51-参-社会労働委員会-4号 昭和41年02月03日

 

昭和四十一年二月三日(木曜日)

   午前十一時四十五分開会

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  出席者は左のとおり。

    委員長         阿部 竹松君

    理 事

                鹿島 俊雄君  丸茂 重貞君   佐野 芳雄君

                藤田藤太郎君

    委 員

                川野 三暁君  黒木 利克君   紅露 みつ君

                佐藤 芳男君  土屋 義彦君   山本  杉君

                横山 フク君  大橋 和孝君   亀田 得治君

                森  勝治君  山崎  昇君   小平 芳平君

   政府委員

       法務省刑事局長  津田  實君

       労働政務次官   天野 光晴君

       労働省労政局長  三治 重信君

   事務局側

       常任委員会専門員        中原 武夫君

   説明員

       警察庁警備局参

       事官       鈴木 光一君

   参考人

       新東洋硝子株式会社取締役社長  大久保治一君

       新東洋硝子株式会社取締役大阪工場長      赤城  実君

       新東洋硝子株式会社取締役総務部長兼社長室長  竹村 重敏君

       新東洋硝子労働組合組合長    滝本 三郎君

       全日本硝子製壜労働組合書記長  竹元岩太郎君

       日本労働組合総評議会大阪地方評議会事務局長  帖佐 義行君

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  本日の会議に付した案件

○理事の補欠互選の件

○労働問題に関する調査

 (不当労働行為に関する件)

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○委員長(阿部竹松君) 労働問題に関する調査を議題とし、不当労働行為に関する件について調査を行ないます。

 本日は、本件調査のため、お手元に配付してありますように、六名の参考人の方々をお招きしておりますので、参考人の方々からそれぞれの御意見を拝聴してまいりたいと存じます。

 参考人の皆さん方に申し上げます。

 本日は、御多忙中にもかかわらず、本委員会のため御出席くださいまして、まことにありがとうございました。

 本日の議事の進め方といたしましては、新東洋硝子株式会社大阪工場に発生しております労働争議に関して、まことに恐縮でございますが、労使双方から一応お一人ずつ十五分程度それぞれの立場から御意見を開陳していただきたいと存じます。なお、必要があれば、他の参考人の方々からも補足的に御意見を開陳していただきます。御陳述が全部終わりましたあとで、各委員からの御質疑に対してお答えをいただきたく存じますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、順次参考人の方々から御意見を拝聴いたします。

 まず、竹村参考人にお願いいたします。

 

○参考人(竹村重敏君) 竹村でございます。

 まず、最初に、今度の争議がなぜ起こったかということから始めたいというふうに考えます。

 私どもの会社は、川崎工場と大阪工場とあるわけです。それで、川崎工場は、びんだけをつくっておりますが、大阪工場は、いわゆるコップとか、あるいはさら小ばちという食器とびんと、こういう二とおりのものをつくっているわけなんですが、規模といたしましては、大体同じ程度の規模なんです。こういうふうな二つの工場がありまして、川崎は、ここ数年来、非常な利益をあげておるのですが、大阪は非常な赤字である。で、特に去年の四月から九月期というものは一番悪くて、一億二千四百万円の赤字を出した。こういうことでは非常にまずい、何らかの形でもって再建をしなければいけないんじゃないか。それで、大阪工場の再建が、ひいては会社の再建になるということから、どこに大阪工場の赤字の原因があるかということを検討いたしまして、多少のあれはありますが、結局設備過剰だということから、能力の小さい二号がまを休止する、こういうことを打ち出したわけです。当然二号がまを休止すれば人間は余る、こういうことになるわけですが、この人間が余っても、これは自然退職を待ってこれを吸収していこう、余剰人員は吸収していこう、こういう考え方に立ちまして、いわゆる一連の再建案、二号がま休止、それから組織の変更、あるいは職制の変更、こういうような一連の再建案を出しまして、余剰人員は自然退職をもって吸収すると、こういうような会社の提案をいたしたわけです。これが八月の中旬でございますが、そういうような提案に対しまして、組合は、それが一方的であるということでそのことに応ぜず、まあ単なる一方的であるということからストライキを打ってきた。ここに至りまして、この上部団体である全硝労という組合は、三十六年にできましてからいままでの四年間のうちに、延べ千六百時間のストを打ってきたような組合だったわけです。そういうことから、いわゆる資本筋、あるいは金融筋から、こういうような組合をかかえている会社には援助ができないというようなことになりまして、それではこれはそういう自然退職を待つというような長期的な再建ではだめだ、これはもういわゆる即効的な再建を考えなければならないということで、十一月の二日に三カ月の帰休制、これは指名帰休制なんですが、三カ月が終わったらやめていただくという帰休制なんですが、これを出したわけです。ところが、それをも理解していただけないということから、これを即時指名解雇ということに切りかえて争議はいままで続いているわけです。その間、いろいろロックのとき問題になりました暴力というような問題が起きたのですが、これはロックは北川運輸というところに依頼したわけです。たまたまああいうふうな傷害事件が起きたということは、会社としては非常に残念に思っておるのですが、この点に関しては、当時の組合のいわゆるピケの張り方、あるいは軍事教練に類するような、いわゆる暴徒化しておるというような点から北川運輸がああいうような手段をとったんじゃないかというように考えております。以上で終わります。

