150-衆-労働委員会-2号 平成12年11月15日

 

平成十二年十一月十五日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 大石 正光君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君  理事 宮腰 光寛君 理事 柳本 卓治君

   理事 鍵田 節哉君 理事 五島 正規君  理事 河上 覃雄君 理事 塩田  晋君

      青山  丘君    甘利  明君  臼井日出男君    梶山 弘志君

      瓦   力君    木村 太郎君  倉田 雅年君    小泉 龍司君

      田村 憲久君    竹下  亘君  根本  匠君    宮澤 洋一君

      森  英介君    吉田 幸弘君  大島  敦君    加藤 公一君

      釘宮  磐君    小林 憲司君  城島 正光君    伴野  豊君

      坂口  力君    大幡 基夫君  大森  猛君    中林よし子君

      金子 哲夫君    金子 恭之君

    …………………………………

   労働大臣         吉川 芳男君

   労働政務次官       釜本 邦茂君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  町田 幸雄君

   (厚生大臣官房統計情報部長)           金子  洋君

   (社会保険庁次長)    高尾 佳巳君

   (労働省労働基準局長)  野寺 康幸君

   (労働省職業安定局長)  渡邊  信君

   (労働省職業能力開発局長 )            日比  徹君

   (自治省行政局選挙部長) 片木  淳君

   労働委員会専門員     渡辺 貞好君

    ―――――――――――――

    

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)(参議院送付)

 

    午前十時開議

     ――――◇―――――

 

○河上委員 労災保険の審議に入りましたが、きょうは、初めに労災のお話を少し伺うとともに、後ほど、やや法律から外れますが、雇用保険のいわゆるあぶれ手当と言われるものに対する事件の概要についてちょっと御質問をさせていただきたいと思っております。

  

○河上委員 冒頭お話しいたしましたが、雇用保険制度の中におきます日雇労働求職者給付金の不正受給ということについて、何問か質問をさせていただきます。

 実は、本年の九月九日に、「「アブレ手当」詐取容疑 雇用装い不正受給」、暴力団の幹部を初め日雇い労働者十人が逮捕されるという事件が神奈川県内でありました。

 これの概要を申し上げますと、現行の雇用保険制度におきまして、日雇い労働者は、働いた日について日雇労働被保険者手帳に印紙を貼付いたしまして、その貼付された枚数に応じて、失業した場合、求職者給付が支給される、こういう仕組みになっております。

 当委員会におきましても、過日、あいりん地区を視察して、早朝から、そういう実務まで含めて見たわけで、当事者の職員の皆さん方も大変な環境の中で一生懸命頑張っているということはよく認識をいたしております。むしろ懸命に頑張っている姿に感服もいたしているわけでございますが、大変残念でございますが、この仕組みを悪用いたしまして不正に給付金を搾取した事件というものがありました。

 具体的に申し上げますと、横浜の公共職業安定所港労働出張所におきまして、暴力団関係者が関与して、不正に印紙を購入するとともに労働者を就労させたと偽りまして、事業者並びに日雇い労働者十数名が詐欺ということによって逮捕をされたわけでございます。

 日雇労働求職者給付金をそういう意味で不正に受給した事件でございまして、これは労働省としても多分認識をしておると思いますが、改めて、この事件を通じて、この制度、仕組みの問題の所在というものがどこにあったのか、労働省の見解、認識をお伺いしたいと思います。

 

○渡邊政府参考人 雇用保険制度の日雇い保険に関する不正適用の不正受給の問題についての御質問でございます。

 ただいま委員御指摘になりました横浜公共職業安定所の港労働出張所におきまして、御指摘のような不正受給事件が発生をいたしました。この事件は、架空の事業所を暴力団関係者が設立いたしまして、そこで雇用保険の印紙を大量に購入して、これを他の暴力団関係者等を通じて実際には就労していない労働者に販売をし、その者が日雇労働求職者給付金を不正受給したという事件でございます。大変残念な事件であるというふうに私ども思っております。

