48-衆-決算委員会-4号 昭和40年02月15日

 

昭和四十年二月十五日(月曜日)

   午後一時三十九分開議

 

        参  考  人

        (日本赤十字社社長)     川西 實三君

        (日本赤十字社副社長)    田辺 繁雄君

        (日本赤十字社中央血液センター副所長)   徳永 栄一君

        専  門  員 茨木 純一君

 

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本日の会議に付した案件

 国が直接または間接に補助金、奨励金、助成金等を交付しているものの会計に関する件(日本赤十字社中央血液センターの経理に関する問

 題)

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○壽原委員 まことに社会的な業務を行なっておって、日本赤十字社としては国民の信頼を非常に得て、そして現在は献血をなさる方も逐次上昇しておる。こういう際にまことに遺憾な不祥事ではございますが、二人の職員が相共謀して五百数十万にのぼる金額を使い込んだ。あるいは新聞紙上によりますと一千万ともいわれ、また千二百万ともいわれ、いずれの金額かはっきりわかりませんけれども、現在司直の手にかかってこれが取り調べられておるということは、私らはまことに遺憾千万に存ずるわけでございます。そこで、この件について管理監督の立場にあるあなたは、いつこの事件の内容を知ったか、また業務に関して監査責任を有する厚生省に対してはいつごろこの事実を報告したか、この点を明らかにしておいてもらいたい。

 

○田辺参考人 私この事件の発生を知りましたのは昨年の八月十五日であります。ちょうど靖国神社におきまして全国戦没者の慰霊祭が行なわれようとしておりました。その慰霊祭に私も参列いたすべく準備しておりましたときに、当時の大島衛生部長、それから血液センター所長の村上さん、二人からこの事件の概要を伺ったのでございます。その際私指示いたしましたことは、お尋ねがございませんでしたけれども、御参考までに申し上げますが、事件の全貌を、ことに被害額をすみやかに正確に把握するために調査を続けてほしいというのが第一点。第二点には、金額は未確定であるが、相当多額の預金の使い込みがあったようだが、もし本人等においてその金を持っておるようなことがあるかもしれないので、すみやかにその金を回収するように強力なる措置を講じてほしいということを指示いたしたわけであります。

 厚生省に対して正式に報告した日でございますが、これは年を明けましてからの一月六日であったと思います。さらに文書によりまして、社長から正式には一月十九日に厚生大臣に御報告をいたしたわけであります。

 

○勝澤委員 この血液の行政につきましては、昨年の四月、それから六月、この決算委員会でいろいろと調査を進めまして、その結果、御案内のように、今日の血液が九割以上が売血であった。しかもその充血は釜ケ崎やあるいはその他の山谷、こういうところで集められたものであって、その血液の良否については相当問題があり、血清肝炎の原因ではないだろうかという疑いさえあって論議されております。しかしそのことも、厚生省からそういう指摘があったのでなくて、マスコミの皆さんをはじめ一部の学者諸君が献身的な努力をして、これでは血液が困るということでこの委員会に出されてきたわけでありまして、私は、これを見ただけでも、一体厚生省という役所は何のためにあるのかという疑問を持たざるを得ないわけであります。今度の医療費の問題にいたしましても、こんとんとして混乱いたしております。厚生省というのはあつせい省だと読んだ人がありますけれども、まさに私はこのことばのとおりだと思う。そうして、この血液行政の問題について指摘をされ、ようやくにして昨年与野党一致をして、何とかやはり予算をふやさなければならぬ、オープン採血をやれという戸で、ようやくこのごろ軌道に乗ってきたというのが今日の状態だと思う。そういう中で起きたこの日赤の血液銀行の課長の公金横領というものは、私はたいへん大問題だったと思う。ですから、この時期にこういうものが世間に出たということについては、たいへん残念なことですけれども、やむを得ざるものと私は認めざるを得ないものですけれども、しかしいろいろ調べてみますと、いま副社長から話がありましたが、新聞の報道によりますと、千二百かとかと言われておりますが、しかし今度は日赤から厚生省に出された正式報告によりますと五百二十何万、いまこの席では四百十三万とこう言われております。一体この金額というものはどういう形で出てきたものであって、そうして幾らが横領されたものかということを、私はやはり明確にしてもらいたいと思う。三十八年十二月から三十九年六月までで五百かぐらいだ、こう言われておるのだから、一体その前からどうなっておるのだろうか。そうしてまた、このようなことは、もし厚生省が真剣に考えるならば、四月と六月の決算委員会で指摘されたときに日赤に対して、こういうことがないかどうかというのは、もう当然監督官庁としてよく聞き合わせて、こういう問題を明確にされるはずでありますけれども、それが厚生省と日赤の間でも何らされていない。一体厚生省は日赤をどのように監督をいたしておるのかという点も実は疑問になるのでありまして、一体副社長はどこの御出身だろうと調べてみると、厚生省のあなたの先輩ではないだろうかというような話が伝わっておるが、この国からよそに出ている外郭団体といいますか、補助団体といいますか、委託団体といいますか、こういうものを詳細に見たときに、必ずそういうものが出ているわけです。原局の監督が不十分なんです。ですから、そういう点にも私は問題があると思う。ですから、前の局長やあるいは次官がそちらに行かれることについては私はとやかく言いません。しかし行った先についての監督官庁の原局というものは、きっちり監督行政を行なわなければならぬと思う。