 

○委員長(阿部竹松君) ありがとうございました。

 次に、滝本参考人にお願いいたします。

 

○参考人(滝本三郎君) 滝本でございます。

 争議の背景から、そして暴力事件、警察の介入がございまして、現在団交中でございますけれども、一連の経過についてこちらの意見を申し述べたいと思います。

 先ほど会社側から言われましたごとく、新東洋硝子は東洋製缶の傍系会社で、大阪、川崎に工場を有し、ガラスびん、ガラス食器を製造販売する資本金三億円、従業員約二千名を擁し、業界で第三位に位置づけられる大手メーカーであります。

 ここ十年来の新東洋硝子の経営は、傍系会社特有の経営責任体制の不明瞭な、世に言う放漫経営そのものであったと言わねばなりません。製びん業界が活況を呈し、株式市況でも脚光をあびた三十五、六年ごろも、新東洋だけは無配を続け、さらに労働条件、すなわち、賃金においてすら、大手メーカー上位と比較すれば一〇%以下の下位にあり、中小メーカーに位置すること等々、これらを見ても、経営の社会的責任がいかに欠如していたかがわかると思います。

 製びん業界は、昭和三十八年以降停滞期に入り、各企業が体質改善と経営姿勢の確立を迫られ、これを実行しつつある時期にも、新東洋だけは旧態依然たる経営姿勢を続けてきたのであります。

 一方、新東洋硝子労働組合は、昭和三十五年以降、総評全日本硝子製壜労働組合に所属し、他企業製びん労働者と統一行動を行ない、片や製びん業界の過当競争をチェックするとともに、一方においては企業の体質改善なり経営姿勢の確立は、組合としても当然望み、機会あるごとに経営建て直しを進言してきたところであります。今日の新東洋争議の背景とも言うべきものの一端を要約いたして申し述べたわけでございます。

 次に、争議の発端となった最近の動きについて述べてみたいと存じます。

 昭和四十年に至りまして、以上申し上げましたような経営の刷新と体質改善を行なうために、現在の大久保社長以下数名の重役陣が東洋製缶から乗り込んできたのでありますが、ここで行なわれたことは、不況期で、しかも経営危機のもとでとられるべき手段であったとは考えられないのであります。会社側は、経常不振が大阪工場の生産性低下にあり、その原因はひとえに組合の非協力にあるときめつけて、組合にあらゆる攻撃をかけてきました。八月には、だれの目にもわかるような、管理機構を肥大、膨張させ、雨工場で六十数名の職制を増加させるという機構改革や、無計画な配置転換など、不合理きわまる合理化案を組合に提案し、一方、大阪工場では数々の不当労働行為を行ない、糾合に挑発的態度で臨んできたのであります。この不当労働行為は、現在大阪地労委で審理中であります。組合は、まず経営の姿勢を正し、人心を一新して、数々の不合理を是正していくことが経営の建て直しの第一歩であり、いたずらに従業員に犠牲をしいることは得策でないと意見を述べてきたのでありますが、会社はこの組合の主張を理解しようとせず、これらはすべて経営権の問題であるとして、これを一蹴し、十月十五日にこの配置転換、機構改革を強行し、さらに追い打ちをかけるかのごとく、十一月二日には百三十名の期限付き解雇、すなわち、指名帰休制を提案してきたのであります。これ以降は上部団体である全硝労が三権を握り、会社側と交渉してきたのでありますが、全硝労も、企業再建は、組合員に犠牲をしい、組合の非をなじるだけでなく、機構、生産、販売、下請関係、資材購入等についての抜本的対策を講じ、労使が忌憚のない意見を開陳して、協力していくことこそ重要であると、多くの例をあげて意見を述べ、問題を平和的に解決すべく、鋭意努力を続けたのでありますが、会社はこの意見にも耳をかさず、ついに十一月十七日には、一方的に百三十名の即日指名解雇の発表を行なったのであります。