 今回のこの事件でございますけれども、まず、架空の事業所を茨城で設置したというところについて、その事業所設置の届け出が認められてしまった。本来、架空であるということを確認しなければいけなかったわけですが、事業所の設置届を認めてしまったということがまず第一点。

 それから第二点ですけれども、不正に結びつきやすい大量の雇用保険印紙の購入について十分なチェックができなかったことでございます。この事業主と申しますのは、昨年の九月から十二月にかけまして、茨城県内及び東京都の郵便局におきまして五千八百枚の印紙を購入しておったわけで、非常に大量の印紙を購入しておりました。

 それに続きまして、実際には就労していない者の手帳に不正に貼付をされました雇用保険印紙を、この受給資格の決定時、保険を払いますときに発見できなかった、こういったような問題がそれぞれ重なりまして、結果的に不正受給につながった大変残念な事件であるというふうに認識をしております。

 

○河上委員 今御説明ございましたが、現在、安定所に届け出られた事業主があらかじめ印紙を購入いたしまして、労働者が就労し賃金を支払った場合に手帳に印紙を貼付する、こういうシステムであるわけでございます。

 問題の所在についてお伺いいたしました。確かに、現行システムの中ではそうした方向性で一つは把握する必要があるだろう、こう思いますが、いずれにいたしましても、雇用保険は労使折半の拠出による保険制度でございますし、保険制度という観点からも、こうした不正がまかり通るようなことがあっては絶対にならない。事件が表に発覚するのも、まだまだ一部のように聞こえました。潜っている部分ではかなりこうした不正受給があるのではないのか、私はこうも認識をいたしております。

 そこで、不正受給を防止する観点から、この事件、この問題を通じまして、労働省としてはどういう改善策を現在お考えになられているか、この改善策についてお答えください。

 

○渡邊政府参考人 日雇い保険の不正受給の状況でありますけれども、平成十年度で百八十二件摘発をされ、平成十一年度では二百三十六件の摘発ということになっておりまして、なかなかこういった事件が後を絶たないところから見ますと、この摘発された件数のほかにもまだまだ隠されている可能性もあるのではないかというふうに考えておりまして、この厳正な適用ということについては常々意を用いているところであります。

 現行の仕組みを少し申し上げますと、まず、先ほども申し上げましたが、事業所の設置届がなされた段階で、これが実際に所在する、存在するということをしっかり確認がありますし、その確認は常々行っているところではございます。

 それから、先ほども申し上げましたように、印紙は郵便局において事業主が購入するわけですが、事業主には、一事業主一冊ということで雇用保険の印紙購入通帳というものを渡しておりまして、事業主は必ずこれを持って郵便局に参りまして購入をする。郵便局はその購入した枚数を記入いたしまして、その事業所を所轄する地方労働局にこれを通知しておるわけであります。したがって、幾つかの郵便局で分けて購入いたしましても、名寄せができる仕組みにはなっております。

 さらに、これは、一カ月ごとに名寄せをして、その事業所が何枚購入したかということを確認できます。それとまた別に、事業主からは一カ月ごとに何枚購入したのだという納入届を出させておりますので、郵便局から来た数字と事業主が自分で申告した数字とが大きく食い違っているというふうな場合にはチェックをするということになっているわけであります。

 また、就労していないのにこの保険をもらう労働者について、よその場所で就労していたのだというような通知が安定所になされることがしばしばあります。そういうことがあった場合には、直ちに事業主から就労証明書を出させるということもしているわけであります。

 またさらに、大量の印紙を購入した事実がわかりましたときには、全国の労働局にこれを通知いたしまして、労働局から管内の安定所にこれについて注意をするということもしているわけであります。

 こういった仕組みで何重にもチェックをかけているところではありますが、実際にはこの網をくぐって不正が行われるということでございます。私どもといたしましては、現行の制度の中では、まず事業所の実在についてのチェックを確実に行うということ、さらに、先ほど申しました印紙の購入、例えば非常に大量の印紙を分散して購入しているというケースは危ないケースであるわけですから、そこのところの確認をさらに一層しっかりと行うということ、さらに、印紙購入と印紙の納付状況に差があります場合、事業所調査を実際に行うこと、こういったことを従来からもやっておるわけでありますが、さらに徹底してこれを厳格に行う、こういったことによって不正受給の防止に努めるということは大変大事なことであろうかというふうに思います。

