51-衆-本会議-19号 昭和41年02月25日

 

昭和四十一年二月二十五日(金曜日)

    ―――――――――――――

  昭和四十一年二月二十五日

   午後二時 本会議

    ―――――――――――――

○本日の会議に付した案件

 議員請暇の件

 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、

  法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)

  及び相続税法の一部を改正する法律案(内閣

  提出)の趣旨説明及び質疑

 福田大蔵大臣の昭和三十九年度決算の概要につ

  いての発言及び質疑

   午後二時十九分開議

 

○勝澤芳雄君 私は、ただいま大蔵大臣から御報告のありました昭和三十九年度歳入歳出決算外三件につきまして、日本社会党を代表いたしまして、総理並びに大蔵大臣に質問をいたします。(拍手)

 国の決算は、従来から単なる報告案件として、両院それぞれ別個に決算委員会に付託、審議されてきました。これがため、予算が国の活動を示す財政計画として、国会審議に重要なウエートを占めているのに、決算はその業績を示すものであるのにかかわらず、軽視され、審議の結果は、何ら国政に反映されぬままになっております。われわれは、この誤った決算のあり方を是正させるために、会計検査院にも、単に不正不当事項の指摘だけでなく、積極的に是正改善意見を求めるとともに、予算執行の適正、経済的効果、行政的成果についても審議を行ない、それを予算編成や執行に反映させ、行政運営の姿勢を正すべく、決算の重要性について、与野党決算委員協力して強調いたしてまいりました。

 その結果、本日、帝国議会始まって以来初めて国の決算が本会議で審議されることは、まことに画期的なことであり、決算の重要性がようやく再認識されたものとして、喜びにたえません。まず総理から、この際、決算の重要性についての御認識について、御所見を承りたいと思います。

 第二に、綱紀粛正についてであります。

 昭和三十九年度会計検査院の決算検査報告書によると、不正不当事項は六百六十四件、二十七億九千万円で、依然増加の傾向にあります。これは会計検査院で、全経理の約一割程度を実地検査した結果であります。人事院発表の昭和三十九年度国家公務員の汚職による懲戒処分は千八百四十三件、法務省の昭和三十九年国家公務員の犯罪は、収賄四百五十六人をはじめ千六百四十四人となっております。これらは官僚の特権意識による公共財産や税金、予算などの私物化、めくら判行政による責任の所在不明、許認可、補助金制度等の自由裁量権の幅が広過ぎること、人事院規則による官庁と私企業隔離の原則が有名無実であること等が官紀紊乱の原因であります。最近の建設省橋梁汚職、首都高速道路公団の汚職幹部に対する嘆願書事件、あるいは厚生省や日本専売公社における選挙違反による公民権停止中の元幹部の復職事件等はその一例にしかすぎません。

 私は、綱紀粛正については、特に政治の姿勢を正すとともに、従来のおざなりによる一片の通達でなく、高級公務員の倫理ともいうべきものを検討するなど、真剣な対策を講ずべきであると思いますが、総理の御決意を承りたいと思います。(拍手)

 第三は、国有財産の管理処分についてであります。

 国有財産管理と処分の実態は、戦後二十年を経過した今日においても、なお実態不明や不法占拠、無断使用など多数あり、大蔵省の普通財産においてさえ、実態確認されていないものが、昭和三十九年度末で十万件以上もありまして、毎年会計検査院から指摘されております。

 また、決算委員会の調査でも、東京大学検見川総合運動場がゴルフ場に使われていたり、神奈川県三浦半島網代湾海岸が、一部有名人に年間坪五十円で別荘地に貸し付けられていたり、多摩川の河川敷をゴルフ場に坪九円で占用させ、道路公団が橋をかけるのに坪三万円、総額三千四百万円の補償金を払ったり、愛知県の旧軍用地が払い下げ後一週間目に一億円ももうけて転売されていたり、あるいは大蔵省の高級官僚や日本専売公社役員の役得による国有財産の払い下げ等顕著な事例であります。これらは氷山の一角にすぎないのではないかと思うと、まことに憂慮にたえません。