 第三番目には、簡単な経過と、その中で二、三の問題について述べたいと思います。

 私たち組合は会社の挑戦を受け、労働者の生活と権利を守る労働組合としての立場から、大阪地裁に解雇対象者の地位保全仮処分申請を行なうとともに、指名解雇撤回をはじめ、その他数項目の要求を掲げて実力行使を決行し、今日に至っております。この間に暴力事件、警察の不当介入などありましたが、これは後に述べたいと思います。

 一月十二日に至り、会社側より問題解決のために団体交渉を開催したいとの申し入れがあり、十七日以降、今日まで交渉を続けてまいりました。特に会社側の要望にこたえて交渉場所を東京に移した二十八日以降は、組合は早期解決のために総評岩井事務局長までわずらわし、あらゆる努力を傾注してまいりましたが、会社側の態度は二転、三転して、団交再開後半月を経過した今日に至っても解決するに至っておりません。

 以上の経過でもよくわかりますように、その責任がどこにあるのかわからない。会社側の優柔不断、かつ、無責任な態度がこの争議を長期化さしている最大の原因であると言わなければなりませんし、今次争議のすべてが、この会社の内部の不統一によると言っても過言ではありません。すでに御承知のように、十二月十五日ごろ、会社側のテコ入れにより、大阪工場の二百五十名で第二組合が結成されましたが、この第二組合は、今日に至ってもその数は二百五十名前後を低迷しております。世間一般の労働争議の例を見ますと、争議中に会社の息がかかってできた第二組合は、日を経ずして増加する傾向でありますが、ここにも新東洋硝子争議の特殊性がありますし、新東洋硝子の経営陣のやり方がいかに大多数の従業員の反感を買っているか、これが端的に物語っていると考えます。

  十二月十三日の暴力事件について申し上げます。十二月十三日午後十一時三十分ごろ、黄色のヤッケ、白ヘルメットを着用した下請の北川運輸株式会社、辰巳加工株式会社の従業員をはじめ、釜ケ崎周辺で日当二千円ぐらいで雇った労務者、及び、すでに新聞で報道の亀井組その他暴力団員等約三百名が、手に手にカシの棒、鉄棒、スコップ、モンキー、シノ、バール、ナイフ等の凶器を持ってトラック四台で大阪工場三号門に乗りつけ、大阪工場の管理職が直接指揮をとり、無防備、無抵抗の組合員にその凶器を振り回して襲いかかり、組合員の頭上、顔面、手足など、ところきらわず振り回し、暴行の限りを尽くし、あまつさえ、組合事務所にまで乱入して破壊行為をほしいままにし、組合員を工場外に押し出し、十二時過ぎ大阪工場川崎工場企画課長が携帯マイクでロックアウトを宣言し、組合が正式に通告を受けたのはその後のことであります。

 この暴力行為で負傷した組合員、オルグの数は、重傷を含め、七十四名にのぼり、現在に至っても入院中の者四名、自宅療養中の者六名で、ほとんどが頭蓋骨骨折、足、腕、腰等の骨折によるものであります。このロックアウトの違法性はもとより、今日の法治国家においてこのような暴力行為は絶対に許せない鬼畜にも劣る行為であると言わざるを得ません。今日まで暴力団員等約三十数名が逮捕されています。しかるに、その直接責任者の責任追及がなされていないことは、まことに遺憾であります。

