142-衆-行政改革に関する特別委…-6号 平成10年04月23日

 

平成十年四月二十三日(木曜日)

    午前九時開議

本日の会議に付した案件

 中央省庁等改革基本法案(内閣提出第四一号)

 

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○鍵田委員 もう一つ、先ほどお話がございました機関委任事務の廃止ということについては、これは大変結構なことだと思うのですが、ただ、それを全部中央に上げてしまうというふうなことがどうも多いように思うわけであります。それぞれ地方自治というものを充実していくという面から見ますと、やはり地方に移管していくというふうなことも大切なのではなかろうかというふうに思うわけでありますが、この機関委任事務をたくさん抱えておられるのが厚生省でもあり、それから労働省でもございますので、それぞれの大臣からちょっと御決意を、どういうふうなお考えなのかをお聞きしたいと思います。

 まず厚生大臣の方からお願いします。

 

○小泉国務大臣 地方分権という趣旨もあります、地方の自主性とか自律性を高める。地方分権推進委員会からの勧告というものを尊重しながら、できるだけ機関委任事務、廃止できるものは廃止していく、統合すべきものは統合していくという形でやっていきたい。地方分権推進委員会の勧告を尊重していきたいと思います。

 

○鍵田委員 地方への移管問題は。地方へ移管できるようなものはできるだけ移管すると。

 

○小泉国務大臣 移管できるものは移管していきたい、委任できるものは委任していきたいと。

 

○伊吹国務大臣 お答え申し上げます。

 基本的には、小泉大臣がおっしゃったことと私も全く同じ意見であります。

 ただ、何が地方の自主性を尊重して行うべきものであり、国民の、基本的な統一的な基準に従って運用しなければならないものはやはり国がやる、その辺の整理をきちっとすることが一番大事であって、地方事務官制度というような中途半端なやり方で現在業務をやっていることが一番の間違いであると私は思っております。

 

○鍵田委員 そのとおりでございますので私も同感でございますけれども、ちょっと具体的なことで、労働行政のことで幾つかお聞きをしたいというふうに思います。

 特に職業安定行政につきまして、これも機関委任事務になっておるわけでございますけれども、これを中央に全部引き揚げるというお考えのようでございます。

 これにつきましては、もちろん職業安定行政は一つの地域だけの課題ではない、かなり広範囲にわたってということもお考えのようでありますけれども、しかし、やはり広範囲にわたってやらなくてはならないものもありますが、それぞれの地方によって、例えば沖縄などが非常にこういう問題は深刻である。北海道もそのように聞いておりますし、またそれぞれの地域では、例えば東京では山谷地区の対策であるとか、それから大阪でもあいりん地区があったり、そのほかでもそういうふうな課題があるわけです。そういう地域に特性のある雇用問題というのは、やはりそれぞれ地方も一生懸命やって取り組んでおるわけなんですけれども、それを全部中央に移管をして、それでうまく地方の特性を生かした労働行政をやっていけるのかどうか。それらについてひとつ大臣のお考えをお聞かせいただきたい。

 

○伊吹国務大臣 職業安定行政につきましては、先生の方が労働行政には通暁しておられるのでよく御存じだと思いますが、憲法の二十七条ですか、国民はすべて勤労の権利と義務を有しているわけでありまして、そのためにはやはり、国民すべての共通の権利は守らねばならない。その部分は、国が統一的にしっかりと義務を負ってやる。そして同時に、御承知のように職業安定業務というのは雇用保険と裏腹の仕事になっている部分が非常に多うございます。雇用保険の保険料率というのも、例えば、産業が集積してたくさんいるからそこは安い率でいいとか、あるいは、失礼でございますが、過疎地域は人が少ないからそこを維持していくためには保険料率を高くするとかいう筋合いのものではないと私は思うのです。したがって、そこの基本的なところは国で預からせていただきたい。

 しかし、同時に、今先生がおっしゃったような地方の特殊事情がたくさんございます。そこは生き生きと、地方の御判断で、単費でおやりいただくか、あるいは、必要があれば国が持っている財源で補助をさせていただくということもあってもいいし、それから職業安定業務の中の一部は、これは民間にどんどんやっていただいていいのであって、警察が国民の安全を守ると同時にガードマンという仕事が民業で存在するというのと同じような仕組みであってもいいと私は思うのです。

 基本的な国民の権利にかかわることだけは、どんな自由化があっても、やはり国家の義務だと私は思っております。

 

○鍵田委員 国の責任でやるということはもちろん間違いないわけでありますけれども、実際の仕事につきましては、各都道府県がお互い連携をとりながら、またその地方の特色を生かした行政をやっていくということは可能なのではないかというふうに思っておるわけです。現実に今まで機関委任事務として地方でそれをやっておったわけでありますから。

 今後、そういうことで例えば一元化をしてやっていくとしましても、それぞれ地方の意見をどのように吸い上げようとしているのか。そしてまた、吸い上げたにしても、地方で行政をやることは間違いないわけですから、その場合に、どのような地方における労働省の出先機関をつくろうというイメージを持っておられるのか、その辺についてお答えいただきたい。

 

○伊吹国務大臣 私は、基本的に自由主義をたっとんでいる考えでございますので、地方の自主的な判断、地方のお考えで事業をなさるということについてはむしろ非常に積極的であります。基本的な部分以外は地方にお願いした方が私は結構かと思っております。

 ただ、労働行政ということだけに着目をすれば、これはいろいろな役所の立て方、地方分権の地方の組織のつくり方があると思いますけれども、一方で財源が非常に窮屈になる、国民負担を軽減しなければならない、そしてまた時代の要請にあって効率的なお仕事を国民に提供しなければならないということはございます。国がやります仕事については、現在、労働省だけでも基準局と女性少年室と都道府県の職安課と三つございますが、これは私は、やはり都道府県単位で一つにすべきだ、そのもとに労働基準監督署と公共職業安定所をできるだけ効率的に配分をしていくという形、それから地方の自主性を大いに尊重して、おやりになりたいお仕事については国も情報を提供し、地方のお助けもしていく、こういうことじゃないかと思っております。

 いずれにしろ、本法のお許しをいただければ、本法に沿って、今先生の御意見も参考にしながら、設置法の中で検討させていただきたいと思っております。

 

○鍵田委員 やはりそれぞれの地方の声を吸収する、そういうシステムを考えていただいて、それでそういう地方の特性というものを生かしながら行政をぜひとも行っていただきたい、こういうことをお願いしておきたいと思います。

 それで、この法案の第二十五条に労働福祉省、仮称のようでありますが、この編成方針が示されておるわけであります。少子・高齢化に対応した労働政策、それから社会保障政策の統合とか連携の強化ということが重要であるというふうになっておるわけでありますが、二〇〇一年から年金の支給開始年齢を六十一歳とするということがもう既に決められておるわけですね。そして、三年ごとに一歳ずつ引き上げていくということであります。

 それでは今の雇用の状況はどうかといいますと、ようやく今六十歳定年が定着をしたというような状況でございまして、六十一歳以降の高齢者雇用について何ら示されておらない。そういう状況の中でこの二つの省が合併するということになるわけでありますけれども、これらの高齢者雇用の問題をどのようにしていくのかというふうなことと年金の受給開始年齢とうまくマッチングさせていく、そういうことについてどのようなお考えを持っているのか。これは厚生大臣にも、両方にお聞きしたいなというふうに思いますので、両方の大臣からお願いいたします。