「釜ケ崎対策」についての請願 

             釜ケ崎就労・生活保障制度実現をめざす連絡会      
                     (略称・釜ケ崎反失業連絡会)     
              請願人 山田 実
                  本田哲郎
                  村松由夫   

                 参加団体 
                  釜ケ崎日雇労働組合
                  釜ケ崎高齢日雇労働者の仕事と生活を勝ちとる会
                  釜ケ崎キリスト教協友会
                  西成署の暴行を明らかにする連絡会

             紹介議員


1993年10月5日

大阪府議会議長   八木 ひろし 殿 

請願主旨 

 私たち釜ケ崎(あいりん地区)で日雇労働者と共に生き、活動する諸団体・個人は、「バブル経済」崩壊後の釜ケ崎において、多くの労働者が仕事に就けず、野宿を余儀なくされ、路上での無念な死を迎える状態にあることの打開を目指して、本日(九月二七日)、大阪府・大阪市の行政当局に対し、切実なる要望をいたしました。          
 大阪府会議員諸氏におかれても、釜ケ崎の現状はすでにご承知であり、これまでも府会において対策が真剣に討議され、対策の実施に向けて努力が積み重ねられていることとは存じますが、私たちの要望についても一考を加えられ、なお一層、一日でも早く路上で死を迎える労働者がいなくなる施策の実施にむけてのご努力をお願いもうしあげます。
 釜ケ崎日雇労働者の苦況は、すでに二年を越えて続いております。にも関わらず行政当局の対応は遅々としたものであります。
 そこで、苦況にある労働者を励まし、行政当局のより迅速な対応を促すために、左記事項の採択を請願いたします。


 請願項目 

①大阪市と連名で国に対し、「釜ケ崎総合対策に関する要望書」を提出されたい。
  本来、釜ケ崎日雇労働者の存在は、日本全体の経済や政府の政策に起因するものであり、大阪府・大阪市の二自治体だけが責任追求され、財政負担して対処しなければならないものではない。また、現行行政制度では運用上問題に対応しきれない面もある。よって、現状内での精一杯の問題解決へ向けての努力を前提としつつ、より根本的対処にむけて国に責任を取らせる要望書が提出されるべきである。
  そのために、府に諮問機関を設置されたい。なお、諮問委員メンバーには釜ケ崎現地地で活動する団体から推薦されたものを必ず含め、大阪市と調整した上それぞれの諮問委員メンバーの半数以上は意見調整を容易とするために府・市両諮問委員会兼任となるようにすること。


②日雇労働者の就労保障制度を確立されたい。
  これまで日雇労働者の就労可能性は、景気の好・不況や季節によって大きく左右されるがままに放置されてきた。しかしながら、日雇労働者の存在が皆無になるということはこれまでなかったし、これからもありえないであろう。そのことは、日雇労働者の存在が現状の日本社会では欠くことのできないものであることを示している。であるならば、景気の好・不況にかかわらず、一定数の労働者が安定して就労できる制度を設け、層としての日雇労働者の社会的認知が高められなければならない。それは、業者を啓蒙してなされるのではなく、公共事業落札業者への吸収率の義務付けなどの実効性のある規定を設けた制度として実現されるべきであると考える。             
  日本社会に必要があって存在している日雇労働者の就労保障制度を早期に確立された
い。
  具体的には、すでに第一次石油危機当時より東京都で実施されている、公共事業への日雇労働者吸収制度ならびに福岡県のものを参考に、「あいりん職安」に紹介窓口を開設し、府発注の公共事業への日雇労働者就労保障制度を実施すること。

③あいりん職安南分室の現在の職務の上に、次の機能を加えられたい。        
 イ・軽作業紹介窓口を開設されたい。
   軽作業紹介窓口は登録制、且つ輪番制とし、発足当所において最低一日五百人分の職業紹介を確保するよう努めること。その後、登録数に応じ最低二日に一度就労保障できるよう大阪府が府下自治体へ協力を要請し、求人数の確保に努めること。賃金日額については、現行雇用保険一級印紙貼付を目標とすること。各自治体などでの就労の場合、雇用保険印紙貼付については、スタンプ代用などを考慮すること。    
 ロ・分室敷地に高齢労働者支援センターを建設、以下の業務をおこなうこと。
  ○自分たちで就労先を開拓し、仕事を回しあっている労働者グループについて、事務・連絡場所を提供し、小なりといえども企業活動となるように援助・育成する。 
  ○内職的共同作業場を設け、運営をおこなう。
  ○年金その他社会福祉制度活用についての相談業務。
  ○仕事以外での社会参加の可能性を広げるためのボランティア養成講座など、高齢労働者の能力拡充のための成人学級の運営。


④毎年、繰り返される梅雨時期(四月ー七月)と年末年始の仕事減少については、特出し(特別就労事業)をおこなうこと。

⑤白手帳(雇用保険日雇労働被保険者手帳)の運用について
 イ・新規発行については、制約をもうけることなく、交付を申し出たものに対してすみやかに交付すること。
 ロ・傷病・労災などの事情で窓口に出頭することができず、手帳更新時期を逸したものについては、再交付扱いとせず、通常の更新扱いとすること。
 ハ・「不都合」により「罰金」を請求される立場にある元手帳保持者については、職安が被った実害のみの請求にとどめ、「罰金」部分請求は猶予すること。


⑥健康保険(日雇特例被保険者)制度について
 イ・「みなし」適用における休業保障の等級を引き上げること。
 ロ・現行制度では健康保険印紙を貼付しているものでも、一度入院などで健康保険印紙が貼付できない状態になった場合、再び働いて印紙を貼り被保険者の確認を受けるのは三月目からになる。その間は、無健保状態となる。例えば、一ケ月毎に健保の資格確認をうけているものが、胃カイヨウで一ケ月入院したとすると、退院後には健保の資格がないことになり、歯医者にもいけなくなる。
    これは制度上の不備であり、休業保障受給停止後二ケ月については、無条件に資格の継続を認めるー確認スタンプを押すー措置をとることとされたい。


⑦単身労働者用低家賃勤労者住宅を地区内あるいは隣接地に建設すること。

⑧「ホームレス・シェルター」を設置すること。
 緊急的に、南海電車天下茶屋線跡地に越年臨泊並のプレハブ二棟を建てること。
 設置にいたるまでは、現地野宿者援助活動団体に補助金をだすこと。


⑨「越年対策」のありかたを見直すこと。
 イ・あいりん職安は年末年始においても業務をおこなうか、あるいは、一二月末日に翌年一月について受給資格が確認できる者については、職安休日分について前払いの特例措置をとること。
 ロ・臨時宿泊所の設置場所を地区隣接地に求めること。
 ハ・大阪府においても状況の正確な把握を期すために、職員を派遣・常駐させること。


⑩釜ケ崎労働者が「技能士」の資格を持つことのできる道を開くこと。
 技能士養成講座・職歴の代替証明の発行など。

⑪なお一層各種工事への日雇労働者吸収を図るための努力をおこなうこと。
                                   以  上