 十二月二十七日には、すでに十二月二十六日大阪地方労働委員会の労使休戦勧告が出されていたにもかかわらず、福島警察署は会社側と一体となり、約八百名の機動隊を動員して、大阪工場三号門にピケッティング中の組合員に暴力を働いてゴボウ抜きにし、第二組合員百九十名を強行就労させるという暴挙を行ないました。第二組合が隊伍を組んで三号門に到着したのは午前十時ごろ、ピケ中の組合員に警察官が襲いかかったのは十一時ごろであり、この問わずか一時間、組合は説得の時間すら与えられなかったのです。しかも、警察官は終始第二組合を誘導し、明らかに計画的なものであったのであります。この警察官の暴力行為により負傷した組合員は二十六名にのぼり、組合は大阪府を相手取って国家賠償請求を行なっているところでありますが 労働争議にこのような警察の不当介入が許されるとしたら、憲法二十八条で保証されている労働者の団結権、団体行動権は空文となり、第二組合ができたら、労働争議中の労働者の団結権、団体行動権は抹殺され、労働争議は終わりだというもので、これは職権乱用もはなはだしいと言わなければなりませんし、不当介入であると断ぜざるを得ません。

 今日までのあらゆる争議を見ても、会社側が妨害排除の仮処分申請を行ない、この仮処分決定がなされた後、ピケを排除するために警官の導入がしばしば行なわれた事例がありますが、このような一方的介入は前代未聞であります。ましてや、当日の同時刻に大阪地裁で会社側の仮処分申請の第一回審尋が行なわれており、その前曰に大阪地労委松山会長から年末年始の休戦が提案されていた直後のことだけに、言語道断もはなはだしいと言わなければなりません。

 以上、要を得ないものでありますが、今次新東洋硝子争議の経過、若干の問題について簡単に申しました。舌足らずの点がございましたろうと思いますが、御質問によって補足したい、かように思います。

 

○委員長(阿部竹松君) どうもありがとうございました。劈頭申し上げましたとおり、双方の代表の参考意見が終わりましたので、これから直ちに各委員のお尋ねということになりますが、その前に、補足的に四名の参考人の方で御発言があれば発言していただきます。

 

○参考人(帖佐義行君) 補足になりますが、いま新東洋の滝本君が申しましたけれども、会社の再建について組合が進言をしたということがございましたが、私が争議が起こってから大阪総評の責任者としてこの争議を見てきて感じましたことは、組合員が経営者に対する経営上についての不信を非常に持っているということであります。たとえば会社の代表の方が、人が余っているから首切らざるを得なかった、こういうふうに申しておりますけれども、その年の八月には新しい人を募集した、あるいは会社の重役の間に内紛がある、これではうちの会社はいかぬと、労働組合員というより、むしろ会社の従業員として会社のことを心配をして、こういうふうな経営上に対する組合員の不信、経営者に対する不信ということが非常にあるように思いました。これは私は労働組合の側からするというだけでなしに、経営者が経営者としての責任――もし私が株主でもありましたならば、その責任を株主として追及することになるというふうに思うのでありますけれども、一人の社会人として考えてみました場合でも、今日の、たとえば山陽特殊製鋼だとか、あるいは山一だとか、経営者の経営者としてのモラルやそんなことが追及されるときに、私は、やはり新東洋硝子の経営者の皆さん方は、対労働者、労働組合というだけではなしに、経営者としてこれはいいのだろうかということを考えざるを得なかったわけです。そして、そのような経営上の経営者としての責任が労働者の側に転嫁をされる、百三十人の首切りで何とかやっていこう、それでは経営は立ち直るものではないでしょう。原因がそこにはないのでございますから、幾ら労働者を首切ってみたところで経営が立ち直るものでもない。そういうような意味で、私は、労働者として、労働組合として追及をすべき問題ではないかもしれませんけれども、しかし、そのことが労働者にしわ寄せをされるということになるとしますならば追及せざるを得ないわけで、その点は、今日特に私どものいわゆる革新の側の議員さんはよくわかっていただけると思いますけれども、しかし、経営の側に理解を持っておられる自民党の皆さん方にも、ぜひこの点はひとつ御理解を願っておきたい、こういうふうに私は思うのです。

