61-参-社会労働委員会-2号 昭和44年02月18日

 

昭和四十四年二月十八日(火曜日)

   午前十時十四分開会

  

 

  本日の会議に付した案件

○理事補欠選任の件

○社会保障制度等に関する調査

 (厚生行政の施策に関する件)

 (昭和四十四年度厚生省関係予算に関する件)

○労働問題に関する調査

 (労働行政の施策に関する件)

 (昭和四十四年度労働省関係予算に関する件)

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  〔理事大橋和孝君委員長席に着く〕

 

○理事(大橋和孝君) 次に、昭和四十四年度労働省関係予算について政府に説明を求めます。藤縄会計課長。

 

○政府委員(藤縄正勝君) お手元にございます「昭和四十四年度労働省関係予算の概要」という刷り物に従いまして御説明を申し上げます。

 まず、予算の規模でございますが、一般会計は、千百四十三億二千九百万円でございまして、前年度に比べまして四十五億二千六百万円の増額と相なっております。一〇四・一%になっております。

 労災保険特別会計でございますが、千八百七十一億六千七百万円でございまして、前年に比較いたしまして三百七十七億一千五百万円の増でございます。一二五・二%になっております。

 失業保険特別会計でございますが、二千三百八億八千七百万円でございまして、前年に比較いたしまして二百四十億七千万円の増額でございます。一一一・七%になっております。

 最後に、石炭対策特別会計のうち、労働省関係部分でございますが、七十六億三千七百万円でございまして、二十五億四千六百万円の増額、一五〇・〇%と相なっております。

 次に、中身の主要な点につきまして御説明を申し上げます。

 まず、第一は、総合的雇用政策の展開でございます。就業構造の変化、あるいは新規労働力の減少、人口構成の老齢化等、雇用問題はいろいろ複雑化いたしておりますが、これに伴いまして労働能力の有効発揮が必要でございます。

 そこで、第一に、労働力不足対策の積極的推進を掲げておりますが、その中身は、従来から行なっております総合的な計画の策定推進と相まちまして、労働力誘導のための施策を展開する経費でございまして、そのおもな内容は、右にございますように、共同福祉施設の設置を新たに始めようというものでございまして、労働力を輸出産業その他の主要な産業に誘導いたしますために、それらの産業の中小企業の団体が共同で運営できますよう、雇用促進事業団におきまして一カ所三千万円、一応初年度は十カ所といたしまして三億の予算をもちまして、体育、保健、給食その他の共同福祉施設を設置いたしまして、これをそのような団体に運営委託をしようとする予算でございます。

 次は、職業紹介の効率化の推進でございますが、雇用の流動化を促進するために、従来から広域職業紹介を推進いたしておりますが、近年、労働市場センターを設置いたしまして、その促進をさらに機械化に乗せて推進いたしておるところでございます。来年度予算に計上いたしておりますおもなものは、広域職業紹介業務を即時処理化に進めるそのための試験的な実施でございまして、来年度とりあえず大阪地区に二十九の安定所を結びまして即時処理化を進めてまいろうとするものでございまして、求職者が自分に適する遠隔地の求人内容をすみやかに知ることができるような体制を整備しようとするものであります。

 そのほかに、雇用情報の作成提供ということで、労働市場ニュース等をつくってまいる、あるいは、最近各方面で見られます婦人のパートタイマーのための講習会を六大都府県におきまして三十六の安定所で行なってまいるというような予算でございます。

 次は、雇用促進住宅でございますが、これは従来のペースに従いまして来年度も一万戸の新設をしてまいろうというものでございまして、単価アップ等で予算がふえております。

 それから次は、予算ではございませんが、財政投融資の面で雇用促進融資の拡充をはかっております。総額百四十三億になっておりますが、内訳を申し上げますと、住宅関係が百十九億、福祉施設関係が十二億、通年雇用関係が七億、身体障害者関係が一億、職業訓練関係が四億というふうになっております。

 次に、これも年来の懸案でございました職業研究所を昭和四十四年度におきましてはいよいよ設置をいたすことになりまして、雇用促進事業団にとりあえず職員数十五人をもって発足をいたすことといたしております。

 その他、雇用関係の統計の整備等を進めるための経費でございます。

 第二は、地域の実情に即した雇用対策の強化でございまして、その一は、大都市圏の雇用対策の推進といたしまして、明年度は東京の中野に勤労青少年センターというものの建設を始めたい、そう考えておりまして、その関係の予算でございます。三ページの右の上にございますように、全体計画は六十一億六千二百万円の四カ年計画の規模になっておりまして、土地代は昭和四十三年度に二十億すでに計上済みでございます。そこで、四十四年度につきましては、建設費の初年度分といたしまして十三億九千五十万円を計上いたしております。それがおもな中身でございます。

