51-衆-法務委員会-2号 昭和40年12月22日

 

昭和四十年十二月二十二日(水曜日)

   午前十時四十五分開議

 出席委員

   委員長 濱田 幸雄君

   理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君

   理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君

   理事 田村 良平君 理事 細迫 兼光君

   理事 横山 利秋君

      賀屋 興宣君  唐澤 俊樹君 小金 義照君  四宮 久吉君

      濱野 清吾君  森下 元晴君 神近 市子君  田中織之進君

      志賀 義雄君

 出席国務大臣

        法 務 大 臣 石井光次郎君

 出席政府委員

        法務政務次官  山本 利壽君

        法務事務官(人権擁護局長) 鈴木信次郎君

 委員外の出席者

        検     事

        (大臣官房司法法制調査部長) 鹽野 宜慶君

        判     事

        (最高裁判所事務総局総務局長)      寺田 治郎君

        判     事

        (最高裁判所事務総局人事局長)      矢崎 憲正君

        判     事

        (最高裁判所事務総局人事局給

        与課長)    武居 二郎君

        専  門  員 高橋 勝好君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する

 法律案(内閣提出第四号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する

 法律案(内閣提出第五号)

     ――――◇―――――

 

○濱田委員長 この際、志賀義雄君から発言の申し出がありますので、これを許します。志賀義雄君。

 

○志賀(義)委員 人権擁護局長に伺います。

 去る十二月十四日、東京各新聞に新東洋硝子という会社の大阪工場での争議で、暴力団が会社側に雇われて、ロックアウトのときに組合側応援者に傷害を与えたという事件が起こりました。これについては参議院の亀田法務委員なんかも視察に出ておりましたが、大阪府議会でも問題になりまして、警察の機動隊の装甲車が先導して入ったと、こういうこともいわれて、大阪府警ではこれを否定しておりましたが、事実はどうも会社側に雇われた者が暴行を働くときに警察側がこれを阻止もしないし、傍観をしておったということが言われております。後に、大阪地方裁判所の決定によりまして、便所、食堂及び組合事務所に入れないことは不法である、これを入れるようにという決定があったのでありますが、このことについては人権擁護局長のほうで調査なさいましたでしょうか。実は、大阪の法務局の人権擁護部長には私のほうからさっそく調査をされるように提案をしておきましたが、何か報告が参りましたでしょうか。

 

○鈴木(信)政府委員 御指摘の事件につきまして、実は昨日この委員会のほうから御連絡がございまして、さっそく現地大阪法務局の人権擁護部に事実について照会をしたわけでございます。その返事が今朝九時五十分に入りまして、この件について情報を集めまして、ただいま報告書を発送するところである、こういう経過になっておりますので、現在の郵便の状況でありますと、おそらく一両日中にはこの報告書が私どものほうに参るだろうと思います。これを見まして、検討いたしました上で、次の方策を立てたい、こういう順序でございます。

 

○志賀(義)委員 では、それをなるべく早くわれわれにも見せていただきました上で、あらためてどうするかということについては、擁護局長のほうの御意見も伺いたいと思いますが、とにかく、これは有名な釜ケ崎の職業安定所のほうでも確認しておりますが、自分のところでこの暴力をふるった連中を紹介したのではない。あの有名な釜ケ崎ですが、おまけに、これは私の選挙区にあるところでございますが、そこで日当二千五百円で手配師が集めたそうでありまして、新聞記者によると、われわれの給与よりだいぶいいと言って苦笑いしておりましたが、それで、こういう暴行が行なわれたんですが、これは職業安定法から申しましていろいろ疑点があるのでございまして、明らかに処罰規定、一万円以下の罰金、あるいは一年以下の懲役に該当するような条項が幾つも見えるようであります。つまり労働争議不介入、あるいは有料職業紹介事業、直接募集、こういうことについて非常に問題があるようであります。どうして、だれに頼んでこれをやったのか、暴力団というか、集められた人は暴力団の人間ではないらしい。ところが、これを集める者は、あのあたりにいろいろ何々組というのが多いです、釜ケ崎には。これを引き受けた者はだれか。たとえば職業安定法の第三十七条には「労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集を行わせようとするときは、労働大臣の許可を受けなければならない。」こういう規定があります。これは、ただほんの一つにすぎませんけれども非常にここに問題があるように思います。

 それから、こういう暴行事件について刑事局長なんかに伺わないで特に人権擁護局に伺うのは、便所にもいかせない、それから食堂も使用させない、組合事務所にも立ち入りを禁止するというようなことが行なわれております。これが単に偶発的な現象ならばよろしいですけれども、いまのように中小企業の倒産が多い、それから恐慌が深まっている、こういう状態のもとでは、これから来年にかけてこういう事件が頻発するおそれさえありますので、これは人権擁護上の立場からもひとつ事態を明らかにして、対策についてどういう勧告をされるか、どういうふうに法務省の該当部門なりあるいは警察当局と連絡をとられるのか、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。とにかく、大阪府議会では、先ほど申しましたように警察の車が先導して、先頭に立ってピケラインを突破してこういう連中を入れた、こういうことさえいわれているのでありますから、そういう点について報告に、もし欠けているところがあったなら、折り返してお調べの上それを追加して、当法務委員会へお知らせ願いたいと思います。その上でいろいろと質問いたしたいと存じます。これだけです。

 

○鈴木(信)政府委員 労働争議の際といえども暴力の行使が許されないことは申すまでもないことでありまして、御指摘のように暴力団を雇って暴力を行使をしたことがあるかどうか、あるいはそれが会社側の意思に出たかどうか、あるいは警察がこのことを知りながら傍観していたかどうか、あるいは、これまた御指摘のように、組合側に対して便所、食堂、あるいは組合事務所の使用もさせなかったか、こういった点、いずれも問題になる点でありまして、こういった点をも含めまして全般的に情報を収集して、その結果を十分に検討いたしまして結論を出したい、かように考えております。

 

○志賀(義)委員 委員長、それではそれを擁護局長のほうからお受け取りになりましたなら委員に配付願いたいと思います。