  それから、もう一つは、いま滝本君が申しました十二月の十三日の事件でございますが、これは四十何名かが逮捕され、一人は全国指名をされてまだ行くえが追及中であります。こういうようなことはおそらく日本のどこにもないことだろうというふうに私は思うわけです。私は終戦後からずっと大阪で労働運動をやっており、大阪総評が結成以来事務局長をやっており、何百となく争議をやってきました。現在でも年越しの争議を二十も三十もかかえておるのです。ところが、こういうように経営者が暴力団を使って組合員に襲いかかるとか、そうして、経営者が刑事責任を追及をされ、全国指名されるといったような、そういう事件はないということであります。ここにも経営者の労働組合に対する、あるいは労務管理に対する非常に間違った前時代的な感覚があるのじゃないかということを私は思わざるを得ません。経営者にも経営者の権利として、組合に対抗する手段、ストライキに対抗する手段というものが当然にあるわけです。ロックアウトもあれば、もし不当なピケが張られているとすれば、妨害排除の仮処分をするとか、法的な手続は幾らでもあるわけです。また、労働組合と経営者の間のそういうようなルールは、いろいろな判例なり事例なりがたくさんあるわけで、そういう点で、私は、今日の社会常識から申しましても、今日行なわれている労使のルールから考えてみましても、これはきわめて非常識であり、そして同時に、それは全く法秩序、法律、そういうようなものを無視したものだというように思わざるを得ないのであります。今日このようなことが経営者の側に行なわれているということは、日本の経営者の私は恥だと思います。そして、このような経営者がおるということは、今日の支配の側に立っている人たちのこれは大きな恥だとして考えざるを得ないでありましょう。日本では労働争議があったら暴力団が出てけがをさせて、そして全国指名をされる。きのう参議院本会議ではピストル事件がございましたそうでございますが、そのような暴力行為が行なわれるといったようなことは、一体それはどういうことでございますか。日本の恥ではないか、私はそう思わざるを得ません。これについては、いま大阪の裁判所が追及をしております。ただ、私は、この争議を終末する団交において、そしてその団交が成功することを願ってやまないのでありますけれども、この問類について労使が双方とも話し合いをしているときに、それは裁判――いま司直の決定があってからと、こういうように会社側は言っておるそうでありますけれども、私は大阪総評の責任者として、それだけでは済まない問題があるように思っております。と申しますのは、あのときに負傷をしましたのは全硝労や新東洋の諸君だけではないのであります。私の事務所の書記も三名も四名もけがをしております。市の職員組合、府の職員組合の諸君もけがをしておるのであります。こういうような者に対する問題を一体どういうように会社はお考えであるのか、私は存じませんけれども、私は団交しているわけではありませんから、この機会にひとつ申し上げておきたいというふうに思っております。少なくとも、私どもが今後の日本の経済や労使や、そういうようなことを考えていきます場合に、このような考え方で労働組合、労働争議に対するということがあるとしますならば、決してそれはいいことにはならないということを私はこの機会に申し上げておきます。