 それから地方雇用対策の推進といたしましては、そこにございますように、開発拠点地域等における勤労者総合福祉センターの建設でございまして、四十三年度におきましては岡山の水島にこれを設置いたしましたが、四十四年度は、さらに、広島県の福山、あるいは長野県の諏訪・岡谷地区というようなところに設置をいたす予定でございます。中小企業レクリェーションセンターは、前年すでに着手いたしておりますものを本年続けますほかに、新たに二カ所程度の調査費を計上いたしております。勤労青少年体育施設といたしましては、新たに六カ所――一カ所三千万円の六カ所分を計上いたしておりまして、勤労青少年が使いますグランドその他の体育施設を漸次設置してまいりたいという予算でございます。

 第三は、新規学卒者対策の強化でございまして、新規学卒者に対する職業指導及び職業紹介を強化してまいることは当然でございますが、さらに、最近のような高校進学率の上昇、あるいは都市における勤労青少年の問題というようなものに対応いたしまして、新規学卒者の就職後の追指導の強化をはかってまいる。そのために、新たに都市部を中心に年少就職者相談員というものを三百人配置いたしましてその専門的な相談に当たらせる、また、そのために年少就職者の指導記録票というものを整備いたす、あるいは年少者に「働く青少年手帳」を配布する、あるいは勤労青少年講座を開設する等々の施策をもってこの面を強化してまいりたい、さような予算でございます。

 第四は、中高年齢者の雇用促進対策の強化でございます。これは若干の減額になっておりますが、職業転換給付金制度が御承知のように相当額の不用額を出しております関係で、実情に即した予算を組んでおります。ただ、中身といたしましては、従来の就職促進措置の対象とならないものでありましても、三十五歳以上の中高年齢者を中心にいたしまして極力職業訓練を実施していくという方向で新たに訓練手当及び訓練待期手当の制度を創設をいたしております。それから人材銀行の増設も、前年度に引き続き新たに二カ所をつくってまいりたいという中身になっております。

 第五は、総合的な身体障害者職業対策の展開でございますが、その第一は、就職援護措置の充実でありまして、身体障害者社会復帰センターというものを今後設置してまいりたいということでございまして、一カ所分ここに予算が若干計上されておりますが、これは東京の上野に新たに安定所を改築いたしますが、それに付設いたしまして昭和四十五年度以降におきまして建設をしたい。そこで、四十四年度分で土地購入費の一部を計上いたしておるわけでございます。そのほか、就職促進指導官の増員、あるいはさらに身体障害者に対する職業訓練の拡充ということで身障訓練所を一カ所新設する予算が計上されております。さらに、重度労災障害者に対するリハビリテーション対策の強化ということで、リハビリテーション作業所を一カ所新設する予算が計上されております。

 第六は、雇用の促進、安定のための特別対策の強化でございます。まず、第一に出てまいります愛隣地区でございますが、当該地区には安定所、住宅、病院等を全部一カ所に集めました総合的な労働福祉センターを建設中でございますことは御承知のとおりでございますが、そこに設けられます労働安定所の職員の増員を新たに行なうという予算でございます。港湾労働対策につきましては、港湾労働福祉センターをさらに増設してまいるということで、来年度は四カ所になっております。それから港湾労働者住宅の増設。それから雇用調整手当の改善ということで一日当たりの単価をごらんのように引き上げております。それから港湾労働者の労働条件の近代化をはかり、労働災害防止のための監督指導を行なってまいることは、当然でございます。また、関係の就職促進指導官の増員もはかったところでございます。駐留軍関係離職者の就職援護対策といたしましては、就職促進手当を引き上げてございますし、さらに住宅確保奨励金というものを炭鉱離職者等と同じように新設をいたしております。ただ、この関係の予算は、対象人員が減少しておりますので、その関係で予算総額といたしましては減額になっておりますが、いま申し上げましたような内容の充実をはかっているものでございます。

 同和地区の雇用対策といたしましては、やはり就職促進指導官を増員いたしますとともに、新規学卒者に対する職業指導、職業紹介の充実、職業講習、職業訓練の強化等をはかっているところでございます。

 第七は、建設、出稼労働対策の強化と万博関係の労働対策の推進でございます。建設、出稼労働者につきましては、実態調査を行ない、手帳の発給、台帳の作成、整備を行なう、あるいは就職促進指導官を増員する、さらに相談所を拡充する等々の施策と相いまちまして、四十三年度から始めております通年雇用融資及び通年雇用奨励金の制度をさらに拡充したいと考えております。それから万博関係は、労働者確保のための対策の強化と、それから労働災害防止対策の徹底、適正な労働条件の確保をはかる経費でございます。