 この際、特に大蔵大臣から、国民の疑惑を払うために財産管理処分の適正な取り扱いについて御所見を承りたいと思います。

 また、高級官僚や政府関係機関等の役員に対する財産処分は、今後一切厳禁すべきであると思いますが、御意見を承りたいと思います。

 第四は、決算審議の結果についてであります。

 大臣各位は予算を獲得するときは血眼になっておりますけれども、予算の執行や決算についてはまことに無関心過ぎるのではないかと思われます。会計検査院から不正不当事項と指摘されても、おざなりに済まされ、数年間放置され、責任者はいつの間にかえらくなっております。大臣は官僚に使われるだけで、使いこなすころには交代しており、官僚王国、不正者の天国といわれております。

 特に最近の決算を見ても、防衛庁では七十九万一円の戦車用部品トラスカバーを四百八十七万円で買ったり、国産品で間に合うのに外国品を買って、国産品愛用に逆行いたしております。

 郵政省では、昭和三十九年度も三千二百八十八件、二億六千九百余万円の郵便犯罪が発生いたしております。特に静岡七間郵便局では三千六十三万円、秋田の浅舞郵便局では千百九十万円、十数年間にわたって犯罪行為が行なわれておるのであります。

 建設省と国鉄による道路の立体交差化工事は、一カ所の相談が二年以上もかかり、道路ができても立体交差化工事がおくれているために十二億円もの工事が不経済になっておるのであります。

 厚生省の血液行政では、昭和三十九年全国の採血量五十九万リットルのうち、八六・五%が山谷や釜ケ崎などの日雇い労務者による売血であったことはまことに驚くべき事実であります。

 外務省の海外移住のための予算は、昭和三十九年度三十億円も使われておるのでありますが、移住実績は千百五人であります。

 東北開発株式会社は、昭和三十五年度決算で六千八百二十七万円の黒字だと報告されておりますが、決算審議の結果、二億八百万円の赤字であることが明らかになり、昭和三十九年決算では、資本金四十八億円に対し、累積赤字五十二億円で、資本金を食いつぶしております。

 国庫補助金等の不正や不当は依然として絶えません。しかも、単価は実情を無視したもので、地方団体の超過負担は、昭和三十九年度で千百四十三億円にもなり、地方財政を圧迫いたしております。

 以上は、ほんの一例でありますが、せめて各大臣が決算に重大な関心を持っていただきたいと思ってわざわざ申し上げたのでありますけれども、お聞き及びがないのはまことに残念なことでございます。私は特に大蔵大臣から、会計検査院の不正不当の指摘事項あるいは是正改善意見や、決算委員会の議決事項については、その責任の所在を明確にするとともに、予算編成にも十分取り上げるべきであると思いますが、御所見を承りたいと思います。

 第五は、公社、公団、公庫、事業団、その他の特殊法人等や補助団体についてであります。

 現在、公社、公庫、公団、事業団、特殊法人等は百以上もあり、乱立の傾向にあります。しかも、その必要性の乏しいもの数多くあり、この際根本的に再検討すべきであると思います。特に人事は、監督官庁の割り当てによる天下りで、局長は理事、事務次官は副総裁で、各省の出先機関にひとしい状態であります。給与は、民間の大ものという名目で、月四十万円、退職金は四年間で千二百四十八万円であります。監督は後輩、監事の権限は不明確、事業運営は監督官庁の指示のまま、結局高級官僚のはけ口をつくったようなものであります。

 私は、この際、公社、公庫、公団、事業団等の新設はやめるとともに、統合整理を積極的に行ない、人事、管理、運営等について再検討すべきであると思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。(拍手)