 もう一つは、大阪府警の不当な介入弾圧であります。これは先ほど滝本君が申しましたように、十二月二十七日の事件であります。これは労働組合がピケを張っておるときに大阪府の機動隊が来て、これをば実力で排除をして第二組合を会社構内に入れたという事件であります。ところが、この問題につきましては、そのピケが合法であるか非合法であるかということについて、会社側は裁判所にこの排除の仮処分の申請をしておりました。そして裁判所では、排除の決定をすべきかどうかということについて目下審問中でありましたわけであります。二回も三回も審問があって、裁判所はなかなか排除の決定を下しません。この十二月の二十七日も、十時からそれぞれの参考人を呼んで審問をしようとしておるときに、大阪の府警はピケを張っているピケ隊をば実力で排除をする、けがをさせるということをやったのであります。私は、福島署の署長や府警の本部長に行って申しましたのでありますが、大阪の府警は、かつて大きなミスをやっておるじゃないか。それはもう十年にも七、八年にもなりますかわかりませんが、私どもが千土地の争議のときにピケを張っていた。ところが、大阪の府警が実力をもってこのピケ隊を排除して第二組合員を中に入れた。あとで裁判所が、このような不当な介入弾圧はけしからぬという決定をした。これで大阪府警は大きなミスをしたことがある。私はその例をとったのであります。あなたたちはこのような経験があるではないか、われわれはそれを確認したではないか、それにもかかわらず、あなた方は、しかもいま裁判所が審問をやっているじゃないか、その決定がないのになぜそういうことをやるのだということで詰め寄りましたが、まことに私はけしからぬことだというふうに思っております。府警の理由はこういうことでした。そのピケが合法であるか非合法であるかについての決定は裁判所がいたしましょう。だからそのことについてわれわれはどうこ言っているのではない。だが、第二組合が第一組合とけんかになったらいかぬから、けが人が出るから、そのけが人をなくするために自分たちはピケを排除するのだ、こういうことを言うのです。けが人はどうして起こるのか、第二組合が押しかけてくるから起こるのではありませんか。ピケを張っていることが合法か非合法かについては裁判所がいま審問をしている。そこでけんかが起こるというのは、第二組合が押しかけて来るからけんかになる。だから、府警は当然第二組合を排除すべきなんです。私どもはそういうことを極力申しました。これについても私たちは国家賠償を訴えておりますし、裁判所で争いますから、いずれ出るというふうに思いますけれども、このような不当な、前例のないことをば大阪府警はやっております。これも私はけしからぬことだというふうに思っております。私は、今日、労使の秩序だとか日本の産業の再建だとかいろいろ言われておりますときに、このような法を無視したり常識を無視したり、労働者の生活に一片の愛情も持たないような労働の行政がなされるということは、決してこれは社会党だとか自民党だとか、労働者とか資本家ということをこえて、決していいことではない、こういうふうに思っております。

 以上であります。

 

○佐野芳雄君 法務省か警察庁、どちらでもけっこうですが、一つお聞きしておきたいと思います。

 いわゆる十二月十三日事件、多数の負傷者を出した日でありますが、この日に約三百人近い暴力団でありますか、あるいはスコップ、あるいはバール、あるいは中にはナイフ、そういう凶器を持参して無抵抗の組合員に襲いかかっている。そうしていま報告を聞きますと、七十四名が負傷している、こういうふうな事態が起こっているんですが、この会社が雇いました三百余名の暴力行為を行ないました者の、あるいはその親方と申しますか、組と申しますか、そういう関係を警察のほうではすでに四十数名を逮捕して調べているようですからわかっていると思うのですが、その組、それから、お調べの結果、大体わかってきていると思うのですが、その組と会社との契約関係、それから、三百余名はそれぞれの組ですか会社か、知りませんが、そういうものに雇われている条件がわかっておれば承知をしておきたいと思うのです。それぞれの組から派遣されましたそういう暴行を行なった者がその組の常用的な雇いの者であるのか、あるいは臨時的な者であるのか、そういう点をひとつ聞きたいと思うのです。会社との契約の関係等、その他につきまして警察庁なり、あるいは法務省のほうでわかっている範囲でけっこうですから、聞かしてもらいたい。

 それから、なお、私はこれもつけ加えてですが、皆さんのほうで大阪府警のほうからの報告に基づいて承知しております内容を聞いた上で、場合によれば、これはあとで相談してですが、大阪府警にも一応出張調査等もしなければならぬのではないかというふうに考えております。問題は非常に重要な、単なる労使問題ではなく、警察が介入し、しかも、いろいろ関係方面において審問をし、調査をしているときにそういうことが行なわれたということについては重要でございますので、その点を法務省並びに警察庁のどちらでもけっこうですが、話してもらいたいと思います。

 