 第八は、産炭地域労働力対策の積極的推進でございますが、そこにあります(1)から(5)までは、従来の施策でございます。緊急就労対策事業の実施でございますが、吸収人員が若干減っておりますが、単価を引き上げております。それから援護業務の推進、広域職業紹介の強化、転職訓練の実施、就職促進手当の充実でございます。(6)にございます産炭地域開発就労事業の実施、それは新規でございまして、九州の筑豊等に見られますように、産炭地域におきましては、従来から炭鉱離職者対策あるいは産炭地域の開発策等が進められておりますけれども、地域ぐるみのさらに雇用の安定と開発を進める必要があるという個所につきまして、新たに事業費単価三千六百円をもちまして三千二百人の人員を対象に産炭地域開発就労事業というものを実施しようというものでございます。この関係の予算は、四十四年度、二十五億二千四百万円になっております。

 第九は、失対事業の運営改善でございまして、吸収人員が若干減少しておりますが、労力費単価を一二%引き上げております。特別失業対策事業につきましては、前年どおりの金額が計上してございます。

 以上が雇用対策でございます。

 次に、職業訓練制度の全面的改正でございまして、大臣の説明にもございましたように、技能労働者の不足、技術革新の進展に対応いたしまして、職業訓練制度を全面的に改正する、そのための法案を今国会に出す予定でございまして、そこで、その中身、予算的裏づけといたしましては、企業内訓練の振興ということでございまして、八ページでございますが、特に指定職種につきましては、そこにございますように、前年度千六百円の単価を三千二百円に引き上げましてその飛躍的拡充をはかる、人員等もふやしてまいるということでございます。

 それから公共職業訓練の拡充につきましては、一般職業訓練施設、高等職業訓練施設等が従来の程度のものをさらに進めますと同時に、高等職業訓練施設――従来の総合訓練所と言っているものでございますが、これにつきましては、新たに沖繩に一カ所新設をいたそうという計画がございます。そのほかに、身体障害者の訓練所を新たに一カ所つくろうというものでございまして、先ほど触れたところでございます。

 それから九ページでございますが、次に、職業訓練指導員等の資質向上と養成確保でございまして、その中で、特に右の説明の(2)にございます職業訓練大学校の移転拡充でございます。職業訓練大学校は、現在、都下の小平にございますが、非常に狭隘になってまいりましたので、二年計画で敷地を購入いたしましてよそに移そうということでございまして、予算といたしましては、十万坪、総額十九億八千万円の予算の初年度分といたしまして九億九千万円が計上されておるものがおもなものでございます。

 それから新規訓練職種の開発と訓練内容の充実ということでございまして、訓練職種の新設、訓練照査基準の作成というようなものをやってまいるという関係の事務費でございます。

 それから今度の改正の要点の一つでございます技能検定の拡大実施でございますが、従来国及び都道府県でやってまいりました技能検定につきまして、その対象を飛躍的に拡充する、内容を改善するという目的をもちまして、新たに中央とそれから各都道府県に技能検定協会というものをつくってまいろうということで、四十四年度は、半年の予算一億五千五百万円が計上されておるわけでございます。

 職業訓練による国際協力の推進につきましては、四十五年度の技能オリンピック開催体制の整備等をさらに進めてまいるというような関係の予算でございます。

 次に、一〇ページでございますが、産業構造、社会環境の変化に対応する労働基準行政の展開でございます。

 労働者の都市集中、技術革新に対応する労働態様の変化に基づきまして、特にイにございます、経費としてはわずかでございますが、労働基準に関しまする法制的、実態的な研究を始めようということで、関係の研究会の経費が計上されております。

 それから近代化のおくれた分野、社会的問題となっている分野の労働者に対するきめ細かな施策の推進といたしまして、最低労働条件確保のための監督の経費、それから最賃制の普及の経費、さらに労災病院の拡充強化をはじめとしますところの重度障害者対策、労災援護の対策の経費がそれぞれ計上されております。リハビリテーション作業所の増設につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、一一ページに入りまして、自動車運転技術特殊訓練を行なう、あるいは、遺族に対する労災援護の強化といたしまして、実態調査を行ない、あるいはすでに四十三年度から引き続いております葬祭援護施設の設置につきまして建設を進めるというような予算でございます。