 そこで、私は、先ほどから壽原委員からいろいろ質問された中でもうちょっと明確にしていただきたい。一体横領された金というものはどういう金であるのか、実際には金額はどうなっておるのかという点を、簡単でけっこうですから、明確にしていただきたいと思います。

 

○熊崎政府委員 このたびの日赤の不祥事件、たいへんな不始末をいたしまして、私どもまことに監督不行き届きでございまして、先ほど政務次官おっしゃられましたように、まことに申しわけないと思っておるわけであります。金額の点につきまして、新聞紙上で伝わりました中身とただいま剛社長が申し上げられました金額と若干差があるという御指摘でございますが、私どものほうに日本赤十字社を通じまして報告を受けております金額につきましては、先ほど副社長が申し上げられましたような五百二十七万五千円の金額でございまして、それも期間は三十八年の十一月から三十九年の七月までの分ということになっております。一月に報告をいただきましてから、私どもとしましては日赤側と連絡をとって、なお詳細に調査の必要を痛感いたしておったのでございまするが、その後渋谷署の手入れがございまして、関係書類一切、これ、あげて司直のほうに渡っておりまして、私どものほうから具体的に中身を現在調査する書類が警察のほうに渡っておりますので、いまのところ不正事件の中身はあげて司直の手を待たなければわからないというふうな形になっておりますのは、まことに申しわけないことと存じますが、ともかく五百二十七万五千円にのぼります横領金額があったという事実につきましては、その経理が未収金の中身であったというふうなことでありましても、いずれにしましてもきわめて申しわけのない結果になっておるわけでございますので、今後とも十分こういうことのないように日赤側と連絡をいたしまして、経理の明確化をはかりたいと思っておるわけでございます。

 

○吉田(賢)委員 社会局長にちょっと伺いたいのですが、売血の供給者問題は依然として重大で未解決ではないかと思うのです。そこで私は、売血のいまの層、グループはどこが一体最も大きな供給源になっておるか、これをちょっと確かめておきたい。

 

○牛丸政府委員 これは東京の例を見ましても山谷地区が――山谷地区だけではございませんが、大体階層から見ますと、日雇いの労務者が、雨が降ったりなんかして仕事にあぶれたような場合に、その中から売血をする人がある、あるいは地域的に山谷なりあるいは大阪の釜ケ崎というようなところがそういう売血常習者の主たる地域になっておるというふうに承知しております。

 

○吉田(賢)委員 そういたしますと、やはり売血者というのは依然として山谷とかあるいは横浜の壽町、大阪の釜ケ崎、あるいは名古屋の中村町ですか、そういう地域なのでございますか。そういうふうに理解していいですか。

 

○牛丸政府委員 スラムの問題としてはそういう点でございますが、しかし学生のアルバイトとしてもそういうのがございます。しかし、最近の事情としては、献血の推進ということで、そういういわば民間の血液銀行の採血行為に対しても相当規制が行なわれておりますので、現在のところは事情はよくわかりませんが、従来はそうでございます。

 

○吉田(賢)委員 やはりその実態を正確に把握するということは、別の角度から見まして、社会保障ないしはスラム街あるいはそういう人生の敗残者の吹きだまりの諸般の問題を解決する上におきまして、厚生省の重大な仕事になるのじゃないかと私は思うのです。これはやはり実態を――それならば学生アルバイト等の売血者がどんどん出てきたというなら、その層、その地域、あるいはその事情とか、その数とか、あるいは依然としてそうでない階層の日雇いないしは仕事を失った失業者、あるいはそれで食っておるような人、そのような者がどのくらいを占めておるのかということの実態把握が非常に重要だと思います。これはすみやかに、私は前の国会でも言っておるのですけれども、東京のまん中に山谷があって、日本一の売血の供給源になっているということでは、文明国じゃない、政府のおひざ元で何というていたらくかと言ったくらいでありますが、この点はやはり厚生省は全力をあげまして、社会福祉的見地から解決をしてもらわなければ私は相ならぬと思います。その人たちが仕事を失なうものならそれは道を与えなければいけない、生活の手段を失なうものなら、正しい生活に復帰させるという手段を講ずることが私は行政府の責任だろうと思います。こういう点について、積極的な施策がなされなければいかぬと思います。これでいろいろ予算もお組みになっておるか知りませんし、まただんだんと一方の献血運動が盛んになってくるのに対応しておやりになっておると思うのですが、次官、この点はだいじょうぶですか。

 

○徳永政府委員 お説のような問題も十分配慮しまして、今後一そうの努力を傾けてまいりたいと思います。

 

○吉田(賢)委員 局長にもう一ぺん伺っておきますが、これは資料としてひとつ至急にお出しいただきたいと思います。それは売血の層と群とその後どういうふうな事情に経過しておるのかどうか。これはやはり血液の供給源を正確に把握する上におきまして、血液事業推進の上におきましても私は重要な素材になるべきものと思いますので、きょうでなくてよろしゅうございますから、ぜひとも委員会にあてて資料を出していただきたいと思いますが、その点はいかがでございましょう。

 

○牛丸政府委員 地区的に調査いたしまして、できる限りまとめまして、後日提出いたします。