○説明員(鈴木光一君) ただいまのお尋ねの点の、会社側が警備員を雇った経緯につきまして私どものほうで捜査した状況について申し上げたいと思いますが、会社側でかねてロックアウトの手段、方法等につきましていろいろ対策を練っておったようでございますけれども、具体的には会社の梱包部門を下請しております大阪市福島区所在の北川運輸株式会社の北川社長にロックアウトの際の会社の警備を依頼したという形になっているわけでございます。そこで、北川社長がこの依頼を受けまして、従来から面識のある大阪市北区同心町所在の亀井組の会長に警備員を集めるようにさらに依頼したということで、それらのことから、結局私どものほうで把握いたしました警備員の構成につきましては、おおむね大阪市西成区東田町付近の日雇い労務者約百三十名、それから北川運輸株式会社の関係者三十名、それから先ほど申し上げました亀井組の傘下と思われます亀井会、淡路会、共楽会、若櫻会といったような会の会員合計八十名ぐらい、全部合わせますと約二百五十名ぐらいが警備員として雇われまして、十二月の十四日の午前零時ごろを期してロックアウトの実力行使に入ったというふうになっている次第でございます。

 

○佐野芳雄君 いまのお話によりますと、日雇いの労務者を雇ったと、いわゆる正常な労使関係以外に、警備とおっしゃいましたけれども、これは警備に該当するような性格のものではないのだというふうに私たちは思うのですが、警察庁のほうではどういうふうにこれを理解しておりますか。

 それから、いま亀井組その他いろいろ言われましたが、これは一体どういう関係の組ですか。いわゆる正業を持って正当な事業をやっている会社もしくは組であるのか、あるいはそこに雇われた者はいわゆる警備に値するような性格を持っているものであるのかどうか、その点をもう少しはっきりひとつお答えいただきたい。

 

○説明員(鈴木光一君) 警備員という名前でロックアウトの実力行為に会社側としては使ったということになるわけでございまして、その警備員の構成につきましては、私どものほうからとやかく申し上げられないわけでございますが、日雇いの労務者につきましては、これは労務の提供ということでございますので、その労務の提供によって会社側が何に使うかということは私どもの関知すべき問題ではなかろうかと思います。

 それから、亀井組と関連した先ほど申し上げましたいろいろの会につきましては、いわゆる組、いわゆる組員という形でございまして、皆さん方御承知のとおりのことであります。

 

○佐野芳雄君 おっしゃることがはっきりしないのですが、御承知のように、組員ということはいわゆる暴力団ということですか。暴力団として府警のほうでも指定をいたしておる、あるいは監視をしておる、そういうものですか、組とは。

 

○説明員(鈴木光一君) いわゆる暴力団ということばは私どもでは用いておりませんので、いわゆる暴力団という範疇に入るかどうかということにつきましては、直ちにそういうことを私どものほうが言えるという性質のものではございませんので、御了承を願いたいと思います。

 

○佐野芳雄君 非常に心外なお答えを聞くのですけれども、いまやっぱり政府のほうは暴力団の排除のために非常な努力をしておるはずなんです。警察もそういうものに対しては監視をし、あるいはマークしておられるはずなんですが、そういう大阪府警においてマークされておる組ですか、これは。

 

○説明員(鈴木光一君) 私どものほうといたしましては注意しておるいわゆる組員でございます。

 

○佐野芳雄君 そうしますと、これはあとでいろいろお聞きしたいと思いますけれども、いまあなたは警備員とおっしゃいましたけれども、一体それは警備をすることのできるような相手じゃないのですね、初めから何らかの意図をもって、会社の意図に基づいてか意思に基づいてか、いわゆる争議団と申しますか、あるいは会社の好ましくないと見ておるものに対して圧力をかける性格を持ったものであるというふうに理解せざるを得ないのですが、よろしいですか、それで。

 

○説明員(鈴木光一君) ただいま申し上げましたような人たちを警備員と称して雇うことにつきましては、そのおそれが十分あると思います。

 

○佐野芳雄君 そういたしますと、これは会社側のほうにもお聞きしたいのですけれども、先ほど来いろいろ事情を説明されておりまするが、私たちは、いま、今度の労使問題についてすみやかに解決することを希望しておりますが、ただ、問題は、会社はそういうふうなやからを雇い入れて組合を弾圧をする、あるいは警察が知ってか知らずかは別として、そういうふうな不遇の人たちがヤッケを持ち、あるいはスコップを持ち、時にナイフを持ってするというようなことを会社は示唆強要したというふうにとらざるを得ないのですけれども、そういう点について会社の責任は一体どういうふうにお考えになっておるのですか、今日において。