 総合的家内労働対策につきましては、大臣の説明にございましたような新たな法案を提出する予定でございますので、その裏づけとなる事務費を計上してございます。

 合理的賃金制度の推進につきましては、従来からの賃金研究会の推進と、賃金相談室をさらに拡充してまいる、それから技能労働力の不足と関連いたしまして、技能と賃金の結びつきに関する実態調査を進める等々の事務費でございます。

 次に、一二ページに移りまして、労働災害防止のための抜本的対策の確立と推進でございます。

 技術革新に伴いまして、新たな災害が起こってまいる、職業性疾病が発生してまいる、それから労働力不足の結果、未熟練労働者、高齢労働者等が増加するというような問題に対処しまして、まず第一には、科学的災害防止対策、職業性疾病予防対策の充実強化ということで、そこにございますような諸計画の推進、それから安全研究所、衛生研究所等をはじめとしますところの研究活動の強化、さらに職業性疾病予防対策の推進、それから特に本年九月にわが国で開かれます国際労働衛生会議への助成というようなものを内容といたしております。

 さらに、災害防止の関係のサービス網を整備確立いたしますために、安全衛生コンサルタントの活動育成、安全衛生サービスセンターの拡充、それから災害多発危険有害事業所への重点的監督というようなものをさらに進めてまいる予算が計上されております。

 次に、婦人の能力の有効発揮と福祉対策の推進でございます。

 雇用対策と重複しておる面がございますが、そこにありますような中高年齢婦人の雇用の円滑化をはかってまいるということで、就業分野拡大のための啓発活動の強化、あるいは短期職業講習の拡充、家事サービス職業訓練の充実、パートタイマー対策の推進というようなものをはかってまいるわけでございます。それから中高年齢婦人の雇用状況の把握、それから婦人週間の拡充というようなものが中身となっております。

 それから婦人労働者、労働者家族の福祉増進対策といたしましては、働く婦人の家の増設がございまして、前年度二カ所でございましたものを、四十四年度は四カ所計上いたしております。その他、内職職業補導所をさらに増設してまいる関係の予算、及び労働者家族、家族従業者の福祉増進関係の予算が計上されてございます。

 次は、一五ページに入りまして、勤労青少年の健かな成長のための総合的施策の樹立推進でございます。

 これも、先ほど雇用対策の面で出てまいりましたものと大部分が重複いたしておりますが、学卒者のアフターケアの拡充、受け入れ体制の整備、それから中野におきます勤労青少年センター、その他先ほど申し上げましたような諸施設の拡充でございます。特に一六ページの右の上にございます婦人少年局専管の事項といたしましては、勤労青少年ホームを、前年度十八カ所でございましたものを、四十四年度は二十三カ所増設してまいるという予算でございます。

 次は、社会経済情勢の変化に即応する積極的労政行政の展開でございます。

 その一つは、労働経済等に関する長期的展望に基づく労働政策の樹立でございまして、政治、経済、社会情勢の変化に対応する労使関係、労働運動の動向の把握と適切な対策に資するための経費、及び労働運動との関連における労働経済の総合的な把握に要する経費というような事務費が計上されております。

 それから労使関係の安定促進といたしましては、労働教育の拡充ということで、日本労働協会に対する補助金を増額いたしておりますほか、労働委員会の機能の充実等が行なわれております。

 それから中小企業労働対策といたしましては、従来から中小企業集団に対する助成を行なっておりますが、これも若干予算をふやしておるわけでございます。

 次に、労働保険制度の改善と適正な運営がございます。零細企業に対しまして失業保険、労災保険の適用拡大を段階的に行なうということで関係の改正法案を出したいということは、先ほど大臣が申し上げたとおりでございますが、なかんずく失業保険法の改正につきましては、そこにございますような段階的な適用拡大のほかに、受給者に対する給付の適正化と就職の促進、給付内容の改善、季節的失業保険受給者対策の推進、それから労働保険の適用徴収事務の一元化というようなものを中身といたします改正法案をいま職業安定審議会、社会保障制度審議会に諮問をいたしておるわけでございます。さらに、これらの改善と対応いたしまして、失業保険料を千分の一引き下げるというような中身になってございます。そういった関係の改善の予算が、その改善部分だけで九十八億七千七百万円になるということでございます。それ以外に、新たに労働保険相談員というものを二百五十人新規に設置いたしたいということでございます。

 最後に、国際労働行政の充実強化といたしましては、アジア地域等における発展途上国に対する技術協力の推進をはかるということのための予算を計上いたしておりますほかに、ILO、OECD等に対する分担金の増額等の協力関係の予算、その他情報の収集活動等の予算というようなものでございます。

 簡単でございますが、以上をもって予算の御説明といたします。