街づくりのための基礎知識として

あいりん地区(釜ヶ崎)を産業別就業人口から考えると…

街のありようを規定している要素には、地理的なもの、人的なもの、そして土地の使われ方などがある。今回は国勢調査の数字をもとに人的な要素の一側面として、15歳以上人口の就業状態から、現在の街の様相を改めて確認する。


街には大人も子どももいる。そして、子どもの存在のありようが街の未来を決める大きな要素ではある。

しかし、ここでは、街の現在の状態を端的に表す「働く大人」の状態を中心に考えていくことにする。

(1)15歳以上人口

日本の教育制度は、小学校の6年と中学校の3年を義務教育としている。したがって基本的には15歳以上が、「働く人」となる。勿論、15歳以上でも通学や家事・高齢などで働いていない人はいる。

西成区全体では1990年から1995年にかけて、15歳以上人口は52,722人減少している。

あいりん地区では8,085人減少している。

15歳以上人口の減少はあいりん地区外のほうが圧倒的に大きい。大阪市の総人口も同時期18,000人減少(262,4万人から260,2万人へ)しているが、西成区はバブル崩壊後の不況を他区よりも大きく被って人口が減少しているようである。あいりん地区の減少も大きいが、減少率で見ればあいりん地区外よりもかなり低いのが注目される。

 

(2)労働人口

労働力人口も全体として減少しているが、あいりん地区外の減少率が15歳以上人口の減少率よりも10%も低いのは、非労働力人口の内「家事」に含まれていたものがパート労働などで労働力人口のほうへ移行したためと推察される。

あいりん地区の場合は、15歳以上人口の減少が直接労働力人口の減少と拾う同僚の家事でも通学でもない部分(年金生活者・生活保護受給・無収入など)の増加に反映されているようである。

 (3)就業状態

 15歳以上人口が全体的に減少しているのであるから、数的にはもともと就業者の中で占める割合の高い雇用者の減少数が大きいのは当然として、減少率で見ると全体的に家族従事者の数値の大きさは注目に値する。

また、雇用者の減少率はあいりん地区よりもあいりん地区外のほうがわずかに高いのであるが、自営業主の減少率はあいりん地区のほうがあいりん地区外よりもはるかに高くなっている。

このことは、西成区全体の町の規模が小さくなっている中で、あいりん地区の自営業者はとりわけて困難な立場に置かれていることを示しているといえよう。仮定で言えば、これまで密集度の高い雇用者に支えられた自営業主が、雇用者の減少と生活資力の減少に伴ない「適正数」に淘汰されているという事であるかもしれない。

雇用者の動向が自営業主や家族従事者にも大きな影響を与えるという地域経済の当たり前のことが示されているといえるであろう。

(4)就業状態構成比率

15歳以上就労人口であいりん地区が西成区の中に占める割合は、大きく丸めて3割といえるが、90年と95年ではわずかであるが比重が増している。自営業主・家族従事者の比重は下がっており、雇用者のみが西成区に占める比重を高めている。

地域に占める雇用者・自営業主・家族従事者の割合は右下の表の通りである。

先に『密集度の高い雇用者に支えられた自営業主が、雇用者の減少と生活資力の減少に伴ない「適正数」に淘汰されているという事であるかもしれない。』と仮定を述べたが、構成比を見るかぎり一概には言えないようである。

90年・95年共にあいりん地区の合計とあいりん地区外の構成比率を比較すれば、大きくあいりん地区の自営業主の構成比率が低い。

あいりん地区内で言えば、山王地区が90年においてあいりん地区外より構成比率は高く、95年においては低くなっているので、先の仮定に当てはまりそうではあるが、太子・萩之茶屋においては、自営業主の構成比率が不自然に低い。

この原因が、地区内の土地活用の状態から来るものか、雇用者の生活スタイルから来るものなのか、または、あいりん地区を越えた地域経済圏が存在するためなのか、そのほかにも原因は考えられるのか、現在取り扱っている数字から判断することはできない。

  (5)就業産業構成

下の表で最上段のものは1995年の就労産業別(西成区全体)人員と構成比を示したものである。 その下の2つは、あいりん地区の1990年と1995年の就労産業別人員と構成比を示したものである。(原表は各産業毎に総数と雇用者の2つの欄で示されているが、ここでは各産業毎の総数欄のみを使った)。

大阪市全体や他区との比較を行わないと確定的には言えないが、西成区は建設業の構成比率が高いものと思われる。その根拠は、あいりん地区において建設業の占める割合が高く、それは区全体の数字に影響を与える大きさであるからである。

ただ、山王地区はやや異なった性格を持つ。

 

(6)おわりに

 あまりにも大雑把な数字の検討であるが、街づくりの基礎として考慮されなければ成らない要素が、数字の面からも浮かび上がってきたのではないかと考える。