 

○参考人(大久保治一君) ただいま御質問を受けました点につきましてお答え申し上げますが、大阪工場におきましてロックアウトをかけなければならないという状況、並びに、それをやりますときの工場内の組合のあり方、あるいは姿というものを十分御理解願っていないと思います。ロックアウトのかけ方につきましては、争議中には経営者のほうに一応許されております慣例上の行き方でございまして、ロックアウトをかけるということは、われわれは軽率にはやってはいけない、よほどのことがなければかけるべきではないという考え方をしておったわけであります。現にそう考えております。しかしながら、普通一般の常識的な経営の工場というものとガラス工場、特に今回の問題になっております大阪工場の争議中の、ストライキ中の組合員のあり方ということにつきましては、いまだ十分な御説明ができておりませんが、この争議中の状況については、私たちはかって見たことのないような、非常なる先鋭化といいますか、いわゆる青年行動隊といいますか、それを中心といたしまして、全面ストライキ中にどういうことをしておったか、その背景が非常に問題になったのでないかと思います。竹村総務部長が申し上げたとおり、やはりそこに毎日鉄かぶと、あるいはヤッケ、そういったもので構内デモをするとか、隊を組んでするとか、そういったような行動の集積がずいぶん続きました。そういう条件のもとにロックアウトをする、かつ、工場内で全面ストライキの間にかまを管理しておりますのは、かまの火を消さないための保安業務に携わっておりました人間は課長以上の、いわゆる工場の管理職約二十名をもちまして、他の応援を求めずに、あの広い工場の中でストライキ中にかまを守っておったわけです。その人間でもってロックアウトをかけたわけでありますが、そういう背景のもとにやるには、二十名の力では、ロックアウトを宣言いたしましてもその効果がない。やむを得ず最小のやはりいわゆる作業員の手助けを得なければできなかったのだという背景のあることをひとつ御了承願いたいと思います。遺憾ながら、結末におきましては、ただいまのお話のように、まことに社会的に見ますと残念なことになったのでありますが、初めから何もああいうことを予期して、あるいはああいうことを考えてやったわけではない。今後ああいったことは決して好ましいことでもないし、また、社会秩序からいいましてもやるべきでない、かように考えております。

 

○政府委員(津田實君) 現在のこの事件に対する処理の状況でありますが、拘束いたしまして取り調べました者が四十七人であります。そのうち、十五人を現在起訴いたしております。それから、なお、逮捕状が発付されておりますが、現在所在調査中の者が九人あります。そのほか在宅におきまして被疑者として取り調べをされておる者が八十八人ありまして、合計百四十四人に上っております。それで、現在までに起訴されました事実といたしましては、その十五名の者に対しますわけでありますが、この事実は、多数共謀の上、昭和四十年十二月十三日午後十一時ごろ、組合員等の身体等に共同して危害を加える目的で、直径五センチ、長さ一メートルの竹棒二百本の凶器を準備し、大阪市北区所在、株式会社亀井硝子店及びその周辺に集合したという凶器準備集合罪。それから、さらに翌十四日午前零時ごろ、多数共謀の上、本件工場の裏門及び西門付近から乱入し、多数の組合員に対し、たたき殺すぞなどと怒号しながら竹棒などを振りかざして襲いかかり、竹棒などで殴打し、からびん、木片、石等を投げ暴行を加え、もって多数の威力を示し、かつ、数人共同して暴行脅迫を加え、右暴行により組合員西岡忠志ほか六十三名に対し、治療約三カ月ないし約二日を要する傷害を負わせた。これは暴力行為等処罰に関する法律第一条及び傷害罪ということで現在起訴されております。

 なお、先ほど申し上げました逮捕状の発付された者の所在捜査並びに在宅被疑者については、目下捜査が進行中でございます。

 大体以上が現在の処理状況でございます。