 次に、最近の決算を見ても、補助金、委託費による補助外郭団体は年々増加しております。昭和四十一年度、補助金、委託費総額は一兆二千億余円で、国の予算の三割を占めており、補助団体数は一万余に及ぶと推定されております。この補助団体の中には、何のために補助金を出すのか、その判断に苦しむものもあり、各省のなわ張り争いの予算獲得のために同じような団体がつくられ、行政の混乱と国費のむだづかいが行なわれております。特に内閣官房では、内閣の重要政策に関する情報の収集と調査の委託費が、新聞切り抜きにひとしい資料に払われていたり、外務省の日本国際問題研究所は、補助金、委託費をもらうためにつくられたものであると断言せざるを得ません。この際、特に大蔵大臣に要望いたしたいのですが、中央における補助外郭団体に対する補助金、委託費は大幅に整理すべきであると思いますが、その決意ありや、承りたいと思います。

 第六は、臨時行政調査会の答申についてであります。

 臨時行政調査会は、国民のための行政をつくろうと、昭和三十七年二月発足以来、二年七カ月にわたって二億円余の国費によって、わが国行政制度及び行政運営全般について調査、審議を重ね、昭和三十九年九月答申がなされました。その内容は、行政全般にわたり、まことに重要な指摘をされております。この答申について、政府の態度は、一応尊重するという立場をとりつつも、消極的であることはまことに遺憾であります。

 行政改革は国民の声であり、国家的要請であり、能率のよい政府をつくることは、政治の責任であり、これが実施のためには、強い決意と指導力を必要といたします。これこそ佐藤内閣の重大な任務であります。私は、総理から具体的実施への決意を承りたいと思います。

 最後に、決算委員会のあり方についてであります。

 伊藤博文公の帝国憲法義解には「豫算ハ曾計ノ初トシ決算ハ會計ノ終トス議會ノ會計ヲ監督スルニ其ノ方法二ツアリ即チ一ハ期前ノ監督ニシテ二ハ期後ノ監督トス」云々とあって、予算と決算は、期前と期後の違いこそあれ、国家の会計を監督する二大支柱であることは、明治憲法においても明らかなところであります。いわんや、新憲法第四十一条において、国会を国権の最高機関と定め、第八十三条において、「國の財政を處理する権限は、國曾の議決に基いて、これを行使しなければならない。」とされております。

 しかし、従来から、決算については、ことばの上では重要だといわれながら、制度的には軽視せられ、形式的なものになりがちで、その結果、予算の執行がいいかげんに行なわれたり、国民の血税がむだづかいされてきたり、会計検査院の指摘も、おざなりに放任されてまいりました。このような決算軽視の原因は、決算が単なる報告案件として取り扱われてきたところにあると思われます。

 そもそも、明治憲法の起草の段階においても、国会における決算の議決によって政府の財政に関する責任が解除せられるという見解が強かったことは確かで、現に、決算はまず衆議院に提出すべきか、貴族院に提出すべきか、検討された文献があるのを見ても、決算を議案として扱うべきであるという意見があったことがうかがわれます。しかし、明治二十五年、第六回帝国議会に初めて決算が提出せられ、以来、報告案件として取り扱われてきましたが、その理論的根拠は不明確のまま今日に及んでおり、新憲法制定の際も何らの論議もされず、旧憲法の引き写しにすぎません。

 しかしながら、憲法で、決算は国会に提出すべしということは、憲法は、国会が決算を審議する権能と責務とを持っていることを予想しているものと思われます。したがって、審議の結果、国会が何らかの意思決定をするということも、憲法は容認しているものと考えられます。ゆえに、決算は、単なる報告案件としてでなく、議案として取り扱うことにより、国会の有する行財政の事後監督権が確立せられ、決算の審議が権威あるものとなり、これこそ国会中心財政主義の新憲法の精神に沿うものであると思います。(拍手)

 以上のように、決算のあり方は、実はわが国国会創始以来、七十年来の重大懸案でありますので、政府と国会が同一歩調でこの制度を改革するため、政府としても、関係機関による研究とか、審議会により検討させるとか、積極的な努力を払うべきであると思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。

 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)

  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