39-衆-地方行政委員会-7号 昭和36年10月13日

 

昭和三十六年十月十三日(金曜日)

   午前十時三十三分開議

 

本日の会議に付した案件

 災害対策基本法案(内閣提出第四九号)

 昭和三十六年度分の地方交付税の単位費用の特

 例に関する法律案(内閣提出第六〇号)

 警察に関する件

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○大原委員 昨日以来、わが党の赤松委員や阪上委員の方から、公安条例に関連いたしまして、いろいろと質問があったのであります。私はこの七月二十八日の広島県における公安条例による全日自労の吉田委員長逮捕事件、こういう具体的な問題を中心といたしまして、具体的な問題から一般的な公安条例の本質論まで含めまして、一つ御質問をいたしたいと思います。

 これは一労組の問題だけでなしに、非常に労働運動との関連において重大な具体的な事例でありますので、そういうおつもりで一つ明快に御答弁いただきたいと思うのであります。質問も簡潔にいたしますから、御答弁の方も簡明にやっていただきたい。そういう点を昨日の質問を聞いておりまして感じたのでありますが、いろいろな説明の仕方をするのでなしに、一つ簡明な答弁をしていただきたい。昼も過ぎて時間も迫っておりますので、そういう点で特にそのことを要望いたします。

 質問の本論に入ります前に、私は根本的な問題、前提となるべき問題が二、三ございますので、そういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。公安条例の論議を通じまして、いろいろ問題となるのは、基本的な人権、特に労働運動との関連であります。しかしながら私は、各府県の府県会において議決する公安条例ではあっても、その発案は県の公安委員会でやるわけであります。それに対しましては、中央の警察庁、公安委員会の方はいろいろな指導や助言をすると思うのでありますが、その問題については、昨日議論がありましたから、ここではむし返しません。しかしながら、そこで公安条例の原案を作りまして、そして県会の議決を得て公安条例を適用する場合に、とかく独断的な解釈に陥りまして、非常に権力の乱用という場面が出てくるのではないか、そこには自治体の立法権の限界と憲法問題が出てくると思うのであります。

 質問に入る前提といたしまして、私は二、三どういう御認識を持っておられるかという点の御質問をしたいと思うのですが、その第一点は、自由労組の問題というのは、これは非常に各方面から現在問題になっている社会問題であります。これは市町村長からも、あるいは与党からも、あるいは政府の中においても、むろん社会党は別の角度からこの問題を議論いたしておるのであります。しかしながら、たとえば先般ありました釜ケ崎の事件、山谷の問題、そういうふうな問題とは、これは社会問題といたしましては、本質的に似通うておるものでありますけれども、この治安とかあるいは行政秩序という方面から考えてみますと、根本的に違った問題があるのであります。私はこれから逐次具体的な問題について質問をいたして参りますけれども、警察庁の幹部諸君は、全日自労という組織はあるけれども、日雇い失対労働者の事業、そういう社会問題としてのこの問題の実態、こういう点についてどういう御理解をしておられるかということを私が一問一答の形で御質問申し上げますから、わからぬ点はわからぬというふうに明快に答えてもらえばよろしい。

 そこで、私の質問に対してお答えいただきたい。これは結論と関係があるのでちょっと申し上げるのですが、自由労働者の日々雇用をやっておる人々の賃金が一カ月は大体どのくらいだ、収入がどのぐらいあるか、こういう問題についてどういう御理解をしておられますか。

 

○三輪政府委員 ところによって額もあるいは違うようですが、ほぼ六千円ないし八千円見当かと思っております。

 

○大原委員 家族はどのくらい養っておりますか。

 

○三輪政府委員 具体的に調査をいたしましたわけでございませんが、年配の方も相当多うございますので、家族は二人ないし四人くらい養っていられるもの、これは推量でございますが申し上げます。

 

○大原委員 平均は扶養家族が三・六人です。三・四人という資料もありますが、そのくらいです。そういたしますと、五人も六人も養っている人があるのです。適格基準というのがありまして、主たる関係者が一人しか働けないわけであります。月収については大体そういうことであります。あなたの方の答弁は少し違っておりましたけれども、これはこのことが本質論でありませんから私の方で訂正しておきます。

 日雇い労働者の雇用関係は一体どうなっておるかということを御承知ですか。

 

○三輪政府委員 どうなっておるかというお尋ねがちょっと理解しかねますけれども、市町村あるいは県だけの職場もあるようでありますが、そういう職場が県下に幾つかありまして、つまり事業主体といたしましては府県なり市町村が事業主体として雇用している状況であります。

 

○大原委員 だんだん本論に入って参りますが、日雇い労働者の身分は法律上どういうふうな身分ですか。

 

○三輪政府委員 地方公務員法によります第三条三項六号に該当いたします特別職と心得ます。

 

