63-衆-大蔵委員会-21号 昭和45年04月07日

 

昭和四十五年四月七日(火曜日)

    午前十時三十七分開議

 

 

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 物品税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)

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○春日委員 ここで、先般来大臣との質疑応答の中で示されておりますることで非常に気にかかりますことは、現在の直接税、間接税の対比率が何となく直接税に片寄り過ぎておる。だから、将来はその重点、ウエートを間接税の方向に向かって強めていこうという方向を述べられておる向きがあると思うが、私はこれは重大なことであると思う。私は、租税制度の理想的なあり方というものは、これはもとより他の諸制度と同じように国民福祉の増大をはかるところにあるが、特に租税制度においては所得再配分というような機能をこの税制にになわせていく、そこに第一義的な使命というものがあってよいのではないかと思うのでございます。なぜかなれば、それぞれの所得というものは、結局は国家とか社会の組織、構成、こういうようなものが寄与し、すなわち事業者なりその所得者なりは、そういうものを利用することによってその所得を得ておるのでございますから、したがって、所得を再配分することによって全体としての国民福祉をはかっていくという、私はこれが第一義の要請であろうと思う、現実の問題として。さればこそ、租税公平の原則であるとかあるいは担税力応能の原則というようなものをあなたが強調されておるゆえんもそこにあると思う。

 だといたしますれば、租税制度の中心はあくまで直接税にあるべきである。所得ある者に課税をなす。多くもうけた者が多く税金を払う。多くもうけた者は、個人の努力によることはもとよりであるけれども、結局は国家、国民ぐるみの協力がそのような成果をもたらしたものと断ずべきである。だからその所得を国家と国民に向かって再配分するという租税制度の理想的な第一義的なあり方というものは、容易にこれをくずすべきものではないと思う。そういう意味で、いま直接税が多過ぎる多過ぎると言っておりまするけれども、それは給与所得者においては負担感が非常に重圧を与えておるものなしとはしないけれども、租税制度の理想像、また本来的なあり方というものは、所得再配分というこの立場というものを忘れるべきものではないと思うが、この点はいかがでありますか。

 

○福田国務大臣 全く同感であります。

 

○春日委員 だといたしますれば、たとえば給与所得者において重圧感がありとすれば、その重圧感の部分を排除していくという、こういうところに重点を置くべきであって、それをなすからといってそれだけの税収源を間接税に転嫁していく、あるいはさらに進んで間接税によって相当の財源を確保することに重点を置いて、そうしてそれからよって来たるところのいろいろな弊害を無視する、こういうことであってはならぬと思う。

 私は、間接税というものはある意味においてこれは悪平等であると思う、端的に言うならば。たとえば福田大臣のごとき人もたばこを吸う。ビール、酒を飲む。同じ酒税であり、たばこ消費税、専売益金ということになって、そうして山谷のドヤ街、釜ケ崎のドヤ街におるルンペンの連中も同じような国税を負担するというようなことは、これは徴税行政という基本的なあり方からすれば邪道であると思う。大蔵大臣福田赳夫が大きな顔をして日本じゅうわがもの顔にのさばり歩いておる。それと山谷、釜ケ崎のドヤ街のルンペン、プロレタリアとが同じような割り勘で消費税を負担しておるようなことは許されてはならぬと思う。所得のある者には課税をなす、大いなる所得ある者は大いなる税金を払う、その制度を根幹にして、なお補完措置として間接税、消費税というようなものがあり得ていいと思う。けれども、あなたのこの間のうちの御答弁を聞いておると、直接税の負担が重きに過ぎるようであるから、したがって、今後は間接税に向かってそのウエート、重点を置きかえていこうというようなたわけた答弁をなされておるけれども、国民はこれによって非常な恐怖を感じております。あるいは、言われたような付加価値税が創設されるのではないか、売り上げ高税が創設されるではないか、あるいは高級品に向かって一斉課税がされるのではないか、あるいは自動車新税などというものが課税されるのではないかと恐怖におののいておる。この点、徴税行政の第一義的な立場に立ってあるべき姿というものについてあなたの見解をお述べいただきたい。そして今後どうしていく方針であるのか。

 

○福田国務大臣 しばしば申し上げておるとおり、私は、租税、税制は公平でなければならぬ、また同時にその負担が負担能力に応じてかかっていくようなものでなければならない、さらに同時に負担感がなるべく少ないものという配慮をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。どうも春日さんは私の言っておることを聞き違えておるんじゃないか。私は直接税中心主義、これを堅持すべきものであるというふうに申し上げておるのです。ただ今日の直接税体系というものを見ておると、経済の発展、進歩を考えますときに、ますます所得税の比重というものが多くなっていって、補完的な役割りをする消費税の影がますます薄くなってくる。これを是正しておく必要があるんじゃないか。そういう際におきましても、消費税を強化する、直接税の軽減を行なうという際におきましても、その強化する消費税において、これは負担能力という問題を全然無視しておるわけじゃないのですから、すでに免税点というような制度もあります。それから品物によりましてそういうことを考えて、税率ということにも十分慎重な配慮を加えられておるわけなんです。それから税目の選定にあたりましてもそういう配意は加えられておるわけであります。まあ非常に例外的な砂糖でありますとか、あるいは酒でありますとか、たばこでございますとか、それに一々区分をつけるということは非常に困難でありますけれども、しかし、そういう配意が総体的に加えられておる。また今後間接税を増徴するというふうにいたしましても、そういう配意を全然無視してやるんじゃありませんから、その辺はひとつ誤解のないように御了承おき願いたいと思います。