51-衆-地方行政委員会-37号 昭和41年05月31日

 

昭和四十一年五月三十一日(火曜日)

   午後二時五十五分開議

 

本日の会議に付した案件

 警察に関する件(横須賀市における原子力潜水艦寄港反対デモの際の警察官の職務執行に関する問題)

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○秋山委員 私は質疑に先立ちまして、委員長並びに国家公安委員長あるいはまた同僚委員の皆さん方にまずお願いを申し上げておきたいと思います。

 私は昨晩の横須賀市内の各種の状況を見まして非常に驚きました。これが日本の国の中のことであるかどうか、こういう気さえしたわけであります。そしてまた、けさ私はテレビを見ておりますと、一方におきましては大阪の釜ケ崎ですか、ここにおきましていろいろ問題が起こったようであります。続いて画面にあらわれてまいりましたのが横須賀のデモに関しましての警備の問題であります。こういうことごとを見ましたときに、これはひょっとするとベトナムの映画を映しているのじゃないか、こういう錯覚も起こったくらいであります。私はこの姿を見て非常に憤激にたえませんでした。したがって、私はきょうは時間をかけてもこれらのあやまちを――明日あるいは今夜からだんだん動員の人数も多くなってまいりますので、再び三たびこういうことを繰り返してはならない、こういうことの上に立ちまして、私はきょう時間をかけても、神奈川県の警察本部長にこちらに来ていただきまして明細にわたって質疑を重ねてまいりたい、こういう心持ちを持って出てまいりました。したがって午前中の理事会におきまして、私はこの要望を非常に強く要求をいたしました。ところが自民党の理事諸公は、警察本部長を呼ぶのはいま待ってほしい、こういうことをしきりに申されたわけであります。私はこの点はいまだに理解できないのでありますが、しかし、私たちの同僚からすすめられまして、一歩譲って考えまして、緊急の場合なんだから、自民党さんの、多少のあやまちはあっても、これはやむを得ないものとして一言でも二言でもいいから質疑を通じて将来の戒めにしたらどうか、こういうことを申されましたので、私もやむなくこれを承認することにいたしたわけであります。ところが聞くところによりますと、すでに自民党の国対におきましては昨日のうちに、これらに関係したことごとはすべて委員会の質疑をやめよう、こういうことが決定をなされておったと聞くのであります。にもかかわらず、私どもは非常に真剣に――あるいはまた横須賀におきましても、昨晩の学生諸公の中で一名ないし二名はおそらく助からないのではないか、こういうことが言われております。そのさ中におきまして、こういうことを半日にわたって、私たちが知らないからといって、自民党の理事さんに引き回されてきた、こう言っても私は過言ではないと思います。私は将来の問題として、こういうことはお互いに相戒めながらもろもろの議事を進行していただくことが望ましいと思います。何かこまかいことを知っている現地の直接責任者である神奈川県の警察本部長を呼ぶことに対して、理由はわからないけれども、これをきらっている、こういうことを想像いたしますと、何かその裏には隠されているものがあるような気がしてならないわけであります。そういうことではなくして、少なくも私たちがこの委員会の担当事項であります警察の問題そしてまた治安維持の問題となりますと、事人命にもかかわってまいります。こういったことごとを考えましたときに、私はもっとすなおな形で、すなおな気持ちで皆さん方とともどもに再びこういう事態が起こらないように、少なくも人命をかけているような事件が起こらないようにしたいものだ、こういうふうに念願をして、一刻も早くこの委員会が開催されてこの問題の質疑を行なってまいりたい、こういうことでありましたけれども、これがたまたまいま申し上げましたようなことごとを経まして、いまの状態になったと思います。特にきょうの場合には、警察関係の最高の人たちはおられない、こういうことのようですが、私はけさ国会の自分の控え室に着くと同時に、委員部にその希望を申し上げておったはずであります。それにもかかわらず、午後になりますと、警察のおえらい方々がお留守だからということで、きょうは国家公安委員長だけの質疑にしてもらいたい、こういうことのようでありましたので、これもやむを得ないかなと思いまして、この開会に応じたわけであります。

 そこで、これから質疑を行なってまいりますが、こまかいこと、あるいはまた横須賀市内の地形に関すること、あるいはまた横須賀警察署におきまして、デモ隊を組織し指導しておる人たちと警察の取り締まり当局と何回か話し合いを続けて、デモコースをはじめとしていろいろな相談、規制が行なわれましたけれども、そのことごとが何か警察の中では徹底を欠いておった。こういうことを考えてみたときに、そういうこまかい点にわたりましては、おそらく国家公安委員長さんは御存じがないことではないかとも思います。そういうことにつきましては、あらためて次に開かれます地方行政委員会におきまして質疑を継続させていただきますので、あらかじめ御了承をいただいておきたいと思います。

 そこで質疑に入りますが、昨晩の状況につきまして、あるいはまた昨晩までの状況につきまして、国家公安委員会が知り得る範囲内において、そしてまたあなたから直接指令なり訓示なり訓令なり、こうしたものが出されておりましたならば、それらにつきましてまずお答えをいただきたいと思います。

 

○永山国務大臣 私のほうから特に注意をいたしましたことは、デモに対しては適正に行なわれることの妨げのないようにやらなければいけない。その指導者、責任者とよく相談をいたして、十分了解のある行動に出なければいけない。ことに国会議員の皆さまは指導的立場に立っておられるので、十分ひとつよく相談をしてやれ。しかし法に違反をいたして治安を乱すような問題については、これは厳粛にやらなければいかぬというように指示をいたしておるのでございます。そうして見通しといたしましては、約一万といわれておりますが、その近い数字になるかもしれないが、大体すべて静粛に、法の命ずるままに、十分ひとつ秩序ある行動をとられる見通しだ。ただしその間、反代々木派の全学連が千名内外か参加をいたして、はね上がり行動に出るかもしれないから、これに対しては他のデモ等に支障を来たさないように、十分ひとつ違反行為にならないように警戒をしてやらなければいかぬ。そうして決して挑発的行動に出ず、よく制止をして、けが人を出さないように十分注意をしてやれということを申し上げた次第でございます。

 お説のように、あの地区は非常に狭い地区でございまして、交通その他混乱を来たしておるのでございます。やはり予定しましたような反代々木系の全学連のはね上がりがございまして、これが正常なるデモを妨げる傾向にございましたので、このはね上がりを制止するということで、機動隊でこれを囲んで、その被害が及ばないようにいたしたのでございますが、そういう方向に移るときに、やはり狭い関係上、他のデモ隊の通行等に逆に支障になるというような結果にもなったのでございますが、しかしそれはどこまでもデモ隊の正常な行動を妨げないという目的でやりましたのでございまして、この間何ら他意はあったものではないのでございます。ことに基地への侵入は、大型トラックがそこを出ましたそのうしろについて、七十名ばかり入ったのでございまして、これは直ちに排除をいたして、その責任者である十名は、刑特法によりましていま捜査を続けておるような次第でございます。

 なお、お説のように、警察官のほうにも、また学生のほうにも負傷いたしましたこと、遺憾でございますが、その負傷の数は、警察官が三十七名でございまして、学生が二十五名でございます。そうしてその他カメラマンが一名、通行人が一名でございますが、いま入院をいたしておりますのは、警察官五名でございまして、学生が三名でございます。うち学生のほうで一名は一カ月を要するだろう、その他は二週間ないし三週間で退院できるという見通しでございます。なお、検挙者は、学生が二十六名でございまして、社青同のほうが二名、社会党一名というのが、ただいま検挙して捜査を進めておる次第でございます。