の外国人も、景気の減速に伴って危険、劣悪な環境のもとで働かざるを得ない場合とか、あるいは職にあぶれてしまってホームレス化してしまう場合がふえているようです。このような外国人の人権の確保とか、それから周辺住民の不安感等々についてどのように解消しようとしていらっしゃるのでしょうか。

 

○政府委員(篠田省二君) 外国人につきましても、原則的にその基本的人権が尊重されなければいけないということは当然のことでございます。法務省の人権擁護機関といたしましては、昭和六十三年度から社会の国際化と人権、あるいは国際化時代にふさわしい人権意識を育てようということを啓発活動重点目標に掲げまして、外国人の人権擁護も含めた啓発活動を積極的に展開してまいっております。

 具体的な対応といたしましては、外国人のための人権相談所を東京、名古屋、大阪などに開設して常時相談に応じておりますし、またさらに、十二月の人権週間には、特設人権相談所を地方法務局においても設けたりして相談に応じております。さらに、基本的人権の侵害が具体的に起こった場合には、人権侵犯事件として所要の調査を行い、適切に対処するなど、外国人の人権擁護のために取り組んできているところでございます。

 なお、外国人の人権相談におきましては、相談者が不法在留、資格外活動等に当たることが判明いたしました場合でも、人権相談の趣旨、目的に照らして、国家公務員法百条の守秘義務を優先させまして、入国管理官署への通報というようなことはとらないようにして配慮しております。

 

○糸久八重子君 外国人に対する問題は非常に多岐にわたっておりますけれども、特に不法就労とそれから研修生にかかわる点に限って、関係省庁との協力関係をどのように推進していくのか、またどういう機関でどんな機関をつくって検討、協力をしておるのか、御説明をいただきたいと思います。

 

○政府委員(高橋雅二君) 新東京国際空港の第二旅客ターミナルビルの供用開始時期につきましては、平成四年十二月ごろと予定されておりまして、これに対応する人員等の手当てについては平成四年度の予算案において行っているわけでございますが、第二期工事全体の完成時期ということになりますと現段階において私どもとしては確として承知してないところでございます。また、関西国際空港の完成時期は運輸省の発表によれば平成六年夏ごろというふうに伺っております。

 これらに伴う両空港の業務量増につきましては、乗り入れ便数等が明らかにされてないため現時点で予測することは困難な状況にございます。両空港の開港等に当たっては関係省庁の御理解と御協力を得て施設の整備、要員確保等、所要の体制整備を図るため努力してまいる所存でございます。

 それから、お尋ねの不法入国者数及び不法就労者数についての最近三年間の実態というお尋ねでございます。

 簡単に申し上げますと、昭和六十三年に摘発いたしました不法入国者等入管法違反者は一万七千八百五十四人でございまして、そのうち不法就労者は一万四千三百十四人、不法就労者の国籍別順でいきますと、フィリピン五千三百八十六人、次いでバングラデシュ、パキスタンとなっております。平成元年に摘発いたしました不法入国者等入管法違反者は二万二千六百二十六人で、そのうち不法就労者は一万六千六百八人、不法就労者の国籍別順でいきますと、フィリピンが三千七百四十人、次いでパキスタン、韓国となっております。平成二年に摘発いたしました不法入国者等入管法違反者について申しますと、三万六千二百六十四人となっておりまして、そのうち不法就労者は二万九千八百八十四人、その国籍別順で言いますと、バングラデシュ五千九百二十五人、次いで韓国、マレーシアとなっております。平成三年につきましてはまだ全体の統計はございませんけれども、上半期、一月から六月までに摘発いたしました不法入国者等の入管法違反者について申し上げますと、六カ月で一万三千六百人、そのうち不法就労者は一万二千二百六十五名、不法就労者の国籍別としては、韓国、イラン、フィリピン、こうなっております。

 これら不法就労者の職種は、男性のほぼ八割が建設作業員、工員、女性の約半数がホステスとして稼働しておりますけれども、近年男女とも雑用、飲食店従業員等に及び、職種が多様化する傾向がうかがわれるというのが実態でございます。

 

○紀平悌子君 伺っておりましても、ふえこそすれ減ることはないというふうなデータが両三年でも出ておるようでございますし、私ども日々見聞きします。その実態としても、不法就労者あるいは不法入国者でホームレスその地目に余る状況は日に日に増してくると思います。

 この法律ができましたのが三年前でございますか、平成元年、私法務委員にならせていただいてから初めての法案審議でございましたので非常に印象の深いところでございましたが、さまざま議論がございました。参考人の御意見もさまざまでしたけれども反対の御意見もございました。しかし、これは開かれた入管行政ということで法務省の御意見が通ったわけでございますけれども、不法入国者あるいは就労者の数が今後毛、中小零細企業の方の動向を見ましても人手不足、三K労働などに日本の若い人がつかないというようなことで、ますます国内の労働力不足に対するニーズも増してくるという中でどのようにコントロールされていかれるでしょうか。