 なお、この購入通帳は、現在では約九千社に発行しておりますし、保険の適用になる方は、年間四万七千人ぐらいの方がこの被保険者手帳を持っておられるわけでありまして、この制度自体は、日雇い労働者の生活の安定にとって大変重要な制度であります。その制度の運用について、御指摘のような件がないように、厳正な運用にさらに努める必要があろうかというふうに考えております。

 

○河上委員 現行制度の仕組みの中で、改善点を局長から御説明いただきました。これも順次進めていただきたいわけですが、さらに詰めて申し上げますと、各職業安定所間の連携というものをしっかりやってください。しかし、それが十日も十五日もたちますと、その間にまた不正受給というものが発生するような、今回の事例を通じても問題点があります。スピードが要求される場合があるので、時間の点も考慮に入れて、連携をしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 印紙購入の場合でも、日ごとじゃわからないわけでございまして、何人かがグループをつくってその手帳を集めてやれば、これはできるわけでございまして、ある意味では名寄せ等も考えてしっかりやらなくちゃならないだろうと思いますし、現在七時から十時ですか、窓口の申請であぶれ手当をいただく、その時間のシステムもこれでいいのかどうか、これらも検討していただきたいと思います。また、毎日支給が果たしていいのかどうか、その点についてもう一遍考えていただきたいこと、これは要請をいたしておきます。

 いずれにいたしましても、昭和二十二年に創設されました失業保険法の第一次改正において、日雇い失業保険制度というものが創設をされまして、支給方法は、手帳に貼付された印紙を確認して支給する。この当時から現在の方法と全く変わっていないわけでございまして、今、IT、ITと言われている時代の中で、手法としては極めて古い手法の一つであろう、私はこう思います。

 その意味で、何十年どころか古典に属するような手法の古さを持っておるわけでございますから、手帳に印紙を貼付するという方法を少し大胆に一歩進めまして、情報化など技術が進歩しているわけでございますから、不正受給の防止の観点からも、例えばICカードを利用する、活用する、こういう方法に切りかえてこれらの問題もクリアするような考え方が労働省においてあるのかないのか、これは御見解を聞かせていただいて、質問を終わります。

 

○渡邊政府参考人 この日雇い雇用保険の制度につきましては、従来から、例えば被保険者手帳には本人の写真を貼付していただきまして本人確認をするとか、あるいは、日雇い労働者ですから作業場を転々とすることがあるというふうなことで、その働いた作業場において事業主から印紙を貼付してもらう、これは通算をして日数は確認できるというふうなことで、労使それぞれにとって現在考えられる最も都合のいい制度ではないかということで、今おっしゃいましたような歴史を持って今日に至っているわけであります。

 ただ、そういった中で、現実に不正受給の問題が発生するということは大変遺憾なことだと思っておりまして、私ども、例えば先ほど申しました印紙購入、これは名寄せが実際にできるわけですから、そこのところの名寄せを厳格にチェックするというふうな改善については早速取りかかる、従来からやっておるわけでありますが、さらに厳格に取りかかる必要があろうかというふうに思っております。

 今御指摘のICカードの利用につきまして、こういったハイテクの時代でありますから、従来のような手帳をもって毎日毎日これに判こを押してもらうというようなやり方がいいのかどうか、そういったことも含めて慎重に検討する必要があろうかと思いますが、事業場にとって、ICカードの利用についての機械の設置というふうなことには大変大きな経費の問題もあろうかと思います。

 ただ、いろいろと御指摘がございますので、私ども、そういったことも含めまして、この不正受給の防止という観点からいろいろと慎重にこれから検討させていただきたいというふうに思います。

 

○河上委員 終わります。ありがとうございました。