○大原委員 今の答弁はその通りであります。特別地方公務員であります。そして雇用者はお話の通り知事あるいは市町村長であります。これは憲法二十五条、最低保障の問題、そういう規定に基づいて国が社会保障制度の一環として失対事業を起こしてやっておるのであります。このことはあとに問題が関係いたしますから、質問をここでちょっと方向を変えて参ります。

 先ほど申し上げたように、七月二十八日に公安条例をめぐりまして問題が起きたわけでございますけれども、第一番に御質問申し上げたい点は、広島県の公安条例第一条の、道路、公園、広場その他の屋外の公共の場所において行なわれる集団示威運動、行進、集会が公共の安全と秩序に対し直接危険を及ぼすことなく行なわれるために云々、こう書いてありますが、その公共の場所という法律上の意味はどういうふうに御理解になっておりますか。

 

○阪上委員 私はきのうこの警察関係でもって二つの質問をいたしたいと存じまして、公安条例については、ほぼ質問は終了した格好になっている。それからいま一つは釜ケ崎事件、スラム街対策、これについて御質問を申し上げたいと思っておりますが、大へん時間がおくれておりますので、スラム街対策については来週に保留いたしたいと思っております。時間が迫っておりますので、ごく簡単なことで一つだけ私の意見を申し上げておきたいと思う問題があるのであります。

 それは、昨日の公安条例の質問の際に、資料の提出をお願いいたしたのであります。それは国の法律の先占領域、法律が先に占めておりますところの先占領域を侵して、なおかつ競合しておるというような条例の例を示してくれ、こういうことを申し上げたのであります。これに対しまして出て参りました条例が、青少年保護条例、これは神奈川県のものをお出しいただきました。それから金属条例、これも大阪、兵庫等にございますが、兵庫県のものが出て参りました。そこで先ほどから検討いたしてみたのでございますが、この保護条例が、警職法であるとか、あるいは少年保護法であるとか、あるいは風俗営業等取締法であるとか、こういったものの先占しておるところの領域を侵しているとはどうしても思えないところのものであります。むしろその法律の細部の細則のようなもの、あるいは細部規定というものを設けておる。従って、その法律よりもさらにこまかく具体的に物事を規定しておる、こういうことであります。同時にまた、金属条例等におきましても、古物営業法の範囲内におきまして、しかもさらにそれよりもこまかく具体的に規定しておる。私が問題としておるのは、公安条例はその細部の規定の問題でなくして、むしろ非常に包括的なものでもって、たとえば刃物を持ってはいけない、こうきておる。たとえば公共の秩序と安寧を維持するために明らかに危険だと認められた場合に云々という非常に包括的なものを持っておる。そういった法の先占しておるところの領域を侵しているものは、これは法律違反であり、憲法の違反である、私はこういう考え方を持っておるのであります。そのことにつきまして、先ほどから門司委員からもるる質問があったと思うのであります。何か私は勘違いしておるのではないか、こういうふうに思うわけであります。こまかく規定することがいけないのだと私は一言も言っていない。こまかく規定することは正しいのであります。そうしなければいけないのであります。先刻来の御質問を承っておりましても、安井大臣、それから局長さんといろいろ伺っておりますが、その皆さんの考え方が、何かこまかいものを規定することが法律の領域を侵しているのだ。そういう意味ではないのでありまして、これは一つ専門的に物事を考えていただきたい。しかも皆さんの答弁によりますと、条例というものは自主立法である、こういうことが明確に言われております。また一般的な法通念としても、条例が自主立法であるということは、これは明らかであります。自主立法であるがゆえに、これは明らかに一般法と特別法との関係にあるものじゃないということです。あなた方の考え方を支配しているものは、とかく一般法が警察法、警職法であって、条例が何か特別法である、従って特別法は一般法に優先するのだというようなものの考え方に支配されているように思うのでありますけれども、そうじゃない。これはあくまでも地方自治体の自主立法であるという建前をとらなければならない。このことが大きくあやまちを犯しているのではないか、こういうふうに私は思うのであります。従って、この理論をここで政府との間で論争いたしましても、これはなかなか簡単に結論は出てこない、並行綿をたどっていくだろうと思いますが、私どもはそういうものの観点に立って、従って、この公安条例だけがそういう立場をとっている。ほかの条例を見ますと、必ず法の先占の領域を侵していない、ただ細部の規定をしておるにすぎないのだ、これとの間に大きな開きがある。現在あるところのものが、ただ単にこれが集団示威行進だけに対してそういった法の先占領域というものを侵しておるのだ、こういう私は考えを持っておるのでありますが、しかしこの論争はなかなか簡単におさまりますまい。きょうはいろいろと重大な行事もございますので、この辺で私はとどめたいと思います。