 それで、基本計画というのを法務省一省でなくて、法務省が中心になって外務省その他各省間で基本計画というのをおつくりになるということが先々々大臣から二代にわたりましてこの委員会で御質問を申し上げて、お約束がございましたけれども、法務省内の先ほどの事務的な打ち合わせ、検討委員会ですか、その話はちらっと伺いましたけれども、基本的な方向としてどういうふうになっておりますか。そして、大臣はそのころの大臣ではいらっしゃいませんでしたけれども、今の改正出入国管理法についてのコメントというか、御意見を承りたいと思います。

 

○政府委員(高橋雅二君) 改正入管法の施行後も、今御指摘のとおり、不法入国者等入管法違反者が増加傾向にございまして、非常に遺憾なことと思っております。今後とも厳格な上陸審査、改正入管法で新設されました不法就労助長罪の積極的運用、それから警察等関係機関との連携による摘発活動等効果的な対策を進めていきたいと思っております。

 それから、先生が御指摘になりました基本計画でございますが、改正入管法に基づきまして法務大臣が入国、在留に関する施策の基本となるべき出入国管理基本計画を関係機関の長と協議の上、策定、公表すべき旨定めてございます。それに従いまして関係省庁と今協議して、基本的な事項を盛った計画を策定して公表を進める段階にございます。

 

○国務大臣(田原隆君) 改正入管法についての感想という御意見でございましたけれども、今入管局長が申しましたように、法律は改正されましたが増加傾向にあることは事実でございまして、これはもう大変なことでありますので、上陸審査、いわゆる入り口の問題でまず厳格な審査をし、その他この法律で新たに設けられたいろいろな規定を適用しながら、厳格な運用によってできるだけそういう増加を抑えていく、むしろ減少する方向に持っていかなければならぬ、そういうふうに思っております。

 

○紀平悌子君 お言葉を返すようで申しわけございませんが、厳格な審査その他はやっておられると思いますし、今後もおやりになると思います。ただ、とうとうとしてそういった不法就労あるいは正規の滞在でない外国人がふえていくという事実、これは法律とかそれから厳格にやるということでは抑えられないものがございます。そういうことを含めての基本的な対策というものをどうなさいますかいろいろと御検討いただきたい。これは希望をいたすことでお返事はよろしゅうございます。――お返事いただけますか。

 

○政府委員(高橋雅二君) 不法滞在がふえ、不法就労がふえるということは、我が国の健全な社会の発展にとりましても、また国際的にも好ましいことではございませんので、これはできるだけ減らしていくという基本的な方針のもとに各種の政策的努力をしていきたいと思っております。

 特に法務省入国管理局といたしましては、まず不法就労を目的とする外国人の入国を未然に水際で防止するということで、査証発給の事務の厳格化ということにつきまして外務省の協力を得ているところでございますが、特に不法就労に流れやすい観光目的の短期滞在、そういう人たちの上陸審査に当たっては旅券査証の偽変造の有無、入国目的の真偽等を確認するなど、厳格な審査を実施しておるところでございます。コンピューターに前にそういう経歴のあるような人たちのデータを入れまして、これが日本各地の主要な港でオンラインでチェックできるようなそういう体制も今とっておるところでございます。

 それから、中に入ってきた時点におきましては、不法就労者の積極的な摘発を、これはいろいろな関係機関と共同して協力を得て、摘発を通じて不法入国の防止をさらに図っていきたいと考えております。

 なお、入国するほとんどの外国人、多くの人は不法就労の目的ではなく正当な目的で来られる方でございますので、厳格な審査はやりますけれども、そういうまじめな善意の人たちに不愉快な念を与えないように、またそちらの方面にも気を配りながらやらなきゃいけないというふうに考えているところでございます。

 

○国務大臣(田原隆君) 高橋局長の答弁でよかったのですが、私も、確かに入管局を持った省でありますから非常に大きい責任を持っておりますけれども、これは法務省だけで解決できる問題ではありませんので、各省と協議しながらということが必要だろうと思うのです。

 というのは、不法就労が発生する原因を調べてみると、近隣アジア諸国との経済格差による出稼ぎ志向とか一部産業の人手不足感からくる、悪い言葉かもしれませんが、安価な労働力を得ようとする俗に言ううまみ感とか、そのほか近隣アジア諸国で雇用の機会が少ないために求めてくるとか、いろんなことがありますから、そのほかブローカーの問題もございますし、すべてにわたってやはり解決していかなければ取り締まりだけでは解決しない問題だろうと思いますので、その辺やはり各省庁と手を組んでやっていきたい思います。